北信州では、2~3回霜にあたると「のり」が出ると言って
粘りを感じるようになる野沢菜を、すぐ直後の積雪があるまでの
短いタイミングを見計らって収穫します。
そもそもこれから迎える冬場、この地方では
お年寄りのいるご家庭のほとんどで、その家に伝わる
伝統の味の野沢菜(塩漬け)がほぼ常時、食卓に上がるだけでなく
いわゆる"お茶請け"としても欠かせないのです。
ただし私の場合、生家が商家だったこともあり、11月下旬は
「えびす講」、続く書き入れ時の師走には「歳末大売り出し」と雪雲の下
「お菜洗い」や「漬け込み」に掛ける手間と気持ちの余裕はなく
結果として漬物はそれほど好んで食するわけではなく
味噌汁もそうですが、あれば食べるし、なければないで
済んでしまうという食習慣に育っていました。
そんな私に、バレー仲間の最年長80代のHさんから野沢菜収穫の
お手伝いの声がかかったのは5年ほど前のことでした。
(黒土の飯縄山麓にあるHさんの畑)
"報酬"は現物支給の自家消費用の約15㌔と昼飯の奢り、以来毎年
こちらから申し出てこの時季の恒例になった理由は
この時に頂いた「醤油漬け」レシピに従って
始めて女房が漬け込んだ「野沢菜(醤油漬け)が
一気に私の好物の一つに数えられるようになったからです。
ちなみに、女房の両親は信州生まれではあっても
彼女自身は全国を転勤する家庭で育ったため
特にこれという十八番の漬物はありませんでした。
この醤油漬け、塩漬けよりもはるかに早く漬かる上
最初から塩漬けの"古漬け"のような風味がある点がお気に入りです