『夜の声』(By W・H・ホジスン)、読了。
全8話収録の短編集。
本命は表題の『夜の声』。
知ったきっかけは、映画『マタンゴ』の元ネタという話から。
総じて貫かれている方針は、「恐怖の根底は海にある」事。
海産物を畏れた(←ちょっと違うか)ラブクラフト作品の原点とも言える作品群。
どのエピソードも、気になった怪しい場所(主に船)を調べた顛末が基本。
(無から発生してるように見える)カビやネズミやその他の怪異に襲われる。
私としては、そもそも不穏な内部に入るなと思ってしまうが、それは私が冒険者じゃないからなんだろう。
ダイヤや真珠などの宝石類をGetする人もいるわけだし。
行方不明者を発見して救い出せた『グレイゲン号の発見』が私の癒やし。
最終話の『水槽の恐怖』だけは趣違って、ホラーで無くミステリ路線。
発表当時、ヘビの生態がまだ理解されてなかった事がよく分かる。
個人的に印象に残ったのは、むしろ巻末の解説。
作者のホジスンは10代の少年時代を過酷な船員として苦労し、それが海洋ホラーを書く動機の一つになった事。
あのフーディニを縄抜けで苦戦させたため、フーディニファンに恨まれて狙われ、警察に駆け込む羽目になった事。
ホームズシリーズがストランド誌で持てはやされていた事に対抗意識を持ったのが、あのカーナッキを生むきっかけになった事。etc。
そして第一次大戦に志願し戦死という終焉に、何ともやるせない気持ちになった。
それでは。また次回。