あるところにとても貧しい村がありました。
ある日、村人の一人が村の片隅で
薄汚れたフリースの布を拾いました。
するとその翌日、
フリースの布からは、
可愛いりんごのおもちゃが生まれたのです。
村人は街に行き、そのりんごのおもちゃを売りました。
売ったお金で、村の暮らしは少し楽になりました。
その翌日には、
パンダのおもちゃが生まれました。
村人たちはそれも、
生活のためにお金に替えました。
来る日も来る日も
フリースの布は、
まるでイソップ物語の
「金の卵を産むにわとり」のように
新しいおもちゃを毎日一つずつ産みつづけ
村人の生活を助けました。
ある日、一人の村人が言いました。
「こんなに毎日、おもちゃを産みつづける布だもの。
このなかにはきっと、素晴らしい宝物が入っているに違いないよ」
それを聞いて村人たちは顔を見合わせました。
「それなら、この布を切り裂いて、
中から宝物を取り出して売れば、
きっとこの村はいっぺんに、大金持ちになれるに違いないよ」
そこで、村人たちは力を合わせて
フリースの布を引き裂いたのです・・・・・・。
すると・・・・・・
中からは
素晴らしい宝物どころか
ごく普通のわんこが一匹
くねくねしながら出てきたのです。
村人たちはがっかりしてしまいました。
しかもせっかくのフリースの布を引き裂いてしまいましたから
明日からはもう、新しいおもちゃも生まれてきません。
「ああ欲張らなければよかった・・・」
しかし、布から出てきたわんこは
堂々とした顔で言いました。
「私はあんなちょっとしたおもちゃたちより
ずっと価値がありますよ。
ほら、水泳競技の高飛び込みなんか
上手にできそうだし
いろいろな球技にも
才能を発揮しそうです。
あるいはタレントとして
バラエティ番組でお茶目にふるまったり
シリアスな演技で俳優として
活躍する可能性だってあります。
つまり私は、
スポーツ界、あるいは芸能界の
『金の卵』というわけです!!」
わんこはそう締めくくると、
得意そうな顔を見せました。
村人たちはそれを聞いてため息をつきました。
そして、あまり期待できない金の卵の
成長をあてにするのはやめて
みんなで地道に働きましたとさ。
めでたしめでたし♪
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