「ら族さん、
私、賞与、もらっちゃんです」
と言われたと思った。
この人は、コロナ渦で解雇された看護師さん。
4月から新しい職場で仕事始めた。
「どこからもらったんですか?」
新しい職場?古い職場???
すると
「今回の作品展で
賞をもらったんですよ。
ら族さんはどうでした?」
今度は聞こえた。
理解できた。
理解できたけど
理解できない。
「はあ。。。
なにも連絡はないですよ」
頭の中が結びつかない。
「連絡の葉書が来た日、
ひどい日で、
だから、きっと緊急事態宣言が
でたから中止になったという
連絡と思ったんです。
であけたら入賞の連絡で。
意味がわからなくて、
5回ほど、考えました」
入賞すると電話連絡でなく
葉書で連絡が来るんだ。
「いつ届いたんですか?」
「木曜日です」
ふーん。
うちの郵便が来るのが遅いとはいえ、
まだきていないということは
私は落ちたか。。。
そんなに彼女の作品は
良い出来だったけ??
と思い返す。
先生は
「よく書いた」とはいったけど
絶賛はしていなかった。
消化不良過ぎて、
おめでとうはもちろんでない。
私は夢をみているんだろうか的な
ボーとした精神状態。
で。。彼女の悲惨な出来事の話を聞く。
「若い人ほど、きつくいうんですよ。
経験者なのにそれもわからないのって。
それでその日は泣けてしまって。。」
「同じ診療科でも
新しい機械をいれているところと
入れてないところがある。
転職経験がない人は、
自分の病院がスタンダードと
思ってしまうからきついんだよね。」
彼女は産婦人科の看護師さん。
前の病院はお産をやめていたので、
なおさら、最新のお産はわからない。
「さずが、ら族さん、医療関係者!」
医療関係者じゃないけど。。。。
系列病院の透析室から
異動してきたスタッフでも
やり方が違うと四苦八苦している。
10数年ぶりにほかの部署から
透析室に戻ったスタッフなんて悲惨。
コンソールは全自動になってきて
記録は手書きからすべて入力。
ダウンした時、
昔は血流を下げたほうが
早く回復するといわれていた。
今も処置は同じと信じ、
血流をさげて自信ありげに
「血流を落としておきました」
と報告している。。。。。
(だれも教えずに、
わらっているのか)
こういうのをみていると、
同じ診療科でも
転職はたいへんエネルギーのいることと
想像ができる。
そして、早々の書道教室を脱出し
彼女をつれて、会場へ。
遠目からみても
彼女の作品はわかり、
入賞者のコーナーにあった。
よく見ると、
入賞は入賞でも一等。
主催者の名前が入った賞だった。
「1番ってことじゃないですか!」
「そうなんですか?」
こんな時までボケないで。。
なおさら、どどーんの墜ちていく私。
そしてなおさら夢に中にいる感じに。。。
現実からの逃避か。。。
なんでこれが一番なのよ。。。。
自分の作品を探す。
隅の方にあった。
ごちゃごちゃしすぎたと反省。。。。。。
当然、落ちるわと思った。
しばらくして、先生登場。
先生には電話で入賞したと
すでに伝えてあるといっていた。
「どれ?入賞って。
え!!!!!!!!!!!!
入賞は入賞でも
一番じゃないの!!!!
え!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
先生が絶叫するくらい、
先生の中でも想定外のできごとだった。
周囲の作品をじっくり見た後
「確かに一番だわ。
裏打ちしたら墨の濃淡にメリハリが出ている。
品が良くできあがっているわ。。。。」
本当に想定外のできばえに化けていた。
このころには
彼女の作品の良さがわかったきた。
「ら族さんも入賞したんでしょう?
どこ?」
「入賞していません。
隅に追いやられています」
「え!!!!!」
その叫びは、なんですか?
さすがに聞けなかった。
その後、先生のフォローあり、
私に対しては、
本当は入賞だったと思う。
けれど強引に押された作品があり、
そのため落とされた。
落ち込むことはないと。
いってくれた。
信じがたいけどね。
裏打ちしたらごちゃごちゃ感満載だけど。。。
彼女に対しては「運」がよかったといた。
裏打ちで格段に良くなったこと。
社中で5人、出展予定が
次に控える作品展との間が狭いことと
この作品展で入賞を狙うには、
全紙で書かないと無理と思い
断念した人が3人いる。
同じように出展を断念した人が
いたから入賞できた。
と。。。
彼女は、いろいろ運がなかったから
たまにはいいですよねと
笑っていたけど。
私は、だめだったと
わりきりつつも、
もやもやしたものが
ずーっとあり、
食事もたべたくなく。。
結局、精神安定剤を飲んで
寝たのであった。
今回、社中のかき方をいれたばっかりに。。。
自分の線が変わって裏目に出た感じ。
賞が欲しくて書いたわけじゃないけど、
なぜ、先生が絶叫するようなことになったのか。。。
なぜなぜ。