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節約好きの人にはおなじみの「ポイント経済圏」。特定のポイントを通貨になぞらえ、それを使って商品購入やサービスのやり取りが行われる世界をそう呼ぶ。しかし、2022年はここに大きな地殻変動が起きそうな気配がある。不動の地位にいた「楽天ポイント経済圏」に異変が起きているのだ。(消費経済ジャーナリスト 松崎のり子)
楽天経済圏に暗雲、楽天カードを持つ優位性とは?
今や、「ポイント」は通貨のごとく、日常生活になじんでいる。取引ごとに貯まったポイントを使って買い物や生活サービスを利用し、その決済の際にまたポイントが貯まり――という無限サイクルで成り立っていることから「ポイント経済圏」と呼ばれている。
コロナ禍で節約志向が高まり、「ポイ活(ポイントを積極的に貯めて節約につなげる行動)」を始める人が増えたことも後押しし、ポイントを発行する企業の動きも活発だ。
「ポイ活」愛好家なら、その大半が「楽天経済圏」の住人だろう。楽天が発行する「楽天ポイント」は、累計発行数が2.5兆ポイント超え(2021年8月31日)、年間発行数も4700億超え(2020年度)と、日本一の規模を誇るポイントと言っていい。
この経済圏への優遇パスポートが、「楽天カード」だ。発行枚数は2021年6月に2300万枚に到達、これは東京都と大阪府の人口の合計に匹敵する数字で、いかに多くの人が保有しているかがうかがえる。楽天カードで決済すれば楽天ポイントが付与され、特に楽天グループでの決済に使うとさらに付与率をアップすることができる。他社のカードが使えないわけではないが、楽天カードがポイントアップを狙うための扇の要となっていたわけだ。
しかし、盤石と思われた「楽天経済圏」の景色が変化してきたのは、この楽天カードからだった。「改悪では」とネット上が騒然となったのが、昨年起きた楽天ゴールドカードのポイント改変だ。楽天市場の「スーパーポイントアッププログラム」(SPU)のポイント倍率が、ゴールドカードで決済すると4倍だったのが、4月からはいきなり2倍へとダウンした。通常の楽天カードで決済するのと同じ倍率となり、保有のメリットがガタ落ちしてしまう(新しく「お誕生日月サービス」などの特典はついたが)。
そして、2021年6月からは、公共料金(電気、ガス、水道)・税金(国税、都道府県税など)・国民年金保険料等の支払いについても変更となった。楽天カードで決済する際、従来は100円につき1ポイント獲得できていたのが、500円につき1ポイントと、5分の1に減ってしまったのだ。
まだまだこれから!ポイント付与の仕組みも次々「改悪」
まだまだある。楽天カード以外でもポイント獲得条件の変更が続いている。
SPUのポイント倍率の対象となっていたサービスが変更され、さらに2021年11月からは最大15.5倍だった倍率が15倍に落ちた。
2022年に控えている変更はさらに大きい。4月からポイント進呈の対象となる金額を、これまでの消費税込み金額から、消費税を抜いた金額に変更すると発表した。ざっくり10%分のポイントが減ることになる。
さらに、グループ内の金融機関との連携も見直しになる。
楽天証券では、保有している投資信託の残高に対し毎月ポイントを付与していたが、その条件を変更する。これまで投資信託の残高10万円ごとに毎月3~10ポイントを受け取ることができた(楽天銀行との「マネーブリッジ(後述)」および「楽天銀行ハッピープログラム」への登録の場合)が、2022年4月からは月末時点の残高が「初めて」一定の金額に達したときに付与されることになるのだ。初めて10万円に達したら10ポイント、30万円に達したら30ポイント…ということで、ポイントを得るにはただ投信を保有しているだけではダメで、定期的な購入が必須条件というわけだ。また、これまではマネーブリッジを利用してない場合も、投資信託の残高50万円以上を保有していれば月々の保有額に応じてポイントを受け取ることができたが、こちらも同じ条件へと変更される。
説明が前後したが、マネーブリッジとは、楽天銀行と楽天証券の口座間入出金を連携させるサービスで、この手続きを取ると楽天銀行の普通預金金利が通常の5倍の年0.10%(税引き前)にアップする優遇があった。しかし、これも一部見直され、4月からは残高300万円を超える部分については年0.04%に下げるという。
無論、ポイント付与のルールを決めるのは企業側だ。ユーザーは黙って従うほかはない。しかし、ここまで「改悪」が続くと、楽天経済圏の住人たちは不安になるだろう。携帯電話事業絡みの支出がことのほか重く、ポイント大盤振る舞いができなくなるのではと勘繰ってしまう。その不安につけ込まれ、もしこの先Amazonがポイント付与や決済事業にもっとやる気を出したりしたら、一気にECのシェアが変わるのではないか。
会社への評価は人それぞれとはいえ、楽天はなんといっても国内企業だ。できれば踏ん張っていただきたい。
ヤフーとTポイントとの蜜月関係終了、勢いづくPayPay
2022年のポイント業界で起きる注目ニュースといえば、こちらも大きい。ヤフーのサービスを利用したときに付与されていたポイントが、TポイントからPayPayボーナスへと切り替わる。
ポイントアップのキャンペーンにおいても、これまではTポイント+ PayPayボーナスという二本立ての付与だった。しかし4月からはPayPayボーナスのみとなる。それに伴って、ヤフーの主要サービスでTポイントを消化できなくなるので注意が必要だ。
また、すでに保有されているYahoo! JAPANカードも「PayPayカード」に切り替えとなり、カード決済で還元されていたTポイントはPayPayボーナスへと変わる。
この動きは予測通りだろう。Tポイントはそもそもヤフーの自社ポイントではない。共通ポイントとしては最も古株といっていいTポイントと手を組むことのメリットは大きかったのだろうが、スマホ決済の世界でPayPayがトップシェアを取ってからは事情が変わった。
決済環境の地ならしが済んだところで、いよいよ自前ポイントへの切り替えとなったわけだ。これまでは「5%還元!」といっても、そのうち1%分がTポイントといういびつな内訳でスッキリしないところもあったが、今後は胸を張って言えるようになる。
また、満を持してクレジットカード「PayPayカード」の発行を開始した。このカードで決済すると、通常で利用額の1%がPayPayボーナスで還元される。「Yahoo!ショッピング」「LOHACO」などの決済に使うとさらに1%、それにストアポイント1%が加わって、合計3%のPayPayボーナスが還元される。
「5のつく日キャンペーン」や「PayPayステップ」など、ヤフーやPayPayのキャンペーンやプログラムの対象にも、このカードが追加される――というのは、まさに楽天カードと同じ構造。PayPayはモバイルを基調に、「PayPay経済圏」を回していくつもりだ。オンラインで稼いだPayPayボーナスが節約ツールとして威力を発揮するようになれば、楽天に匹敵する強力な経済圏が誕生すると期待できるだろう。
通信キャリアのポイントは銀行・証券との仲を深めていく
ドコモのdポイント、au(KDDI)のPontaも、自社の経済圏の構築を進める。
中でも金融機関との連携を深めているのがPontaで、2021年6月からは三菱UFJ銀行のスーパー普通預金(メインバンク プラス)の取引で、毎月貯まるサービスを開始した。ダイレクトログインだけで貯まるとは、ポイ活としてはハードルが低い。
さらに、2021年11月からSBI証券のポイントサービスに参加した。株式の購入手数料や投資信託の月間平均保有金額に応じてポイントが貯まる。投信残高が1000万円未満の場合は、保有金額の0.1%(通常銘柄の場合)というので、10万円だと100ポイントということか。これは先の楽天より割がいい。Pontaはau PAYでの支払いに使える上、ECのau PAYマーケットで使う限定ポイントに交換すれば、1.5倍分に増量されるのも太っ腹だ。無論、Pontaが貯まるクレジットカード「au PAYカード」もある。au経済圏は手ごわい伏兵といったところだ。
最後のdポイントだが、他社に比べると「経済圏」というには若干弱い。とはいえ、ドコモ自体はポイント事業を大きな戦略の柱に据えているようで、いい意味での後出しジャンケンを期待したい。現在は三菱UFJ銀行との業務提携が進んでいて、「dポイントが貯まる新たなデジタル口座サービスの提供」が発表されている。通信料金やdカード(クレジットカード)の引き落とし先に設定すると毎月dポイントが貯まるようになるらしいが、どの程度追い上げられるか。
盤石と思われた楽天経済圏の行方を気にしている人は多いだろう。永遠や不変という文字は、何事にもない。
松崎のり子:消費経済ジャーナリスト