白い月

白い月

哀傷

2016-12-27 08:53:47 | 心事ポエム

揺籃をゆする 冬日の至福

使いきらないまま逝くつもり


窮状を訴える老女の嘆きを

傍近く引き寄せる善意は無い


情動もはや尽き 音源が遠のく

支えきれない黙契の印抱え 海を渡り 空を飛ぶ鳥よ


朱い肉が主張する幻日の記憶

信じたのが間違い


からくりが見えて 思わず笑った

幼児のように驚く顔の救済


すり寄る母性を拒絶する寡婦は

子を産まぬまま老いてしまった


誰を誹るでもない憂き目

終わりの月に投網をかける 














得心

2016-12-08 22:17:25 | 心事ポエム
 
事の顛末は

けだるく聴き流した
 

 
ありのままの

石の声は胸底に落した

  

天涯を歩む

死者達の眼差しに促され 励まされ

 
 
夢を絶つ為に

生きてする善意を捨てた


 
比類無き冬の空に寄り添い

冷え込む地軸を叩く錫杖


 
取り戻したい無垢の有情無常

二度とは戻らぬ流転の時空



私がわたしになる時

いつも不具合を抱えて病んでいる幻の月よ。

 

別れ

2016-11-09 21:07:35 | 心事ポエム

とうとう終わりの時が来ました


柔らかな鳥の羽根のように


ひらひらと拡がるあなたの微笑み


何処か似ている風の中から


聞こえてくる荒野の吐息が冷たくてならぬ。


様々な人々の 様々な死のかたち孕み乍ら


新たないのちを生んでいく別れの刻々


露わになったあなたの痛みが涙になって


降り積む雪が わたしに冷たく纏わりつく


すぐ消える・・・・ 


溶けて無くなる・・・・



哀しみも 憐れみも 嗚咽も 思慕も 無念も 


風を傷つけ 道を塞ぎ 盲目を強いる昏い日輪よ



あなたの躰を通り過ぎ 滑り落ち


何処へ届けようもない哀訴の旅が始まるのか。 




 


  


天の時

2016-10-16 14:24:41 | 心事ポエム
どうしても譲れない道

すれ違いざまに肩が触れた

流れ星を創る十三夜


回廊に射し込んで怯む懈怠 

二度とない午後の仮睡 

杜から来て 杜に還る人に

声をかけてはいけない


何を視 何を聴き 何に哭いたか

澱んだ眼差しの奥に燃えあがる

誰にも告げないで死んでゆく昏い陽炎


あれから半年、あれから三年・・・二十六年・・・

折々に得るふさわしい時の正命

今日の満月が潔く その時を告げる

告知

2016-10-02 18:45:48 | 心事ポエム
隠れ住む杜の主に

ささやかな敬意を祓い    

秋の終わりの息災の顛末を告げる


何事も見逃さない瞳を開き

重なる嘘 移り気な善意 根拠なき確信 

しかと見つめた筈だけど・・・


この部屋にはもう似合わない

緑色の椅子とパイプも解き放とうか

声を失くした山鳩の行方をも気にかかる


気を惹く病葉

日に日に積み重なる 

駆け上がる涯を目指す白い道はまぼろし。


わたしを曳いてゆく月よ

轍が一層深くなった 

ゆうべは冷たい雨が降った


心にもなく ふわふわと 

みんなが不機嫌 みんなが不寛容・・・と

うそぶく時代を 今暫し生きていよう