指輪をそっと置いた。
丸二年はめていた指輪。
特定のときやスポーツのときは外していたけど。
結婚指輪。
結構悩んだ。
悩んだ末に、そっと置いた。
指には、指輪の跡が残り、そこだけ白くなっている。
二年という月日が、指に刻んだのだろう。
決して忘れようとか、もう何の感情もないとか、そういうわけじゃない。
むしろ逆だ。忘れることは絶対ないし、心に残る感情は消えることはない。
ただ、悲しみに身を浸してきたこの二年。
前述したが、三回忌、命日を終えて、1つの区切りがついたかのように思える。
自分の人生を考え直そうと思ったんだ。
正直、今でも、左手薬指が寂しいと思う。
ただ白い跡だけが残る左手薬指。
でも自分なりに前を向こうと思ってみたんだ。
亡き妻の夫だという誇りを胸に抱きながら。
甘えてるような気がするんだ。
悲劇の人間を演じているような感じで。
残念ながら、私はまだ生きている。
生きている以上、前を向かなくてはならない。
どちらにしても悲しいな。
妻が亡くなったこと。
残されたものが生きていかなければならないこと。
友人が言った。
「忘れないという形の愛はないだろうか?」
何も出来ない自分だと思っていたけど、それならできそうな気がした。
どうか悲しいと思わないでほしい。
指輪を外したことを。
忘れねばこそ、思い出さず候。
そういうこと。
お墓参り来てくれたり、遊びに付き合ってくれたり、
悲しみを分かち合ってくれる友人に感謝。
今までが後ろ向きだったとは言わないけど、
これからは前向きに生きることを誓う。
亡き妻も、きっと背中を押してくれるに違いない。
そうして、新しい日々へ歩む。
時々ふと立ち止まりながら。