株式会社プランシードのブログ

株式会社プランシードの社長と社員によるブログです。
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その238.その気にさせる

2015-07-12 11:52:01 | 制作会社社長の憂い漫遊記
基本的に監督は現場では何もできない。
いや、やりたいことは一杯あるが、
それぞれ専門職がいるから直接手を下さなくても仕事は進む。
とにかくイメージを伝えることに専念すればよい。
しかし何かしら自分の手足を使いたいなら、
監督業だけでなく可能な限り兼務すればよい。
ただそうなると本数ができない。
この仕事についた限りは出来るだけ長く現場にいたいので
専門スタッフとうまく仕事をする方がよい。
ただ若いときは、歳上のスタッフばかりだから、
コミュニケーション作りに時間がかかり、
作品演出にまでなかなか手が回らないのも現実。
やはり若いうちは、ある程度気心の知れたスタッフと
組む方が気疲れしないし、多少なりとも作品演出ができる。

私は現場では監督兼務にしない。
現場を仕切れるカメラマンを必ずつける。
照明マンや現場録音スタッフの人選はカメラマンに任せる。
しかしドキュメンタリー系、特に素人の被写体を追いかける場合は
照明マンや録画スタッフがいない方が被写体に負担をかけないし
カメラも小型解像度のものを使う。
あとは私の助手として、スケジュール管理をしてくれる
機転の利く助監督がついてくれれば現場は完璧だ。
たいていの現場では予め作った台本をトレースする作業になる。
しかし現場はナマモノなので、そう台本通りにはいかない。
そこで様々な工夫をして、
見た目は台本のイメージにするよう心がける。
ロケ日数が少ないのでイメージを踏襲しながら
出来上がりは全く違うというのが理想である。
末節にこだわると間違いなく時間切れ、
だから必要なカットから撮る。追撮は100%ないと思え。
そんなとき現場の進行管理ができる
優秀な助監督がいれば百人力だ。
ちなみに私の35年の演出人生の中でも
カメラトラブルで取り直しはあっても
(費用はもちろん制作会社の自腹)、
日数を延長してわざわざ追撮を許してくれた作品は
たった2つしかない。
つまり予め決めた日数で撮ることが、
監督の最大の力量だと判断される、悲しいことだけど。

さて仕上げでは、私は編集を必ず自分でやる。
なぜなら現場では余程の事がない限りカメラを覗かない。
てか、覗いている時間もない。
さらに、そもそもワンカット位覗いたとて、
カメラマンの好き嫌い・個性だから修正などできない。
気になるなら全カットを自分で撮るしかない。
だから私は「どうアガイテも撮ったものでしか料理できない」と居直り
編集でメッタ切りする。
時には「下手くそ」なんて声に出して編集するので
一人でコツコツやらないと、一緒に組んだ先輩カメラマンに
何かの折に聞かれようものなら
間違いなくドヤシつけられることになる。

編集は引き算である。
割愛とはうまい当て字だが、
涙を飲んでせっかく撮ったカットを愛を持って捨てていく。
ナレーションの位置、音楽のリズム・出るタイミングを
イメージしながら編集していく(=捨てていく)。
初号試写の仮ナレーションは私が自ら行なう。
録音はつきっきりで曲の感じやタイミングにはダメ出しをする。
台本をトレースする撮影よりも、
足し算・引き算をする編集・録音が好きだ。
他人の演出したドラマを見たら「編集がうまい!」と
唸ることもあるが、そういう作品はたいてい原作・脚本を
越えた映像作品になっている。
ドキュメンタリーはもっと如実で、
編集如何でテーマが伝わるか伝わらないかが決まる。
時系列で繋いだだけの、
現場のコミュニケーションが感じられないドキュメンタリーを
見せられる方はタマッタもんではない。
だから監督は編集もさることながら、
仕上げをイメージして被写体に仕掛けをする。
しかし被写体も人間だ。
何を言うか、何をしでかすかわからない。これが面白い!
だからドキュメンタリーの監督は
被写体の行動のキッカケになる仕掛けをドンドンする。
どっちに転ぶかわからない。
それこそがドキュメンタリーの面白さだと思う。

私はいまショートアニメーションを
毎月配信で10話連続ものを作・演出している。
原画か書けるわけでもないし、編集をするわけでもない。
だから必死に自分の思いを台本にしている。
あとはスタッフに任せるしかない。
ドキュメンタリーで行なう被写体への仕掛けを
スタッフに仕掛けている。
予想外の発想をするスタッフを受け入れるのが
仕掛けた者の責任だ。
たいていの人は、できれば楽しく仕事をしたいと思っている。
その気持ちに火をつける仕掛けを考えるのが監督の一番の仕事だ。
どんな仕事も同じだが、「スタッフにやる気にさせる」。
これこそが上司の仕事だ。

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