孔雀の孤独：バジル（1998）

Basil (1998)

約１００年前の英国を舞台にしたクラシックなドラマ。監督Radha Bharadwajはどっかで見たなと思ったら、以前「クローゼット・ランド」という、尋問官アラン・リックマン＆囚人マデリン・ストーの２人しか出てこない怖い映画を撮った人でした。この映画も暗く重くシリアスな復讐劇です。

バジル（ジャレッド・レト）は幼い頃に母を無くし、由緒ある家庭の厳しくプライドの高い父親（デレク・ジャコビ）に育てられた世間知らずで純粋な青年。従兄弟のクレアとともにお屋敷に住んでいました。ある日浜辺で足をくじいたバジルは、謎の男ジョン（クリスチャン・スレイター）に助けられます。友達のいなかったバジルは彼を兄のように慕い、ジョンの知人のジュリア（クレア・フォラニ）に惹かれ、母の遺産を相続する２１歳の誕生日の２週間前に父に秘密で結婚し、彼女に相続した屋敷をあげる約束をします。が、実は全ては仕組まれた罠で、バジルは全てを失い、無一文で生きていくことを余儀なくされるのでした・・・


孔雀みたいな美青年バジル（ジャレッド・レト）。

前半は英国の時代映画に特有の上流階級の描写や家族の確執、控えめなトーンでメリハリ無し。薄味でもいいんですよ、でも薄味と「味が無い」のは違います。だけどお人よしのバジルが騙されて秘密で結婚するところあたりから、ちょっとハラハラします。その後どんどん悲惨な運命に。勘当されて、高級な服を労働者の服と交換して肉体労働したり。お坊ちゃんでお上品、頼りない美青年バジル役はジャレッド適役。ただし、私の好みでは全然ありません（笑）。ジュリアの家には温室があり、そこに孔雀が放し飼いになっているのですが、この箱入り美青年バジルを象徴しているんだろうなあ・・・
謎の男役クリスチャン・スレイター、ここでは謎めいてセクシーで男らしい役なんでしょうけど全然生彩無いです。この映画はスレイターの役が見せ所のはずなんですがねぇ。デレク・ジャコビだって普通のむかつく頑固親父だし。


苦労の末、念願の山男となったバジル（嘘）。こっちの方がいいなあ。

結論を言うと、誰か好きな人が出ていなきゃ途中で挫折しそうな映画。「いつか晴れた日に」「眺めのいい部屋」等大好きな方には違う見方が？いや、そういう英国時代劇正統派のファンには２人のアメリカンが主役なのが解せないはず。バジルの鼻にかかった英国上流階級アクセントと、ジョンの庶民的アクセントの対比がストーリーにも重要になってくるはずですが、２人とも英国アクセントなしです。だから英国らしい雰囲気も今ひとつ。
つまり中途半端なのです。いい俳優を何人も使いながら、TVドラマみたいに普通になっちゃった感が残念です。