水曜日は里恵の国語の授業。
しかし今までの主力の面々は高校生の部屋へと移り、隼人の現代文の授業と俺の古典の授業に分かれていく。
寂しくなったぶん、新しい顔ぶれが増えている。
今日の問題は俺が選んだ・・・平成17年度奈良県入試問題。
新顔の中2にはきついだろうが、このレベルを下げる気はない。
俺の英語の授業は昼間にやった立教大学を用意していたが、新しい講師の風間が来てくれたので中止。
明日は各高校で試験だ。
顔見世興行の意味合いもあり、今日のところは分からない質問に答えるだけにする。
俺はつれずれなるがままに、高校生の教室と中学生の教室を行ったり来たりしている。
新しい顔ぶれになろうと里恵は里恵であり、今までのように歓声や笑い声で渦巻いている。
そのなかには初見参、里歩(津高1年)の弟の拓夢がいる。
里歩が里恵の授業を受けなかったとしたら、到底津高合格の目はなかった。
受験の趨勢を決めるのは国語。
国語以外の4教科を固めて、国語でいかに失点を防ぐか・・・それが里歩の津高合格への戦略だった。
その里歩が高校生の部屋に場所を移し、代わりに弟が座っている。
里恵もまた感慨を感じているはず。
それにしても、廊下にまで響く嬌声・・・塾を生業として20年以上の俺が圧倒されるよ。
良幸(津西1年)がごそごそ三角比なんぞをやっている。
ったく・・・英語の句と節のプリントをさせる。
真奈(津高1年)が二次関数の最大最小の問題を持ってくる。
ったく・・・古典の動詞の活用を、それに続く助動詞と結びつけながら説明していく。
「高校生の授業の日は決まりましたか」と由梨佳。
まだ決めてはいない。
「親からは『高校生になって、なんで毎日のように塾に行くんだ』って言われるんですよ」
そりゃ、えらいこっちゃ。
ならば即興で、・・・「木曜日が数学、・・・英語は月曜日にしよか、あとは暫時。化学に現代文、古典なんかは後回しや。クラブをしない場合は学校帰りに授業する手もあるけど、高校に入った早々にクラブをするなとも言えへんしな」
高校に進学した生徒9人のうち7人が塾に残ってくれた。
再び3年後の「約束の地」を目指し、勝負をさせてもらえる。
心の底から感謝する次第。