老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

れいわ新選組(山本太郎現象)の躍進をどう読むか

2019-07-26 11:31:14 | 政治
選挙結果:
当選 2名 
比例得票数 228万764票 
投票率 4.55%(20人に1人が投票)⇒政党要件獲得
無党派層の投票率 自民党20% 立憲民主党 19% れいわ新選組 10%

新党立ち上げから3ケ月。テレビ報道なしの政党が、よくぞこれだけの得票を取れたと言わざるを得ない。

無いものねだりで言えば、もし選挙前にテレビ報道がきちんとなされていれば、おそらく「れいわ新選組」の当選者は、最低でも5人はいけたと思う。

ネットやSNSなどのツールを利用できない高齢者は、「れいわ新選組」の名前も知らないであろうし、ましてやその主張などは全く知らない。

山本太郎の最大の魅力は演説。今回の「れいわ新選組」の得票の大部分は、彼の演説に魅せられた人々の得票。

彼の言葉は、「理」だけではなく、「情」に訴えかける。ただの「情」ではない。人々の心の奥底に蠢いている【情念】に訴えかけている。

>「あなたは生きてる価値があるのか?何かの役にたったんですか?
>会社の役に、世の中の役に、何かの役に立ってなくちゃ、生きてちゃいけない。
>そんな空気、蔓延してるじゃないですか。
>そんなのおかしいでしょ。
>消えてしまいたい、死にたい、そう思ってしまう世の中のほうが間違ってんですよ」
>生きててくれよ

羽鳥の「モーニングショウ」での彼の発言にもその片鱗はうかがえる。

・・「いまの世の中って空気的に生産性で人間をはかられるような部分ってないですか。役に立っているのかとか、あなたが何できるんだとか。その苦しさのなかで、やっぱり、生きていたくなくなるというか、消えたくなるような人たち、たくさんいると思うんです。(中略)そのなかで、生産性で人をはからせない」・・

「生きている事自体が素晴らしい」という彼の信念が直截に人々に語り掛けられている。

既成のリベラル派連中の言葉では、「生きる権利」と言う事になるのだろうが、それを「生産性では人をはからせない」とズバッと語り掛ける。「あなたが悪いんじゃない。世の中の方が間違っている。あなたは胸を張って生きたらいいんだ。生きててくれよ」と語り掛ける。

これは通常の政治家の言葉じゃない。語り掛けられた人々の心の奥底に眠っている熱い思いを掻き立てる。「演歌」ではなく「艶歌」であり、限りなく「怨歌」に近い。

立憲民主党の枝野幸男は『けやき坂46』のファンだそうだが、「けやき坂」 からせめて「艶歌」に踏み込まないと、この列島で悔しい思いを抱えて生きている人々の情念を掬い取れない。「山本太郎の闘い」で指摘した枝野幸男の【戦い】と山本太郎の【闘い】の違いである。

山本の言葉は、宗教家の言葉に近いが、そうではない。彼の言葉は、きちんとした数字に裏付けられている。彼は真面目な勉強家である。

「山本太郎の闘い」でも指摘したが、彼は、社会を「上下」の関係で切り取り、その視点で彼の政策を組みたてている。だから、これから、イデオロギーを超えて、彼の支持層は広がる可能性を秘めている。

自民党の支持層である地方の現状は、疲弊する一方。中央が「上」地方が「下」の厳然たる格差が存在する。山本太郎現象が拡大するにつれ、地方の自民党支持層(地方の行政機構、農協や青年会議所など)の若手連中が反乱を起こす可能性が高い。

当然ながら、正規の労働組合から見放された流民化した非正規労働者の若者たちのアイデンティティ回復の闘いも参加する可能性が高い。

これは、日本の政治家で言えば、田中角栄の系譜に属すると思う。非エリートの経歴をプラスに変え、人心の機微を読み取り、政策に生かす、という「王道」の政治を歩み始めている。

政治学のカテゴリーで分類すると、山本太郎は「左派ポピュリズム」にあたる、と政治学者中島岳志は語る。

・・「ポピュリズムというのは一般的には悪い意味で使われますが、政治学では良い、悪いという価値判断を伴わない分析概念として使います。これは大衆化された民主主義の時代に、政治行政の中心をエリートたちだけが独占しているということに対する反権威主義的な異議申し立て運動なんですね。反エリート、反権威主義に基づく大衆政治運動というのが、基本的なポピュリズムです。」・・・中略・・・

「近年、ポピュリズムになってきたのは、世界的には右派でした。外国人移民の排除などを訴える反権威主義が、欧州やトランプ米大統領の支持層に現れた右派ポピュリズム現象です。これに対し、米国の(民主党の大統領候補の一人である)バーニー・サンダース上院議員など、リベラル側のポピュリズムもここ数年、出てきました。 日本のポピュリズムは維新の橋下徹さんとか自民党の一部とか、右派がずっと担ってきましたが、これにリベラル側が参入したということだと思います。」・・・

中島岳志・東工大教授に聞く 「毎日新聞」
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20190724/k00/00m/010/242000c

中島教授の分析によれば、山本太郎は日本における「左派ポピュリズム」の嚆矢と言う事になる。

山本太郎は、次の衆院選では100名以上の候補者を擁立し、明確に総理大臣を狙うと公言している。その為には、野党共闘を積極的に推進するとも語っている。

実は、大言壮語とも受け取れるこの発言がきわめて重要で、「政権を狙う」「総理大臣になる」という目標を共有できた時、野党共闘の本気度、熱量、国民の参加意識は飛躍的にアップする。

国民の参加意識のアップなくして、政権奪取などできるはずがない。小沢一郎が二度にわたり政権を奪取した時には(特に民主党政権)、国民の参加意識が半端なものではなかった。

スポーツの世界で言う「勢い」をどう生み出すかが選挙の帰趨を決める。この「勢い」を生み出せない野党共闘が中途半端に終わったのは無理もない。

わたしは以前から【権力を取る】事を公言しない政治家や政党の存在意義を問うてきた。それは選挙における【勢い】をどう生み出すかに選挙の帰趨がかかっているからである。山本太郎にはそれができる。これは大きな希望である。

さて問題は、今後野党共闘がどうなるかである。わたしは、意外と楽観視している。共産党と国民民主党、社民党とは、間違いなく共闘できる。

問題は、立憲民主党だが、現在の「れいわ新選組」の存在感、勢いを無視して、立憲民主党が野党共闘のイニシアチブを取れるとは思えない。もし、微細な政策の違いに拘泥して、野党共闘に水を差すような行為をしたら、他党は、立憲民主党を無視して、野党共闘を進めるだろう。

理由は明確。現在の山本太郎「れいわ新選組」は、次の衆院選の台風の目になる事は確実。彼の演説が大手メディアで流されれば、「れいわ新選組」への支持が飛躍的に拡大するのは確実。下手をすれば、立憲民主党はその勢いに呑み込まれる可能性が高い。

(※現在の立憲民主党の選挙は、連合、それもかっての総評系の支持層に依存する割合が高い。党勢拡大には、無党派の支持層拡大が欠かせない。そこを「れいわ新選組」に食われたら、立憲民主党の退潮は明確になる可能性が高い。)

それが分かっていて、些細な違いに拘泥して、野党共闘を渋れば、次の選挙では立憲民主党の退潮は明らかだろう。

それほど、枝野幸男も福山も馬鹿ではないと思う。まして、【れいわ新選組】の勢いを利用すれば、枝野幸男の政権奪取も夢ではない。小選挙区というのはそういう選挙制度。オセロゲームのように、「白と黒」とが一瞬にして入れ替わる。

「左派ポピュリズム」結構。時代の閉塞感を打ち破るには、政治が、この列島で悔しい思いをして生きている人々の「情念」や「怨念」を掬い取り、解放する以外にない。

まず、政権奪取。それ以外の政治目標はない。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
流水

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