老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

2019年参議院選挙総括

2019-07-27 11:20:50 | 選挙
参議院選挙が終わった。辛うじて改憲勢力が2/3以上を取るのを阻止した。それでも、安倍首相は、橋下徹との対談で、改憲を進めると豪語している。

今回の選挙の投票率は50%を切り、記録的な低投票率に終わった。これには様々な理由があるが、最大の理由は、大手メディア(特にテレビ)が選挙の争点を明確に分析せず、ただひたすら形ばかりの選挙報道に終始した事にある。

映画「新聞記者」の中で、「この国の民主主義は、形だけでよいんだ」というセリフがあるそうだが、まさに地で行く報道ぶりだった。

例えばテレビ朝日。「れいわ新選組」と山本太郎現象を取材はしていたが、選挙前には決して放映しなかった。番組中に「れいわ新選組」に言及したのは、羽鳥のモーニングショウでの玉川キャスターのみ。他のテレビ局も同様だった。

「寝た子は起こさない!」今回のメディア報道を一言で言うとそうなる。ところが、選挙後の特番では、山本太郎の演説会や演説内容を報道し、報道しましたよ、というアリバイ作りをしている。他局も同様な報道を行っている。

一時期、メディアスクラムという言葉が流行ったが、現在の報道のありようは、スクラムより、【統制】という言葉がぴったりくる。

(1) 選挙結果の分析
(改選後の議席) 改憲勢力
自民党 113  (改選前 123)
公明党  28  (改選前  25)
維新    16  (改選前  13)
    合計   157
  ※ 改憲に必要な2/3議席数は、164議席。 
  
 (改選後の議席) 反改憲勢力
 立憲民主党 32議席 (改選前 24)
 国民民主党 21議席 (改選前 23)
 共産党   14議席 (改選前 13)
 社民党    2議席 (改選前  2)

さらに付言すれば、公明党は憲法9条に自衛隊を加筆する事には消極的。そう簡単に進むとは思えない。

おそらく、自民党は、これから以降、維新との連携を深め、さらに、国民民主党に手を突っ込んで、憲法改正論者の引き抜きに狂奔する可能性はある。

しかし、今後予想される消費税増税後の景気後退、日米FTA交渉、ホルムズ海峡での有志連合に参加するのか、日韓問題の泥沼化、厚生省の年金財政検証提出等々。本来なら、選挙前にこれらの材料を提供し、国民の投票行動決定の資料にしなければならないもの全てをほっかむり。すべて、選挙後に先送りした。

その為、今後、政権の基盤を揺るがす大問題が目白押し。どれ一つとっても、政権の運命を決めかねない大問題。簡単に憲法改正論議に入れる環境ではない。

◎さて、問題は、この選挙結果をどう読むか、である。

冷静に見ると、単独過半数を逃した自民党は敗北している。比例票は前回16年の参院選から240万票減。

投票率は、48%強。この低投票率では、組織政党が断然有利。つまり、自民党と公明党が有利になる事は明らか。それでいて、自民党は単独過半数を逸した。

どう贔屓目に見ても、自民党の敗北は明らかである。安倍首相や菅官房長官や麻生太郎が、国民の信任を頂いたなどと強弁しているが、何でも自分の都合の良いように解釈する独裁政権独特の感性である。

●絶対得票率の推移
※絶対得票率: これは自民党が全有権者のうちいくら得票したかを示す比率だ。

2012年に第2次安倍晋三政権がスタートして、今回で5回の国政選挙を行った。その結果がこれだ。

2013年参院選 17・7%
2014年衆院選 17・0%
2016年参院選 18・9%
2017年衆院選 17・5%
2019年参院選 16・7%

確実に減少しているのが一目瞭然。要するに全有権者数の2割に満たない得票率で一強と呼ばれる議席を得ている。有権者の5人に1人も自民党を支持していない。

この現実を自民党は良く知っている。だから、今回のように、有権者を眠らせて、低投票率へ誘導する事に選挙対策の全てを傾注している。「寝た子は起こすな」方針が徹底されている。安倍首相の選挙日程が秘密(ステルス作戦)にされたように、今回の自民党の作戦は、選挙自体をステルスすることにあった。

裏を返せば、自民党は党勢の衰退に怯えている。だから、徹底的なメディア対策(統制)をして、決して国民に真実を悟らせない事に全力を傾注している。

今回の選挙前に政府が政府に不利な事柄を隠蔽、改竄、時には無いことにする。国民の目に真実が視えないようにするためにどれだけ腐心したか。安倍内閣の努力の80%以上は、権力維持のための小細工だと考えておかねばならない。

何度も言うようだが、投票率が10%上がれば、劇的な転換が起きるのが、小選挙区制度。オセロゲームのように、政権交代は可能。

※野党の最大の選挙対策は、選挙の盛り上がりをどう構築するか、以外にない。山本太郎現象を野党共闘に取り込まなくて、野党の勝利はない。

自民党が過半数を割り込んだと言う事は、自民党が進めてきた【アベノミクス】などの経済政策、年金などの福祉政策、医療政策、対米国、北朝鮮、ロシア、韓国などの外交政策、消費税10%増税政策に国民がNOを突きつけた、と言う事を意味する。

通常の常識を持った政権なら、この国民の厳しい審判に対して、反省の弁を述べる。ところが、安倍政権の幹部どもは、国民の支持を得られたと強弁するのだから、開いた口がふさがらない。

さらに言えば、通常の政治常識を備えたメディアなら、自民党敗北の現実を厳しく指摘し、様々な政策課題の見直しを迫る論調を張る。それができないメディアは、もはやジャーナリズムとしての役割を放棄し、政権の広告塔としての役割しか残っていない。

その典型的な証拠が、選挙翌日から始まった吉本興業の一連の騒動への集中的報道である。

●自民党敗北の現実を消去するための吉本興業問題

メディア(特にテレビ)は、安倍政権の敗北と言う現実を正しく分析し、国民に伝える義務があるが、吉本興業一色の報道である。しかも、問題の本質を外したお家騒動に焦点を当てた報道で、話にならない。

吉本の芸人と会社がどのような雇用契約を結び、どのような扱いを受けているかは、基本的には、吉本興業の内部問題。それを朝から晩まで微に入り細にわたり、報道する。愚民化報道極まれりと言って良い。

もし、この問題を報道するのなら、弁護士の郷原信郎氏が指摘している以下の問題についてきちんと放映すべきだろう。そうすれば、問題に【普遍性】を持たすことができる。

「契約書のない契約」という“闇”~吉本興業の「理屈」は、まっとうな世の中では通用しない」
https://bit.ly/2YeTuvn
「吉本興業と芸人の取引」は下請法違反~テレビ局、政府はコンプラ違反企業と取引を継続するのか」
https://bit.ly/2GprGu7
「吉本興業、独禁法「優越的地位の濫用」による摘発が現実のものに」
https://bit.ly/2Y9f19N

もう一つ言わせてもらえば、芸人の本質は、自らの芸を見せて、その対価を頂くという所にある。社会の「道徳的規範」の体現者でもなければ、国民の代弁者でもない。反社会的集団(振り込め詐欺集団)のイベントに招かれ、ギャラをもらったとしても、芸人の本質からすれば当然。ギャラを払ってくれる人間や集団がどのようにしてそのお金を稼いだなどと言う事は、知った事ではない。

まして振り込め詐欺グループの連中が、振り込め詐欺で稼いだ金だなどと言うわけがない。と言う事は、反社会的集団などと知らなかったというのは理解できる。会社が取ってきた仕事なら、そういう問題は会社のマネージメントの問題。芸人の問題ではない。

となると、問題は、会社に黙って闇営業をしたことだけになる。それは吉本興業と芸人の問題であり、テレビが朝から晩まで放送するような問題ではない。

ただ、最近の吉本の芸人は、お笑いの仕事より、一種のコメンテーターやMCなどの仕事に多く出ており、彼ら自身が【芸を売って、お金を頂く】という芸人の本質を忘れていることが、今回のように問題を大きくしていることも忘れてはならない。

経済学者植草一秀氏のブログによれば、吉本興業の内実は以下の通り。

***
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2019/07/post-48eff1.html
2019年7月26日 植草一秀の『知られざる真実』

・・吉本興業問題はこの企業に巨額の国民資金が投入されている事実があり、安倍首相が癒着とも言える深い関わりを有している企業であるだけに、主権者としての視点から軽視できない。

吉本興業は2009年9月にクオンタム・エンターテインメント社によるTOBによって買収され、上場が廃止された。

買付代金は506億円。

資金源はクオンタムファンドへの出資金240億円のほか、三井住友銀行などからの融資資金300億円などである。

「創業家の排除を狙った 吉本興業の非上場化(上)」
https://www.data-max.co.jp/2009/09/post_6997.html

非上場化された吉本興業の筆頭株主に躍り出たのはフジ・メディア・ホールディングスで持ち株比率は12.13%である。

このほか、
日本テレビ放送網
TBSテレビ
テレビ朝日ホールディングス
テレビ東京
朝日放送
MBSメディアホールディングス
関西テレビ放送
讀賣テレビ放送
テレビ大阪
電通
博報堂
博報堂DYメディアパートナーズ
BM総研(ソフトバンク子会社)
ヤフー(ソフトバンク子会社)
ドワンゴ
などが株主となっている。・・・・・・

・・・第三の反社会的勢力との関わりについて、吉本興業は、宮迫氏が参加した誕生パーティーの主賓である詐欺グループ首謀者が経営する企業がスポンサーのイベントにタレントを派遣していた事実が判明している。

2014年5月31日に開催されたイベントで、問題のフロント企業「CARISERA」がスポンサーになっている。
https://bit.ly/2Yk78JV

誕生パーティーの主賓であるフロント企業社長をフジサンケイグループメディアであるSankei Biz Expressが記事にして掲載していた事実も判明している。

「「日本と世界の懸け橋に」
CARISERA代表取締役社長、小林宏行氏(27)に聞く」
https://bit.ly/32R1fr8

上場廃止された吉本興業には上場企業のような監視の目が届かなくなる。

大崎洋会長、岡本昭彦社長、藤原寛副社長はすべて松本人志氏と極めて近い関係にあり、この少数が吉本興業を独裁的に実効支配し、フジサンケイグループとともに吉本興業を実質的に支配している構図が浮かび上がる。・・・・・
***

この構図を見れば、松本人志が「バイキング」で問題発言を繰り返しても、番組を下ろされるような事態に至らない理由が良く分かる。

本来、報道機関の役割からすれば、このような吉本興業とメディア(テレビ局)との関係性、吉本興業と安倍政権との関係(安倍首相は新喜劇に出たり、ダウンタウンの松本と食事をしたり、首相官邸を新喜劇連中が訪問している)⇒吉本に国税が100億近くつぎ込まれている)や、ジャニーズとテレビ局の関係(SMAPの三人のTV出演をさせないように圧力をかけた)を報道するのが重要。

これらの問題は、吉本興業という一企業の内部問題にとどまらない国民や社会に関係がある【普遍性】を持っている。

現在のテレビの政治報道のキャスターなどに多くの吉本興業とジャニーズのタレントが起用されている。この関係性を詳細に報道すると、安倍官邸とメディアの関係性のタブーに切り込めるはずである。

どうせ報道するなら、ここまで踏み込んで報道すれば、それなりの社会的意義もあるのだが、「お家騒動」に矮小化するのでは、報道機関の名が廃る。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
流水

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« れいわ新選組(山本太郎現象... | トップ | 「国民民主党・玉木発言」の異様 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

選挙」カテゴリの最新記事