大阪発達支援センターぽぽろブログ ぽぽろ番

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大阪市鶴見区今津北にあります。

ホットケーキづくり(加筆)

2009年06月09日 | 児童デイサービス
 
     子どもは夕方育つ

随分前から写真だけ貼り付けて下書きとして投稿(公開されない)され、日の目を見るのを待っている記事がこれです。
 スタッフのKさんがぽぽろでは実践だけではなく実務もしなければならないし、忙しいから書こうとすると休日になります。休日は休まないと体がもちません。というわけで、勝手に書きましょう。先々週の金曜日学童。

 「子どもたちは夕方育つ」というのは食事や入浴準備などで忙しく手薄になる入所施設の夕方の時間帯の話です。学校などから帰ってきた子どもたちが、大人の目がないのびのびできる環境の中で力試しをしたりして自信や意欲を育てていく夕方の光景を見て言われたことばだそうです。

 この写真、彼らにとってお姉さんのような存在であるスタッフのKさんとホットケーキづくりの材料を買いに近くのスーパーまでお買い物に出かけた時の様子です。金曜日放課後はだいたいこの3人が定着してきています。

 写真がとてもいいですね。多分、いつも伝えたい感動や視点が定まっているからいい写真が撮れるのでしょう。いつも写真がいいからよい記事が書けるのですね。(と、ほめておこう。)
 これからもスタッフの中で子どもの見方や発達の視点などを共有する努力を大切にしたいと思います。

 だから、この写真なんかは解説は不要ですね。じっとながめてください。あとでまたKさんがつけ加えるでしょう。

<以下が加筆部分>
3人で仲良く手をつなぎ、「本当にあった浮「話obake」をしながら、近くのコンビニへ。

中1、小4、小2と年齢はばらばらですが、「自分より小さいから譲ってあげよう」とか、年上のお姉さんがする事を見て、憧れの気持ちを持ったり・・・と異年齢でのかかわりが自然と生まれるのが学童保育のいいところだなと思います。


牛乳、たまごを見つけてレジへ。
お金を払いたかったMさん。
Yくんの、「僕が払いたい!!」の一言で、「いいよ!」と譲りました。
おつり、レシートをもらい、お店を出ました。
「持つ!!」と言ってくれたのは、Mさん。
たまごが入っているので慎重に運びました。

 <続きを読みたい方は以下の「続きを読む」へ>


牛乳をいれる係り、ホットケーキミックスを入れる係り、たまごを割る係り、と3人で分担して生地を作りました。

牛乳は目分量で。
ホットケーキは何度も作ったことがあるというMさんが、「もう少し」「ストップ!!」と的確にアドバイスしていました。

よくかき混ぜて、ホットプレートへ。

裏返すのを心待ちにしていました。

Mさんは、真っ先に「Uさんに渡してくるわ!!」と事務所で仕事をしていたUさんのところへ運びにいきました。

2枚ずつペロリと食べ、そのあとは・・・


それぞれ、お皿を台所へ運び、洗剤をつけて洗いました。拭いて、食器棚の片付けるところまで。

この日、なぜホットケーキ作りをしようと思ったのか・・・というと
右手の麻痺があるMさんは、ほとんど右手を出そうとしません。

Mさんが右手を使おうとしているときを見たのは、
お菓子の袋をどうしても開けれず、開けてくれる人が近くに居なかったため、仕方なくこぶしで袋を押さえお菓子を開けた時と、
私とアルプス一万尺をした時だけです。

失敗してはいけないという気持ち、使いたくても使えないんだと強く思う気持ち、そうやってMさんは、うまく出来ない自分を否定的に思っているように見えました。

食べることが大好きなMさん。
大好きなホットケーキを作るために、そして皆においしいと言ってもらう中で自信につながり、今まで認めたくなかった右手を受け入れ「もっともっと作って皆に喜んでもらおう!!」
と感じてくれたらいいなと思っています。

現に、自分が食べるよりも先にUさんへホットケーキを持っていき、「ありがとう」と言われた時の表情、食べ終わって、「おいしかったー」と言ってもらった時の表情は、とてもおだやかでいい笑顔でした。

一つひとつの新しい自分との出会いの積み重ねが、他者による心の支えではなく、自分の中に心の支えをつくってくれるのです。
その力は「もっとがんばってみよう」と活動を立て直したり、修正したり、まとめあげたりする力にもなることでしょう。そして、障害をもっている子どもや青年には、障害に立ちむかう力もあたえてくれるのです。
       中略
障害を持った子どもたちの発達を見る視点として、個々の機能や能力の獲得のようすだけではなく、このような人格形成レベルを視野にいれることがたいせつです。
     
 
 発達とは矛盾をのりこえること 
              白石正久
 より 

<以上が加筆部分>

 この日は私(U)はもっぱら実務と電話の応対に追われておりました。でも、Mちゃんが真っ先にできあがったホットケーキを電話中の私のところに持ってきてくれました。普段はおやつをめぐるトラブルが絶えませんが、みんなと一緒に買い物から始まり作ってできあがって、そして片づけるまで過ごした時間の値打ちですね。Mちゃんが一番困っているのでしょうが、家族の悩みも深刻です。でも、このような経験の積み重ねが人への信頼と自分への自信を育ててくれるのではないかと長い目でみるようにしています。

 この1週間もたくさんのドラマがありました。写真もたまっています。でも、書く時間がありません。