好事家の世迷言。

調べたがり屋の生存報告。シティーハンターとADV全般の話題が主。※只今、家族の介護問題が発生中です。あしからず。

正統王道定番推理小説。

2023-01-15 | その他ミステリ
『地獄の奇術師』(by二階堂黎人)、読了。

『人狼城の恐怖』をきっかけに知った作品。
この作品を短く表せば、良くも悪くも、古き良き時代の古典的本格推理小説である。
作中の舞台は昭和42年。(作品の初出は1992年)
ある富豪の一家が殺される。最終的には全員滅ぶ。
殺人描写はやたらに残酷で、現場はほぼ毎回、真っ赤に染められる。
が、それほどまでに残虐に殺される理由、死体を損壊しなければならない具体的な理由は、私には読み取れなかった。
シンプルに猟奇趣味というのでなく、トリックの一部として必須だったという解が欲しかった。

それで、そんな特異な事件を解く探偵役が、女子高生の二階堂蘭子。
養父が警察の重鎮、警視庁警視正だから捜査に入り放題という、まさにお約束の設定。
しかも、犯人側が仕掛けたミスリードに引っかかって勇み足で失敗しても無問題。
普通はストップ食らうと思う。
と言いますか、何で養父なんだろう。普通に父親じゃ駄目だったのか。
語り手の黎人とカップリングさせるため?

最終的に彼女が解き明かすトリックは、擦れた読者なら察せるかもしれない。
というのは、当の彼女が「推理小説のトリックはつまらない(大意)」と腐しておいて、「この事件もつまらない」と説明してるから。
事件の関係者同士が同病院の同病室に居合わせてたり、身体的特徴の似通った人が出てきたり、偶然(≒ご都合)の要素も少なくない。
黒幕たる真犯人は、あくまで理屈でだけ導かれる。
物語の最後の最後で、蘭子が滔々と語った動機は、ごめん、私にはよく分からん。
真犯人は近親相姦の果てに生まれた不義の子だった!とかだったらまだ理解できたかもしれん。

そして特筆すべきは、巻末に置かれた膨大な注釈。
他の作者の他の作品のネタバレもそうだが、作品や作者への批判まで書かれてる事には流石に閉口。
もし初めての二階堂作品がコレだったら、あまり印象よくなかったと思う。
『人狼城』を先に読んでて良かったかもしれない。

それでは。また次回。

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