Talk to the People / River High River Low | |
Les McCann | |
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このCDは、知る人ぞ知る名盤「Talk To The People」(1972作品)と隠れた名盤「River High,River Low」(1976作品)というレス・マッキャンの70年代の作品の中でも、私が特に好きな二つが一つになった超オススメ品なのです(☆両作品ともデジタルミュージックストアの方で試聴できます。River High…の方は入ってない曲があるのですが、私の持っている国内盤よりも音質は良いです)。
レス・マッキャンは、70年代に10作以上の作品を発表しているので、この組み合わせにした人とは、とても気が合いそうだなぁ…といつもニンマリしてしまいます。
2005年にソウル・サヴァイバーズとして今は亡きコーネル・デュプリー(g)やチャック・レイニー(b)たちと来日した時、レス・マッキャンはライブが始まる前から一人で空いている客席に座っていました(彼は脳血管障害で麻痺している部分があるようでした)。
ほとんどレス・マッキャン目当てであった私は、すぐにそれに気付き、開演まで時間があったので拙い英語で話し、CDにサインしてもらいました。
彼は、とてもオープンで懐の広そうな人だなという印象を受けました。その時、名盤としてはより有名な「Talk To The People」ではなく、「River High,River Low」のタイトル曲が好きだ!と伝えると、自分も気に入っているというようなことを言っていました。
ピアノだけの弾き語りのシンプルな曲なのですが、歌詞がとても素晴らしく、彼の優れたバランス感覚や懐の深さ、広さ、そして世界のそれをも感じさせてくれます。
1曲目は、1971年に発表されたマーヴィン・ゲイのWhat's Going Onのカバーです。泥沼化し混迷を極めるベトナム戦争……その悲惨な戦地から帰ってきた弟の体験を聞いて衝撃を受け、レコード会社の上層部が反対する中、取り憑かれたようにマーヴィンはアルバムを作り始めたそうです。
数多くのミュージシャンに今も影響を与え続けているので、カバーしている人も多く、EXILEのAtushiさんもバックバンドのベーシスト佐野健二さんのアルバムCulture Chameleonでこの曲のカバーを披露しています。スライからアイズレー、ダニー・ハサウェイなどのカバーも入っており、とても気が合いそうです。やはりブラック・ミュージックはリズムそしてベースですよね!
レス・マッキャンのカバーも泥沼のダークな雰囲気が演奏で、人々の祈りが大勢のコーラスを伴ってゴスペル的に表現されているような感じで壮大に仕上げられています。アルバム全体にフィーチャーされているサイケデリックなギターもいい感じです!
その他ファンキーなインスト曲Shamading、North Carolinaは超カッコイイですね!スティーヴィー・ワンダーのSeem So Long、レスの自作曲She's Hereではしっとりと美しいバラードです。6曲目Let It Layは、思わず身体が動いて声も出したくなるノリのいい曲!
タイトル曲のTalk To The Peopleは、近隣諸国との軋轢が生じている現代にこそ、聞いてほしい曲です。
科学がこれだけ進歩しても未だパレスチナなどの民族紛争は解決せず、より複雑になっているのですから、感情とは難しいですね?それは感情を人間そして科学が全く克服していない証拠なのでしょう。
この曲でレスが語るように憎しみも感情、愛も感情です。それは正反対のようで複雑に絡み合っています。だから、ただ表面的に愛だけを叫ぶのではなく、どちらにもしっかりと向き合ったほうがいいのでしょう。
その上で、どちらを選ぶかはあなたの自由(こころに すむ おおかみ (インディアンのティーチングストーリー)がオススメ)。
どうしようもなく混乱した時には、憎み合い、殺し合うことで誰が一番得するのか?を考えてみるといいのかもしれません。
ラップではないにしろ、この曲のトークと歌が入り交じる感じは、ミシェル・ンデゲオチェロなどのヒップ・ホップ・ソウルとあまり変わらないように思え、1972年にこれを作ったレスはやはりタダモノではありません。
わかっている人はわかっているのでしょうが、70年代ニューソウル系の中でも最も再評価されるべき人だと思います。
「River High,River Low」は、1976年に作られたので、80年代に近づき録音機材が変わったためか?サウンドが軽く感じるので、最初は面食らうと思います。
でも、River High~をはじめ、いくつか良い曲があり、特に子供たちの未来を考えた最後の曲、What Is It That We Have To Do To Let Our Children Growはなぜか軽く感じません。この曲はタイトルも長いのですが、曲自体も長く7分37秒もあるのです。が、歌詞も曲もとても良いので、冗長さをあまり感じさせません。
彼の音楽は、ジャズやニューソウルなどの枠組みを取り払い、厳しく悲しい現実の中でもユーモアを忘れずに音楽を楽しむこと、男と女など相反するものをつなぐこと……つまりは愛することを思い出させてくれるでしょう。
言うまでもない名盤であるWhat's Going Onも今だからこそ、知らない人には聞いてほしい一枚です!学生時代、最初に聞いたときは、曲同士がつながっていて一曲目以外何だかわからない感じがしたのです。しかしある時、最後の超名曲Inner City Bluesのカッコ良さに気付かされてからは、全曲の流れが大好きになりました!
現代は、この3枚のアルバムの作られた時代より、外側のものは大きく変わったと言えるのでしょう。が、歌詞を聴くと我々の内側、人々の悩みの根本はほとんど変わっていないのことに気付かされます……だからこそ、これらの作品は、これからも困難の中でも強く生きるヒントを与え続けてくれるでしょう!
What's Going on | |
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