好事家の世迷言。

調べたがり屋の生存報告。シティーハンターとADV全般の話題が主。※只今、家族の介護問題が発生中です。あしからず。

星新一ショートショート再読。(その27)

2022-12-07 | 星新一ショートショート
『闇の瞳』
新潮文庫、番号27、『ボッコちゃん』収録。

色んな意味で、X-MENみたいな話。

平凡の両親のもとに、非常識なまでに優れた超能力を宿した子供が生まれる。
その少年は、光源の全く無い場所でも、前方どころか全方向を正確に「視る」事が出来る。
本作の世界は、そうした超能力者たちが増える過渡期だそうで、今は少数派だろう超能力者が、いずれは多数派になるとされている。

そんな少年にまつわる最大の問題、その一つは、しかし超能力自体ではない。
彼の外見が、ある意味、元来の常識ではいっそ異常と、容易に知られてしまう事だ。
例によって細かいネタバレは防ぐが、答えの明かされるのは、まさにラストセンテンス。

ただし、私たちの実世界でも、この少年のような外見の事例は存在し得る。
故に、少年にまつわる、真の問題は別にある。
少年が自らの外見が異様である事を、誰からも指摘されずに生きている事だ。
世間からの迫害を恐れるため、少年の両親は隠れ住んでいる。
少年が生活で接するのは両親と、後は専門的研究家だけ。
その場しのぎのやり取りを続けてしまうのは、人間の性だ。
だが、両親も研究家たちも、少年を永遠に庇護する事は出来ない。
少年が幼いうちは仕方ないが、このまま非情な現実を知らずにいたら、自分の立場を確立できるように導かなければ、遅かれ早かれ悲劇が、ひいては惨劇が起こりかねない

どうかこの家族が、本当の意味で幸せに暮らせる未来がありますように。
「恵まれし子らの学園」みたいな存在が、あってほしいな。

それでは。また次回。

この記事についてブログを書く
« Switch版『ひぐらし奉』プレ... | トップ | 「ヒュプノノーツ」第二部「1... »

星新一ショートショート」カテゴリの最新記事