『おしまいの日』(by新井素子)、読了。
『ひぐらし』や『うみねこ』関連で知った本だったりする。
新古書店で買った。
1992年初出。
いわゆるモーレツビジネスマン(←作中当時の表現)の夫と、専業主婦の妻。
妻は常に誰かに依存しなければ行動指針を決められないタイプ。
そんな妻は日記を欠かさず書いているが、夫の健康を見守れない不安感から、自らの心身を破綻させていく。
本作は、妻の一人称の日記と、三人称の文章とで構成されている。
読んで目を惹くのは、やはり妻の日記の文面だ。
突如フォントが大きくなるのはまだしも、何度となく書かれる抹消線にまず混乱する私。
てっきり前の持ち主がボールペンで書いたのかと。
妻は幻聴に苦しめられる。
せっかく親しくなった野良猫も、突然失ってしまう。
更にオカルトネタに取り憑かれてしまった事から、妄想は致命的に加速していく。
妻にとっての「おしまいの日」が訪れるまで。
悲しいかな、この物語に救いはない。
妻が狂ってしまった原因、つまり夫の働き過ぎについては最後まで解決されない。
過労死問題は、作中当時は特に、そして今も横たわっているままだ。
「こんな時代もあったんだねぇ」と遠い目で語れるように、早くならないものかな。
それでは。また次回。