最初にお断りいたします。この記事は日本刀の話がメインです。日本刀は武器であり、「殺人」を目的として作成されるもの。私は殺人を肯定するわけでも、ましてや戦争を賛美するわけでもない。しかし武器の話であると言うことに違和感を感じる方は、この記事はご遠慮いただいたほうが良いかもしれません・・・
日本刀や銃器といった武器。コレクターも多いですね。「出刃包丁コレクター」は聞いたことないけど「アーミーナイフコレクター」はたぶん多数。なぜ人は武器に魅力を感じるのか。フォン・トリアー脚本の映画「ディア・ウェンディ」を見た方は、なぜ人が武器(この場合はピストルでした)に惹かれるのか、必ず思いをめぐらせたに違いありません。社会的に弱者だった若者たちが、拳銃を力の象徴とし、それを携帯することで自分に「力」を与える神聖なお守りとして、銃への異常な愛情を持つ。この映画はそれを強烈なブラックユーモアでくるみ、衝撃のラストで唖然とさせてくれました。武器の魅力とは?相手を殺すという目的のために作られ、実際に機能する、その力が基本的に殺傷能力を持つ肉食獣とは違う、弱い私たちにとって大きな魅了となるのではないでしょうか。そして所有することで、その力が自分の物になったような気分になる。自分自身が力を得たような?・・・私は所有しようとは思いませんし、武器を携帯したからって強くなった気分にはなりませんが・・・
<ディア・ウェンディ(2005)>
さて、先日興味ぶかい方にお話を伺うことが出来ました。その方はインダストリアル・デザイナーだったのですが、病気をきっかけに、日本刀のデザイナーに転向された方。日本刀についていろいろ教えていただきました。この記事はそのときのお話を元にしていますので、不確実な部分等あってもご勘弁ください。
日本刀って、西洋や中国の剣に比べて随分軽そうですよね、との私の質問に、それは構造や使い方が基本的に違うためとの説明頂きました。日本刀は中央の芯に比較的柔かい鉄、刃の部分には何層にも鍛えられた硬い鋼が使用されています。つまり刃物としての理想形、柔らかい部分があることで折れにくく、鋭利な固い部分かあることでよく切れる訳。また、包丁と同じく、日本刀は「引いて切る」刃物。柄に近い部分で物に切り入り、手前に引くことで、その長い「はかく」を生かして力を必要とせずものを切ることを可能とするとのこと。そのため、良く映画である竹を何本もばっさりシャープに切り落とすシーン、あれは本当なんですって。ただ腕も必要ですが・・・「居合の達人じゃないとああはいきません」とのこと。それに比べ、西洋の剣は一種類の鉄を鍛えて作り、基本的に「叩き切る」「刺す」の使用法のため、とにかく重い。力の強い武者が力任せに振り回す「力勝負」であり(たしかにボロミアは振り回してましたわ)、そのためとにかく力持ち、が有利だったそうです。おのずと鎧も分厚く、重くなる。日本刀での戦いは技術があれば、力は必要ない。中国の剣も西洋の剣と同じタイプだそうです。
現在日本刀を作るには5年修行しないと資格がもらえないそうです。刃を研いで刃物として使用できるようにすることはある程度の技術で可能ですが、最後の砥ぎ、日本刀の何層もの鋼を的確に砥ぎ出す仕上げが出来る職人は、その方に言わせると「現在京都に一人しかいない」とのこと。
結局、伝統ある日本刀も、大戦中に工場で大量生産されたような「軍刀」の、大陸での愚かな使用方によって忌まわしいイメージが定着してしまったのは事実です。そして戦争が終わり「武器」として大量にアメリカに没収された日本刀の中には、大変価値ある名刀もあったとか・・・日本刀の美術品としての価値は、その伝統と歴史に培われた工芸的、機能的完璧さにあるのだと思いますが、インダストリアル・デザインの観点からすれば、デザインとは「その機能を最大限に果たす」ためのもの。つまり全ての武器のデザインは「殺人のために最大限に機能を果たす」ことが目的です。だから私は武器を美術品と呼ぶことに違和感を感じるのは事実ですね。目的は別として全ての完璧な機能美をもつ物は美しい、との考え方には同感なんですが。私は武器愛好家じゃありません、念のため。
日本刀や銃器といった武器。コレクターも多いですね。「出刃包丁コレクター」は聞いたことないけど「アーミーナイフコレクター」はたぶん多数。なぜ人は武器に魅力を感じるのか。フォン・トリアー脚本の映画「ディア・ウェンディ」を見た方は、なぜ人が武器(この場合はピストルでした)に惹かれるのか、必ず思いをめぐらせたに違いありません。社会的に弱者だった若者たちが、拳銃を力の象徴とし、それを携帯することで自分に「力」を与える神聖なお守りとして、銃への異常な愛情を持つ。この映画はそれを強烈なブラックユーモアでくるみ、衝撃のラストで唖然とさせてくれました。武器の魅力とは?相手を殺すという目的のために作られ、実際に機能する、その力が基本的に殺傷能力を持つ肉食獣とは違う、弱い私たちにとって大きな魅了となるのではないでしょうか。そして所有することで、その力が自分の物になったような気分になる。自分自身が力を得たような?・・・私は所有しようとは思いませんし、武器を携帯したからって強くなった気分にはなりませんが・・・
<ディア・ウェンディ(2005)>
さて、先日興味ぶかい方にお話を伺うことが出来ました。その方はインダストリアル・デザイナーだったのですが、病気をきっかけに、日本刀のデザイナーに転向された方。日本刀についていろいろ教えていただきました。この記事はそのときのお話を元にしていますので、不確実な部分等あってもご勘弁ください。
日本刀って、西洋や中国の剣に比べて随分軽そうですよね、との私の質問に、それは構造や使い方が基本的に違うためとの説明頂きました。日本刀は中央の芯に比較的柔かい鉄、刃の部分には何層にも鍛えられた硬い鋼が使用されています。つまり刃物としての理想形、柔らかい部分があることで折れにくく、鋭利な固い部分かあることでよく切れる訳。また、包丁と同じく、日本刀は「引いて切る」刃物。柄に近い部分で物に切り入り、手前に引くことで、その長い「はかく」を生かして力を必要とせずものを切ることを可能とするとのこと。そのため、良く映画である竹を何本もばっさりシャープに切り落とすシーン、あれは本当なんですって。ただ腕も必要ですが・・・「居合の達人じゃないとああはいきません」とのこと。それに比べ、西洋の剣は一種類の鉄を鍛えて作り、基本的に「叩き切る」「刺す」の使用法のため、とにかく重い。力の強い武者が力任せに振り回す「力勝負」であり(たしかにボロミアは振り回してましたわ)、そのためとにかく力持ち、が有利だったそうです。おのずと鎧も分厚く、重くなる。日本刀での戦いは技術があれば、力は必要ない。中国の剣も西洋の剣と同じタイプだそうです。
現在日本刀を作るには5年修行しないと資格がもらえないそうです。刃を研いで刃物として使用できるようにすることはある程度の技術で可能ですが、最後の砥ぎ、日本刀の何層もの鋼を的確に砥ぎ出す仕上げが出来る職人は、その方に言わせると「現在京都に一人しかいない」とのこと。
結局、伝統ある日本刀も、大戦中に工場で大量生産されたような「軍刀」の、大陸での愚かな使用方によって忌まわしいイメージが定着してしまったのは事実です。そして戦争が終わり「武器」として大量にアメリカに没収された日本刀の中には、大変価値ある名刀もあったとか・・・日本刀の美術品としての価値は、その伝統と歴史に培われた工芸的、機能的完璧さにあるのだと思いますが、インダストリアル・デザインの観点からすれば、デザインとは「その機能を最大限に果たす」ためのもの。つまり全ての武器のデザインは「殺人のために最大限に機能を果たす」ことが目的です。だから私は武器を美術品と呼ぶことに違和感を感じるのは事実ですね。目的は別として全ての完璧な機能美をもつ物は美しい、との考え方には同感なんですが。私は武器愛好家じゃありません、念のため。
髭ダルマLOVEでございます。
武器ですか。あまり考えたことのないテーマでしたので興味深く拝読させていただきました。
>そして所有することで、その力が自分の物になったような気分になる。自分自身が力を得たような?・・・
この心理はとっても良く理解できます。
>武器を携帯したからって強くなった気分にはなりませんが・・・
(危険な発想かもしれませんが)私は、強くなったように錯覚してしまいそうです。ありがたいことに今日まで武器を持とうと考えたことはありませんが。
>全ての完璧な機能美をもつ物は美しい
コレは最近分かるようになった気がします(ほんとかよ?)無駄を排除した「そぎ落とされた機能美」って素敵です。
「武器」のお話なんですが、これを読んでいたら、ダイレクトに「銃」や「剣」「日本刀」のことでなく、人間関係のお話に見えてきて。「弱い」から「強い」モノへの憧れを抱き、執着する。うーん、まさに人間関係。虎の威を借る狐的発想でしょうか。
うーむ。
なんか取り留めのないコメントしちゃってすみません><
ちなみに、pointdpoさんってライターさん(もしくはエディターさん)なんですか?なかなかインダストリアル・デザイナーの方(しかも日本刀のデザイナー)とお話をする機会なんてないような気がしたので、思わずそんな想像をしてしまいました^^
この記事、「桜」の記事の次に「日本刀」ってのはまずいかな~とか思ったんですけどね。
やばい人と思われたらどーしようって・・・
>(危険な発想かもしれませんが)私は、強くなったように錯覚してしまいそうです。
ふーん。私も実際に携帯したことがないので(笑)、
多分強くなったような気はしないだろうな、と思ったのですが・・・
実際はどうなんでしょうね。
男の人と女の人では感覚違うかも知れませんしね。
髭ダルマLOVEさんて男の方ですよね??
>無駄を排除した「そぎ落とされた機能美」って素敵です。
私鳥好きなのですが、鳥って空を飛ぶために究極に進化した生き物なんです。
だから本当に美しいと思います。
人間のするデザインも、時代を超えた究極の機能美っていうものが存在しますね。
だから、武器の美術品には「究極の機能美」+「力」があると言えます。
そこが人々を惹きつけるんだなあ、って。
>ライターさん(もしくはエディターさん)なんですか?
ライターやエディターだったらもっと文章上手いですよ!!
あの方たちプロですからねぇぇ。
美術系の学校を出ているので、
交友関係からデザインやアート関連の方とお話する機会は多いです。
このデザイナーの方も、某車の初代デザインをされた方で、
この間の飲み会でお会いいたしました(爆)。
この飲み会ではもう一人「映画映写技師」の方がおりまして、
映画のテープ交換(ていうのかな)を見せてくれ~と頼み込むことに成功!
おお「ニューシネマパラダイス」だ!
凄く楽しみ!
女なんです★
えへ。
HNでそう思われたのでしょうか?
>ライターやエディターだったらもっと文章上手いですよ!!
いえいえ。充分素敵な文章ですよ^^
>この飲み会ではもう一人「映画映写技師」の方がおりまして
いろんな方がいた飲み会なんですね。楽しそう。名作、ニューシネマパラダイス楽しみですね^^
そうですHNでてっきり?!
イメージが「髭!」みたいな。
文章もなんとなく中性的な感じですよね。
普通雰囲気で解るものなのですが・・・!
でも私も男の人と思ってらっしゃった方もいましたからね・・・一応プロフィールのイラストは女に見えると思うんですが・・
文章、女性っぽく書いていたつもりだったんですが、中性的でした?
pointdpoさんも男性に間違えられたことがあるんですね。インターネットって面白いですね^^
ちげーよって!!(爆)
名前って先入観もっちゃいません?
そう、重要ですよね。私のHN,すごく適当に付けたんですわ・・・実は・・・でもいまさら替えられないし。もう略してptdにしゃおうか、なんて考える今日この頃。
私は結構男の人が好きそうなものも好きなので、間違われるのかもしれませんね。実名も実は男と間違われます。
えっネットおなべなんですか!?
気が付かなかった!てか、ちげーよっ!