copyright (c)ち ふ
絵じゃないかおじさんぐるーぷ
平成はじめのころです。
* 花の吉野山(032)
花冷えのする日であった。
曇っていて今にも雨が降り落ちて来そうだった。
そうだ。
こういう日に吉野山へ行けば、
人出は少ないに違いないと思った。
私は、短い脚を振り上げて、Sサヤカに跨がる。
吉野へゆくには、石舞台から抜ける山路の方が、
自然に親しめて楽しい。
芋峠越えの路である。
10km余り、約30分の山路は、
相変わらずくねっている。
途中数台の車とすれ違う。
冬のこの路では、車に会うことは皆無だ。
山のなかの自然にふれるとホッとする。
また、この路は曲がりくねっているので、
何度通っても気が抜けない。
わずか数10分の緊張と弛緩。
これがたまらない。
狭い路を抜け169号に出て、
その国道をを少しだけ走り、
右に折れて下千本を目指す。
行く場所は決めてある。
蔵王堂の横を過ぎ、土産物・旅館の立ち並ぶ、
石畳風ののきつい坂を上る。
バイクで初めて来た時には、
何度も転倒寸前の浮目に遭った急な坂道だ。
こんな天気の日でも、
桜のシーズン中は人出が多い。
急坂と人波の間を縫って、
走り上がって行くのだから、
かなりの技術がいる。
中千本上千本へとまっしぐら。
くねくね道を花矢倉へと向かう。
小雨が降り始めた。
雨の降り始めはほとんどが遠慮がちだ。
斥候を送って地上の様子を見ているようだ。
私は、サヤカを止め青色のレインウェアを
着込む。
雨には何度もひどい目に遭わされ、
風邪をひかされているので、
最近では、ちょっとの雨でもすぐに着る。
そのまま上へ上へと上がってゆく。
人がだんだんと少なくなる。
展望台の下でサヤカを再び止め降りる。
全山桜の花が様々な咲き方をしている。
しかし、全体的にはもう一歩という開き方である。
膚寒い。
風が強くなってくる。
ふと気づくと雨が霙に変わり雪になってきた。
四月初めの雪は珍しいぼたん雪のようだ。
風に煽られて、
ぼたん雪と桜の花びらが宙を舞っている。
白い雪と薄ピンクの花びら。
絶妙の取り合せだ。
よく見ないと区別がつきにくい。
じっとその様子に見入る。
何と!! これは明らかに戦争だ!
ぼたん雪と桜の花びらが、
接近戦でくんずほぐれつの戦いを
繰り拡げているのだ。
天は絶え間なく戦闘員を送り込んでくる。
それに対して桜は木についている花びらのみが手駒である。
風が強く吹くたび桜戦闘員は飛び上がってゆく。
ぼたん雪の方が圧倒的に優勢である。
交じり合い舞いながらの優雅な戦闘だ。
いつまでも続いていた。
舞いの渦 春爛漫の 吉野山
全山覆う 雪花戦争
ち ふ
この項おわり
絵じゃないかおじさんぐるーぷ
平成はじめのころです。
* 花の吉野山(032)
花冷えのする日であった。
曇っていて今にも雨が降り落ちて来そうだった。
そうだ。
こういう日に吉野山へ行けば、
人出は少ないに違いないと思った。
私は、短い脚を振り上げて、Sサヤカに跨がる。
吉野へゆくには、石舞台から抜ける山路の方が、
自然に親しめて楽しい。
芋峠越えの路である。
10km余り、約30分の山路は、
相変わらずくねっている。
途中数台の車とすれ違う。
冬のこの路では、車に会うことは皆無だ。
山のなかの自然にふれるとホッとする。
また、この路は曲がりくねっているので、
何度通っても気が抜けない。
わずか数10分の緊張と弛緩。
これがたまらない。
狭い路を抜け169号に出て、
その国道をを少しだけ走り、
右に折れて下千本を目指す。
行く場所は決めてある。
蔵王堂の横を過ぎ、土産物・旅館の立ち並ぶ、
石畳風ののきつい坂を上る。
バイクで初めて来た時には、
何度も転倒寸前の浮目に遭った急な坂道だ。
こんな天気の日でも、
桜のシーズン中は人出が多い。
急坂と人波の間を縫って、
走り上がって行くのだから、
かなりの技術がいる。
中千本上千本へとまっしぐら。
くねくね道を花矢倉へと向かう。
小雨が降り始めた。
雨の降り始めはほとんどが遠慮がちだ。
斥候を送って地上の様子を見ているようだ。
私は、サヤカを止め青色のレインウェアを
着込む。
雨には何度もひどい目に遭わされ、
風邪をひかされているので、
最近では、ちょっとの雨でもすぐに着る。
そのまま上へ上へと上がってゆく。
人がだんだんと少なくなる。
展望台の下でサヤカを再び止め降りる。
全山桜の花が様々な咲き方をしている。
しかし、全体的にはもう一歩という開き方である。
膚寒い。
風が強くなってくる。
ふと気づくと雨が霙に変わり雪になってきた。
四月初めの雪は珍しいぼたん雪のようだ。
風に煽られて、
ぼたん雪と桜の花びらが宙を舞っている。
白い雪と薄ピンクの花びら。
絶妙の取り合せだ。
よく見ないと区別がつきにくい。
じっとその様子に見入る。
何と!! これは明らかに戦争だ!
ぼたん雪と桜の花びらが、
接近戦でくんずほぐれつの戦いを
繰り拡げているのだ。
天は絶え間なく戦闘員を送り込んでくる。
それに対して桜は木についている花びらのみが手駒である。
風が強く吹くたび桜戦闘員は飛び上がってゆく。
ぼたん雪の方が圧倒的に優勢である。
交じり合い舞いながらの優雅な戦闘だ。
いつまでも続いていた。
舞いの渦 春爛漫の 吉野山
全山覆う 雪花戦争
ち ふ
この項おわり