株式会社プランシードのブログ

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その46.小さくかわして、大きく攻める

2012-09-04 08:04:53 | 制作会社社長の憂い漫遊記
今から30年ほど前の話である。
格闘技K-1で一躍有名になった正道館(のちに正道会館)の石井 和義館長とは、
まだ私も、正道館も、動き始めた初期の頃、教材ビデオの制作依頼で出会った。
正道館は、当時JR天満駅前に道場を構えて、
フルコンタクト空手の競技で勝つための実践的なスタイルを提唱し、
1980年、極真会館芦原道場大阪支部長だった石井 和義氏が興した。
後にK-1を開催し、日本の格闘技ブームの火付け役ともなった。
フルコンタクトとは、グローブ、防具なしで
直接パンチやキックを打つスタイルで一撃必殺のハンパない空手だ。
パンチやキックが当たるとボコッと鈍い音がする。
正道館から依頼された教材ビデオは、空手の形をビデオ化したものだが、
当時言葉の重みを模索していた私は空手の形の教材にもかかわらず、
巻末に石井館長のインタビューを付けた。
石井館長は、例えばこんな話をしてくれた。
「正拳(せいけん)は握り拳の骨で叩くパンチなので、
人など軟らかい物を叩くと威力がある。
逆に手刀(しゅとう、いわゆる空手チョップ)は、
手のひらの軟らかいところで叩くので、瓦や板、氷柱など
固い物に対する破壊力がある。
つまり固い物には軟らかい物で、
軟らかい物には固い物をぶつけると大きな破壊力を持つ。
これは何事にも通じる真理である
」と語った。
例えば、固い人にはセックスなど軟らかい話から入るといい。
逆に軟らかい人には、政治や人生論など固い話から入ると打ち解け易い
ということらしい。

また石井館長は「武闘家だからこそ、必ずネクタイを締め、
キッチンとした服装をしなければならない」と言う。
そうしなければチョッカイをかけてくる一般人が増える。
しかし格闘家なので絡まれても、絶対に手を出してはいけない。
犯罪者になってしまうからだ。
それでも石井館長は「格闘家と知りながら僕の首から上に手を出してきた場合は、
覚悟しての強行と捉え、打つべし!」と言う。
確かに石井館長は無用に絡まれないよう、
いつもキッチンとした服装で打合せに来る。
そういう風に武道を一般論に重ねて教訓とするのが石井館長風だ。
その中でもとびきり秀逸なのは「小さくかわして大きく攻める理論」だ。
相手の攻めを大きくかわすと次の攻めが瞬時にできない。
逆に、小さくかわせばかわすほど、相手は大きく崩れる。
さらに小さくかわしているこちらも、次の攻めがし易いし、
大きく崩しているので、こちらの攻めがよく効く。
また大きな攻めは当たれば効くが、
外れれば仕掛けたこちらの方がダメージが大きくなる。
小さな攻撃を連続して出し続ければ、
必ず相手がひるんで、そこから勝機が生まれてくる、と言う。
これもすべてに通じる真理だ。


格闘家は己の痛みから真理を得るので、語ることに重みがあり、
面白いし、聞けば聞くほど納得する。
まだ今から30年前の石井館長の肉体は、
現役といっても良いくらい筋肉が跳ね回り、
氷柱5~6本を手刀とキックで叩き割っていた。
その強烈な姿の後にインタビューがくるのだから、
意図を持った作り手の私ですら、石井館長をつい尊敬の念で見てしまう。
だからその石井館長が舞う正道館のフルコンタクト空手を見た人が
感動しても無理はない。

インタビューを聞いていると付け焼き刃か、否かはすぐにわかる。
仮に岩波ビジネス文庫に書いてあるようなことを言ったとしても、
日頃の行動が伴っていないと、すぐにウソがバレてしまう。
一般企業の朝礼当番で、
岩波ビジネス文庫の受け売り話をしても誰も聞いていない。
なぜなら、あなたの姿をいつも見ているからだ。

昨年、おそらく私の監督人生の中で最高傑作のひとつとなる仕事を得た。
ある営業所の成績がなぜ不振なのかをビデオで行動観察し、
それをみんなで見て改善するという、まるで経営コンサルタントのような
仕事を請け負った。
そのことについては、また後談するが、その取材で出会ったトップセールスの
村山 雅裕課長が、取材最終日に行なってくれた打ち上げ会のあいさつで
「私の取材をしながら、監督はいつも動いていた。
修理が始まると、わきから工具を出してくれ、営業車が欲しいと思った時には
営業車が横にあった。お客さまと商談中にチラシを渡したいと思った時には
チラシを横からスッと出してくれた。私が欲しいと言ったことは一度もない。
監督はいつも事前に予測して、細々と準備をしていた。
これがプロの仕事というものだ」と言い、さらに、
お客さまに感動を与える仕事とは、いつも事前に予測し準備万全にして、
なお、気配りをしてこそ、満足を提供でき、次の仕事がいただける。
業界に関係なく、万事プロの仕事とはそういうものだ!」
と付け加えた。
自分の日頃の活動を今一度見直して、
明日の仕事に生かそうという彼独特の貪欲さが言葉の奥にはある。
まさにトップセールスとは、そういう人だからこそなれるのだ。
私はこの言葉を聞き、シビれた。
しかし、この言葉の持つ真の意味を他の営業マンの内、
幾人が感じたのかはわからない。


(取材最終日、営業所全員で打ち上げを行なってくれた)

営業も制作も小さな積み重ねが、やがて大きな実を結ぶ。
会社経営をしていると、時代の流れに気付かず、
あわてて大きく舵を切らねばならない時もある。
できることなら社員全員でカツオの群れを探すごとくソナーになり
時代の流れに敏感になり、急に大きな舵を切るのではなく
微調整を繰り返し、結果として大きく舵を切ったと同じようにしたい。

そうでなければいくらカラダがあっても持たない。
小さくかわして、大きく攻める。
石井館長の言葉がよみがえる。
小さな攻撃を休まず連続して出し続ければ、
必ず相手がひるんで、そこから勝機が生まれてくる。

これを我が社が進むための行動指針にしたいものだ。


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