怖い、生々しい、でも美しい…。数ある人形の中でも、際立って妖しい魅力で熱狂的な愛好者を持つ球体関節人形。その伝説的な作り手として知られる故・天野可淡(かたん)さんの作品を撮り下ろした写真集『天野可淡 復活譚』(KADOKAWA・2800円+税)が発売された。
球体関節人形はその名の通り、関節部分に球をはめ込むことで自在なポーズ付けを可能にした人形。西洋人形では古くからあった様式だが、国内では昭和40年代、ドイツの芸術家ハンス・ベルメールの作品を作家の澁澤龍彦が紹介したことで広く知られるようになり、人形作家の四谷シモンさんらによって日本独自の耽美的ジャンルとして発展を遂げた。
天野さんは球体関節人形の代表的作家の一人だ。昭和28年に生まれ、女子美術大在学中から人形制作を開始。幼い少女の可憐さとともに、妖艶さや独特の暗さ、怖さも感じさせる作風で高い評価を得るが、交通事故のため平成2年に37歳の若さで亡くなった。その作品はファンの間で「カタンドール」と呼ばれ、活動期間の短さにも関わらず、人気は今なお衰えていない。
本書は、天野さんの没後25年にあたる昨年、天野作品コレクターの写真家、片岡佐吉さんが撮り続けてきた写真をまとめたもの。片岡さんは札幌と東京で人形専門店「人形屋佐吉」を長年経営し、現在は京都市左京区で人形博物館「マリアの心臓」を運営する人形界の第一人者だ。
片岡さんは生前の天野さんとも面識がある。天野作品を初めて目にしたのは、札幌で店を開いて間もなくの昭和55年ごろ。そのときの印象を、「目にした瞬間、魂を取られたように愕然として、すごい衝撃を受けた。こんな人形ってあるのか、と思いました」と語る。それからすぐ天野さんの自宅を訪ね、作品を自分の店で売らせてほしいと頼み込んだという。「実際にお会いしたら、人形のイメージとは全然違う女性でした。色白でおとなしくてきれいで、とても、あんなものすごい人形を作る人とは思えなかった」
今回の写真集では、片岡さんが所蔵する人形を中心に67枚の写真を収録。室内だけでなく海岸や庭など屋外でも撮影しており、全体に暗い色調の背景から妖しい美しさの人形が浮かび上がる趣向となっている。
撮影にあたって、片岡さんが最も苦心したのは「目」の表現だ。天野さんは制作時、まずその人形の性格を詳しく決めて、それに合わせて油絵の具で眼球の虹彩(こうさい)を精緻に描き込み、その上からガラスをかぶせていた。繊細な感性に基づくきわめて手の込んだ技法で、今に至るまで誰も真似できていないという。「天野さんの人形のすごさは、目に集約されています。だから昼間でもライティングを行い、目を強調するようにしました」
有名作家の作品だと1体数百万円の値段が付くこともあり、近年アンティークの一ジャンルとして人気が高まっている球体関節人形。片岡さんは、本当に価値のある人形については▽美しさ▽かわいさ▽存在感▽宗教感▽品格-の5つの基準を満たしているかを判断する必要があると話す。「その5つすべてが備わっているのが、天野さんの人形です」
(磨井慎吾)
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