今日、どこかのサイトでピアノのハンマーを削るという話を読んだ
そこのサイト主によると、簡単に削って良いものでは無いと解説されていたが
読んだ人にどうも誤解を与えかねない内容だなと気になったので
補足的に書いてみたい
(写真の右上の赤いフェルトと白いフェルトで楕円のようになったものがピアノハンマー)
「ハンマーを削るのは頻繁に行うべき」と先日の技術研修会でもお話しがあった
ハンマーの打弦部が平で逆三角形のような形になってしまわぬよう
「日頃から奇麗な丸みをキープするように手入れしろ!」という事
そこのサイト主はハンマーの形状が三角形になるまで放置された場合
簡単に削るという作業で復旧出来ると思わないで欲しいと言いたかったのだと思うが
しかし、「交換して貰えないなら削るしかないわけ」で質量が軽くなってタッチに影響というが
顕著に出るほどの影響はもう三角形になってる時点を思えば無いであろうと想像する
むしろ、他の箇所で重さを補うように仕掛けをするチョイスを選ぶしかないんじゃないだろうか
タッチの影響を避けるためだが、少々鍵盤の深さが浅くなってしまうとか、スプリング感であるとか
問題はタッチという感覚をどう捉え、タッチとは何者なのか?をどう考え、
その上でどれを捨てて、どれを取るかだと自分は思う
もっと言えば鉛を入れる(貼付ける)という禁じ手も存在もする
ハンマーを放置で音質を捨てるという選択肢すらある
「そのチョイスをどうしたか」はユーザーに説明が必要で理解して貰う必要もある(難しいけど)
それだけでなくタッチの重さ軽さは
鍵盤がストレートに下ろせているかも関わる、鍵盤の上面の傾きも関わる
左右にガタつきが大きいと、弾くたびに鍵盤の深さが微妙に変わってしまう
深さを一定に出来てこそハンマーの距離との動きのバランスが微妙に調整が出来るのである
その時点まで来て、接近であるとか縦型ならキャプスタンの位置とかダンパーの掛かりとか、音質に至るまで
総合的にどう対処出来るか?決まってくるわけなのだから
「鍵盤のフロントやバランスのクロスもすり減ってたら交換して貰えますか?」
とまでユーザーに要求したかったりするのでしょう
つまるところ、そのサイト主が行った客のところに来ていた前の調律師が問題
ないし、管理者が調律を頻繁に行っていたか?も疑問も残る問題もあるかも知れない
そのサイト主の苦悩も考えると伝わってくる
どうしてこの放置された処理が自分のところにやって来るのかストレスになるのだろう
もちろんそれなりの修理代で儲かれば良いのであるが
ハンマー交換をしない場合なのだから、そういうお客さんの事情なわけで
「儲かる話でない事」は容易に想像出来る
色々考えると「削ればOK」と安易に考えて欲しくないと言ったところなのだろう
「ピアノの調律なんてしなくても所詮素人には分からない」なんて
一般の人に考えられがちなのは我々も知っていますが
放置すれば、こちらも本当に困る状態に陥るというのもまぎれも無い事実
虫食いで見事にぼろぼろになったフェルトも何度も見たし
さびで駄目になるケースも非常に多い、三味線のようにピアノはケースに入らない
でも、なんの管理のアドバイスもしない、ハンマーも削る事もない整音もしない
そんな調律師も居る事実もある、そこの問題は非常に大きなものがあります
ちゃんと管理アドバイスをしてくれたり、音合わせ以外の作業も丁寧にやってくれる技術者なら
毎年任せて見てはいかがでしょうか