『最後の地球人』
新潮文庫、番号50、『ボッコちゃん』収録。
本作が書かれた当時は、日本を含め、地球の人口が大幅に増えていた時代だった。
「人口爆発」というのは、20世紀後半によく使われるようになった語だ。
ちなみに筒井康隆氏による『48億の妄想』は1965年作である。
翻って現在の地球人口は、ざっくり言えば80億。2倍近い。
このスピードを踏まえれば、本作の書かれた背景を想像しやすいだろう。
ただ、作中では、地球人口は瞬く間に100億、200億と増していくのに対し、実際の未来にあたる私たちの世界では、そこまでの勢いでは増えてはいない。
というよりも、増えるのが困難になってきている。
人間の消費活動より前に、星の資源が間に合わなくなってきた。
地球外などへ移住するような技術もまだ作られていない。
科学が進めば確かに人口が増えるが、戦争や疫病でたやすく人は死んでしまう。
逆に、本作のような、言ってみれば人類の衰退は、ある意味では既に始まっているのかもしれない。
ともあれ、かくして、全50話をもって『ボッコちゃん』の世界は幕を閉じる。
一旦終焉を、終演を迎えた世界は、「光あれ」の言葉で再起動する。
人間と悪魔が騙し合ったり、見知らぬ宇宙人と出会ったりする地球の歴史が、繰り返されるのだ。
それでは。また次回。