韓国に〝里帰り〟した潘基文国連事務総長(右から2人目)。済州島南部の西帰浦市を訪れ、歓迎を受けた=5月25日(共同)
英国誌エコノミストが今年末に任期切れとなる潘基文国連事務総長を「歴代最悪の事務総長の一人」と痛烈に批判した。「無能」、「縁故主義」、「国連を私物化」など潘氏はこれまでも非難を浴びてきた。すでに国連は次の事務総長を選ぶ作業に入っており、「ポスト潘」に視線が集まるなかで出てきたエコノミストの酷評は2期10年に及ぶ潘氏の“総合評価”といえそうだ。
幻の日本人国連事務総長
まず秘話を明かそう。
もしかしたら、今の国連事務総長は韓国人の潘氏ではなく、日本人だったかもしれない。潘氏は2006年に事務総長に指名され、翌年1月に就任したが、このときの事務総長選びをめぐり、米国が「次期総長は日本から出したらどうか」と日本政府に持ちかけてきたのだ。
当時、日本はドイツ、インド、ブラジルとともG4を結成し、常任理事国入りを目指していた。だが、G4がまとめた常任理事国枠の拡大を軸にした国連改革案は、中国などの猛烈な反対を受けて実を結ばなかった。
米国の打診は常任理事国入りの代案だったが、日本政府はあくまでも常任理事国入りを目指す方針を変えず、「日本人事務総長」は幻のままで終わった。国連事務総長は欧州、中南米、アフリカなど地域順に選ぶのが慣例のようになっており、当時はアジアから選ばれるとみられていた。こうした状況の中で、韓国の盧武鉉政権下で外交通商相を務めた潘氏が事務総長となった。