ある4月のころ。
copyright (c)ち ふ
絵じゃないかおじさんぐるーぷ
平成はじめのころです。
* 桃原国道(031)
新益京市のわが家から、
24号線を和歌山に向かって走り、
粉河の先で左折して424号線に入る。
入れば、もうそこが桃源郷である。
その名にふさわしく国道沿いに、
桃畑が一面に拡がっている。
淡いピンクの花盛り。
私は、そんなに沢山の桃の花の、
群生を見たことなかった。
見渡す限り桃の花なのである。
ドライブガイドの本に桃源郷の
案内が載っていた。
冬の走りは近くだけに限られていたため、
どうしても要求不満になっている。
そんな心に桃源郷の名が食い込んでいた。
朝方は小雨が降っていたのだが、
昼過ぎに薄曇りに変わったので、
飛び出したのである。
橋本のあたりから雨がまた本格的に降り始めた。
春の雨はさほど冷たくはなかった。
国道の端にS・サヤカをとめ、
例のブルーのレインウェアを着込む。
雨のなかを走るのは久しぶりである。
雨が叩くように降ってくる。
サヤカを止めれば雨はそんなに強くはない。
スピードのせいである。
雨の日のバイクは悲惨である。
特に、私のようにメガネを必要とする者は,
さらにひどい目に遭う。
シールドとメガネがダブルで曇るのだ。
その上シールドには雨滴まで着く。
しょっちゅう手袋の手の平で
拭わなければならない。
それでも間に合わなくなると、
結局はシールドをあげたまま走ることになる。
雨が直接メガネや顔にかかる。
今度はメガネがシールドと同じ目に遭う。
メガネが役に立たないので鼻の上にずらす。
雨のヤツが目玉を直撃する。
とてもじゃないが、見られたものではない。
風があまり吹いていないと、
40kmぐらいのスピードなら雨は痛くはない。
55kmあたりからピチピチと叩き始める。
60kmだと目がもう痛くて痛くて叶わない。
私が、バイクで前が曇ったり雨滴に悩まされて、
こわごわ走っているのに、
4輪車はビュンビュン飛ばしてくる。
雨の日でも、24号・42号あたりでは、
70~80kmで走ってくるのだ。
雨の日にバイクに乗らなければいいのだろうが、
天気は気紛れだ。
遠くに足を延ばせば、そんな目に遭うことも
覚悟しなければならない。
とにかく危ないから流れに合わすのである。
これが苦痛となる。
前は見えない。
後は見えない。
スリップの危険がある。
車の水飛沫はかかる。
もう四方八方敵ばかりなのである。
そんな中を何とか桃源郷についた。
有りがたみもひとしおである。
桃の花をバックにしてサヤカの写真を
撮ってやった。
雨が強いので人はほとんどいない。
私は、雨のなかに佇んで、
ぼんやりと桃の花に酔っていた。
ずっと見渡す限り桃の花である。
道路や人家がそばにあるので、
少し物足りなかった。
こういう景色には邪魔物である。
やはり道路は舗装されてなく、
さびれた小屋一つぐらいが似つかわしい。
そんなことを思っていた時だった。
2・3本先の桃の木の花びらから、
何かネバネバとしたものが滴り落ちている。
雨の雫が固まって落ちているのかなと思った。
近づいてみるといい香りが漂ってくる。
おお、何と化粧に使うクリームではないか!
私は、すぐさまビニール袋を取り出した。
携帯必需品の一つである。
持っていると色々重宝するから、
いつも4・5枚は用意しているのだ。
その袋でクリームを受けた。
不思議なことにいっぱいになった所で、
ぴたりと止まった。
ああ、Oさんにいい土産が出来た。
満足に化粧品など買ってやらない私を哀れんで、
天のヤツ小賢しいことをしやがったな!
まあ、天然の化粧品だから、
今回は素直に貰って帰ろう。
桃の花 花・花・花の 花盛
雨のシヤッター 引き下ろし憩う
ち ふ
この項おわり