1,はじめに
袴田巌さんが58年もかかって、ようやく無罪を獲得した意義は実は大きい。日本の司法の闇である冤罪大国という実体にメスを入れた再審無罪判決だったからだ。
法曹を志して、途中で断念した私は、冤罪事件の救援活動に奔走していた過去がある。遠藤誠弁護士(帝銀事件の最期の弁護人)との出会いも今では懐かしい。先生は大分前に他界されたからだ。
本稿の第1部では、静岡地裁の無罪判決の問題点である「捜査官の証拠の捏造」の問題と、「9時間に及ぶ自白の強制の違法性」に言及する。後は、次回に第2部で、日本の司法の法令である刑事法と憲法からの逸脱した捜査実務などに言及する。
2,憲法(第38条)に違反する司法官憲と裁判所
まず、順序は逆になるが、静岡地裁が判決で認定した、捜査官の「証拠の捏造」と言う、異例の違法捜査の問題から検証していく。
この物的証拠とされる衣類5点は1年半後に味噌樽から出てきたという信じられないような代物であった。袴田さんの衣類の実験でもズボンだけはとうてい履けるものではなかったという。
この問題の証拠は当初から問題視されていたのである。(以前の裁判;しかも死刑判決;では、裁判官の判断は節穴と言う他はない。)
ではなぜ、捜査官は法を犯してまで(職権乱用罪に該当する)衣類5点を捏造したのだろうか。
その答えは、憲法38条の3項にある。その規定には、こうある。
「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、または刑罰を科されない。」
この規定は刑訴法にもあり、被告人の無罪推定を保障する人権規定であり、袴田事件では、袴田さんの自白以外には確たる状況証拠もないし、また物的証拠も確たるものがなく、自白しか存在していないという事件なのであった。
そこで、無罪となるわけにはいかないと思った捜査官は一計を案じて、1年半後に味噌樽に衣類5点を仕込んだのである。
それを静岡地裁の裁判官は、「証拠の捏造」があったとして、袴田死刑囚の無罪の決め手の一つにしたのである。
3,袴田さんの「取り調べ」は違憲、違法な自白の強制であった。
袴田巌さんは、元プロボクサーであり、やっていない犯罪の自白供述をするようなやわな人間ではない。それなのに、なぜ、自白をしたのだろうか。これもミステリー;謎と言ってよい。
だが、警察の取り調べは過酷を極め、連日8時間から10時間に及ぶ異例のものであった。
こうした「拷問に近い」長時間の取り調べは、憲法38条1項、2項に具体的に規定されている違法なものなのである。
一部引用すると、「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」「、、、不当に長く抑留もしくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることはできない。」と規定されている。
袴田さんはギネスブックにも掲載されているほどに、不当に「長期間」拘束されていたのである。この規定を軽んじた司法官憲と裁判官の死刑判決は違憲なものと断じざるを得ない。
4,第1部の「終わりに」
次回の投稿では、袴田事件という、かくも長き冤罪事件がなぜ、日本で起こったのか、刑事法の「問題点」と捜査実務自体の違法性を検証する。特に、本件は国賠法の提起が可能なレベルであり、国賠訴訟で、司法の闇を明らかにする軌道修正は日本の司法の問題に風穴を開けることになるだろう。
「護憲+コラム」より
名無しの探偵
袴田巌さんが58年もかかって、ようやく無罪を獲得した意義は実は大きい。日本の司法の闇である冤罪大国という実体にメスを入れた再審無罪判決だったからだ。
法曹を志して、途中で断念した私は、冤罪事件の救援活動に奔走していた過去がある。遠藤誠弁護士(帝銀事件の最期の弁護人)との出会いも今では懐かしい。先生は大分前に他界されたからだ。
本稿の第1部では、静岡地裁の無罪判決の問題点である「捜査官の証拠の捏造」の問題と、「9時間に及ぶ自白の強制の違法性」に言及する。後は、次回に第2部で、日本の司法の法令である刑事法と憲法からの逸脱した捜査実務などに言及する。
2,憲法(第38条)に違反する司法官憲と裁判所
まず、順序は逆になるが、静岡地裁が判決で認定した、捜査官の「証拠の捏造」と言う、異例の違法捜査の問題から検証していく。
この物的証拠とされる衣類5点は1年半後に味噌樽から出てきたという信じられないような代物であった。袴田さんの衣類の実験でもズボンだけはとうてい履けるものではなかったという。
この問題の証拠は当初から問題視されていたのである。(以前の裁判;しかも死刑判決;では、裁判官の判断は節穴と言う他はない。)
ではなぜ、捜査官は法を犯してまで(職権乱用罪に該当する)衣類5点を捏造したのだろうか。
その答えは、憲法38条の3項にある。その規定には、こうある。
「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、または刑罰を科されない。」
この規定は刑訴法にもあり、被告人の無罪推定を保障する人権規定であり、袴田事件では、袴田さんの自白以外には確たる状況証拠もないし、また物的証拠も確たるものがなく、自白しか存在していないという事件なのであった。
そこで、無罪となるわけにはいかないと思った捜査官は一計を案じて、1年半後に味噌樽に衣類5点を仕込んだのである。
それを静岡地裁の裁判官は、「証拠の捏造」があったとして、袴田死刑囚の無罪の決め手の一つにしたのである。
3,袴田さんの「取り調べ」は違憲、違法な自白の強制であった。
袴田巌さんは、元プロボクサーであり、やっていない犯罪の自白供述をするようなやわな人間ではない。それなのに、なぜ、自白をしたのだろうか。これもミステリー;謎と言ってよい。
だが、警察の取り調べは過酷を極め、連日8時間から10時間に及ぶ異例のものであった。
こうした「拷問に近い」長時間の取り調べは、憲法38条1項、2項に具体的に規定されている違法なものなのである。
一部引用すると、「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」「、、、不当に長く抑留もしくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることはできない。」と規定されている。
袴田さんはギネスブックにも掲載されているほどに、不当に「長期間」拘束されていたのである。この規定を軽んじた司法官憲と裁判官の死刑判決は違憲なものと断じざるを得ない。
4,第1部の「終わりに」
次回の投稿では、袴田事件という、かくも長き冤罪事件がなぜ、日本で起こったのか、刑事法の「問題点」と捜査実務自体の違法性を検証する。特に、本件は国賠法の提起が可能なレベルであり、国賠訴訟で、司法の闇を明らかにする軌道修正は日本の司法の問題に風穴を開けることになるだろう。
「護憲+コラム」より
名無しの探偵