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絵じゃないかおじさんぐるーぷ
* ポンポン山の猪(仮想はてなのお話)
西山 善峰寺 20
ゴエーカ;
のをもすぎ やまじにむかう あめのそら
よしみねよりも はるるゆうだち
善峰寺は、ポンポン山の中腹にあるお寺であります。
このお寺を開いたゲンザン上人は、
エシン僧都の優れた弟子の一人だそうです。
ゲンザン上人は、因幡の国に生まれた時、
3日間も道端に捨てられていたとのことです。
生まれたばかりの子を捨てる方も捨てる方ですが、
3日も生まれたばかりの子が、
母の乳無く生き続けるのはというのは、
常識では考えられませんから、
こっそり母親がお乳を飲ましていたのでしょう。
道ばたといっても、きっとお地蔵さんの、
小さなほこらでもあったのでしょうね。
野犬や猫に襲われなかったのは、
飼い犬でも傍において、見張りをさせていたのでしょうか。
不吉な子として、扱われたようですから、
生まれた年や日が悪かったのか、
父親の夢見が、悪かったのでしょう。
もし、そんなことして死んでしまったら、
どうするんでしょうか。
やっぱり悪魔の落し子だったと納得してしまうのでしょうか。
今は、さしずめコインロッカーが、
ほこらの役割を、果たしているのでしょうね。
時は流れて、ゲンザン上人が47歳のとき、
ポンポン山に修業用の道場を開こうとしましたが、
岩が、ごろごろと転がって、
思うように整地できませんでした。
かといって、手伝ってくれる者もいません。
ゲンザン上人は途方に暮れていました。
そんなある夜のことでありました。
夢の中に善峰のセンティが現われ、
大岩の下に動かしたい方向から、
斜めに小さな穴を掘って、
その奥に、シイの実やお米などを入れておいて、
ご覧なさいというアドバイスを与えてくれました。
上人は、その言葉を信じて、
最初は、一つの岩だけに試みました。
数日たったある日のことです。
岩の下が深く掘られて、
ちよっと反対側から力を加えれば、
ころりんと岩が動きそうになっています。
穴を掘った犯人は、どうやら猪のようであります。
猪が夜間にやってきて、エサ掘りをしたようです。
上人はしめたと思いました。
そして、他の整地の邪魔になりそうな岩の下に、
動かしたい方向に向かって、
お告げの通りの小さな穴を掘って、
ヤマイモやユリの根なども埋めておきました。
別に、今日・明日に、
仕上げなければならないというような、
突貫工事ではありません。
のんびりとした工事であります。
経験が重なるにつれ、
だんだんと、上人の要領もよくなってきました。
猪たちにしても、口コミであそこに行って、
岩の根元を掘れば、余り苦労することなく、
エサにありつけるということが伝わったのでしょう。
だんだんと、たくさんの猪が、
参加するようになってきました。
岩の動くスピードは遅々たるものですが、
確実に、移動していきます。
こうして数年後には、その岩地は見事に整地され、
思い通りの平地が、出来上がりました。
近在の人々も、初めは岩ごろごろの地を見て、
二の足を踏んだものですが、
わずかなからも、確実に大岩が動いてゆくものですから、
興味を示してきたんですね。
それにテコの原理を使って、
反対側から余り力をいれなくとも、
大岩が動くものですから、おもしろくなってきたんでしょう。
最後には、多くの人も手伝うようになったそうです。
上人は、その地の上に、念願の小さいお堂を建てました。
この寺には、徳川5代将軍ツナヨシ公の母親、
玉子さんが移植したといわれる遊龍の松があります。
高さは2mあまりですが、横枝が北の方へ22m、
西の方へ24mも伸びていて、
あたかも全長50数mの、
龍が、横たわっているように見えます。
種類は5葉松で、推定樹齢600年だそうです。
木でも大事に育てれば、見事なものになるのですね。
この松にちなんで、
松の寺とも、呼ばれているそうであります。
この項おわり