マニラには、ほぼすべての公文書の偽造をオーダーメイドできる偽造市場がある。
もちろん違法だが、しかも安くて早い。
薄い木製のプラカードをジェスチャーで示す。
ここでは卒業証書が主流だが、成績証明書、免許証、パスポート、推薦状、裁判書類、宣誓供述書、印鑑、スタンプ、領収書、
小切手、賞状、バッジ、銀行書類、身分証明書など、あらゆる種類の書類がすぐに手に入る。
「ここに印刷してほしい名前を書いて」と言われ名前を書く。
フィリピンのマニラのレクトと呼ばれる怪しげで時には不気味な地区で、事実上あらゆる種類の公文書を注文することができる。
尊敬すべきフィリピンの政治家であり詩人であったクラロ・M・レクトにちなんで名づけられたこの地区は、
一般に「レクト大学」と呼ばれ、1960年代に首都の大学地帯に隣接して誕生し、闇市場の学期末レポートや
偽の成績表の需要を満たしていた。
地元のシンジケートによって運営されているとされるこの組織は、国内外を問わず、あらゆる種類の偽の証明書を
専門に扱うまでに拡大している。
正午でもレクトに漂う重苦しい雰囲気、レクト沿いや隣接する通りには、海賊版映画やArmaLiteのレプリカ銃、
色鮮やかな性玩具を売り歩く露天商の間に挟まれた、名もないポッポ印刷屋がある。
白昼堂々、小さな机と椅子、木製の看板で偽造品を宣伝しているのだ。
露店は、客が露店の斡旋業者や「顔役」と呼ばれる人々に注文を出すための受付センターなのだ。
注文を受けると、露店は元締めへ電話をかけ、見積りを取る。
その後、彼らは顧客と最終的な条件を交渉し、仕様が書かれた伝票を運び屋へ手渡す。
偽造品は近くの工場兼工房で作られ、「達人技巧者」たちによって製造される。
この「達人技巧者」たちは、コンピューターグラフィックスのオペレーターで、書類を調査し、Corel DrawやPhotoshopを使って
スキャン、レタッチ、印刷を行う。
ペンやインクを使った巧みな仕事も欠かせない。
プリンター、スキャナー、ラミネーター、ドローイングツールを備えたレクトの偽造工房は、
他のグラフィック・デザイン・スタジオとよく似ている。
(この工房がどこにあるかは、街の諜報員でさえ正確には知らない。その方がいいだろう」と彼らの一人が言う。)
そしてもう一つの達人は「署名や」と呼ばれるサイン代行業だ。
達人の域になると瞬く間にほぼ見分けのつかないサインが完成する。
その昔、レクト大学では、P O E Aの書類やカード、ブランクパスポート初めなんでもあった。
N B Iの無犯罪証明書まで作成できた。
なぜ人々は組織犯罪シンジケートと違法な取引をするために、あえて治安の悪い地域に足を踏み入れるのだろうか?
その理由のひとつは、リスクがあるにもかかわらず、経済的に合理的だからである。
たとえば、法的な身分証明書を兼ねた住民税証明書を取得するには、総年収を申告する必要がある。
しかし、わずか₱100で、内国歳入庁から盗まれた実際の公式用紙に印刷された偽造品を買うことができる。
フィリピンの平均年収は約230,000で、収入からお金を節約することが重要であり、偽造書類を選ぶことで
正規申請時の費用と比較、節約できるお金は、ボリュームのあるJollibeeランチセットやコーヒー・ラテ代金に相当する。
世界で最後に離婚が違法とされたこの国で婚姻無効証明書を取得するには、数年に及ぶ審理や法的手続きに出席するために
仕事を休む時間、費用を考慮しなくても、最高で25万ペソの費用がかかる。
レクトでは1,000ペソである。(外国人はボッタクリ価格になる)
アメリカ大使館の領事がフィリピン人のビザ申請書類を一瞥もせずに拒否する話はなるほど思う。
レクトの脇道では、ゴム印屋、エッチング屋、IDバッジを作る彫刻屋、白紙の領収書を作るプレス屋が列をなしている。
また、偽運転免許証用の写真を撮るショッピングモールの中には、ゴム印、合鍵、ラミネート加工されたID、ブランド入りの
ストラップ、名札を専門に扱う合法的なクイックプリント・ショップがあり、身分証明書や身分証明書に関する道具の数々は、
露天商が売りつけていたものと不思議なほどよく似ている。
ダンロップ、クイックシルバー、DHLなどの企業ロゴを集めたアルバムもあり、それを使ってオリジナルのストラップや
スタンプを飾ることができる。
こんなサンプルも見せてくれた。
グラフィック・オペレーターがPCに向かい、Corel Drawでレイアウトをスクロールしている。
ガラスケースに陳列された作品サンプルを見て、どこでデザインの訓練を受けたのかと尋ねた。
彼女達は通りの向こう側をにっこり笑いながら指差した。
レクト大学で学位を取ったのよ」彼女は笑い、それからスクリーンに集中するために戻ってIDカードの「印刷」を実行した。
エストラーダ大統領が、偽造書類に対する強制的な取り締まりをしたことは有名である。
摘発が行われ、一時、偽装屋の姿が消えた。
しかし、また路上で堂々と始められたが、近年はその姿が非常に少なくなってきている。
路上のポン引き連中がいなくなっただけで、いまだ「レクト大学」は健在である。
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