働き方改革関連法ノート

厚生労働省の労働政策審議会(労政審)労働条件分科会や労働基準関係法制研究会などの議論に関する雑記帳

毎月勤労統計調査・不適切調査問題に関する厚生労働省文書

2019年01月12日 | 労働相談ノート
厚生労働省は2019年1月11日、報道関係者あての毎月勤労統計調査・不適切調査問題に関する文書(「毎月勤労統計調査において全数調査するとしていたところを一部抽出調査で行っていたことについて」「雇用保険、労災保険等の追加給付について」)をホームページに公開しました。

毎月勤労統計調査において全数調査するとしていたところを一部抽出調査で行っていたことについて
標記につきましては、調査を行ったところ、以下のような事実を確認しました。 国民の皆様にはご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。

また、毎月勤労統計調査に係る関係職員への聴取等を引き続き行うなど、事実関係 を確認するため引き続き調査を行ってまいります。調査結果がまとまり次第しかるべく公表します。

1 毎月勤労統計調査の概要
厚生労働省で実施している「毎月勤労統計調査」(統計法に基づく基幹統計調査) は、雇用、給与及び労働時間について、全国調査にあってはその全国の変動を毎月明らかにすることを、地方調査にあってはその都道府県別の変動を毎月明らかにすることを目的とした調査です。

全国的な変動を毎月明らかにする全国調査、都道府県別の変動を毎月明らかにする地方調査のほか、1~4人を雇用する事業所について毎年7月における状況を把握する特別調査があります。

調査内容としては、常用労働者を5人以上雇用する事業所の雇用、給与及び労働時間を調査し、調査の翌々月10日までに速報版を公表しています。また調査が完結した時に確報版を公表しています。それぞれ調査対象事業所を厚生労働省が抽出し、都道府県への通知により指定しています。

2 確認された事実
(1)全数調査するとしていたところを一部抽出調査で行っていたことについて
「500人以上規模の事業所」については、調査計画及び公表資料で全数調査することとしていたところ、平成16年以降、厚生労働省から東京都に対し、厚生労働省が抽出した事業所名簿を送付し、当該名簿に基づき抽出調査を行うこととしていました。

具体的には、東京都における「500人以上規模の事業所」の平成 30 年の調査対象として抽出した事業所数は、全数調査であれば1,464事業所でしたが、実際に平成30年10月分の調査対象事業所数は概ね3分の1の491事業所でした。

なお、平成30年6月に、神奈川県、愛知県、大阪府に対し、「500人以上規模の事業所」について、平成 31 年から抽出調査を行う予定である旨の連絡をしていましたが、既に撤回しました。

(2)統計的処理として復元すべきところを復元しなかったことについて
「500人以上規模の事業所」については、他の道府県では全数調査ですが、東京都のみ抽出調査が行われたため、東京都と他の道府県が異なる抽出率となっていました。

一方、毎月勤労統計調査の平成29年までの集計は、同一産業・同一規模では全国均一の抽出率という前提で行われており、前述の異なる抽出率の復元が行われない集計となっていました。このため東京都分の復元が行われていませんでした。

なお、東京都における「499人以下規模の事業所」等についても平成21年から平成29年までについて、一部に、異なる抽出率の復元が行われない集計となっていました。これらの結果、平成 16 年から平成 29 年までの調査分の「きまって支給する給与」等の金額が、低めになっているという影響がありました。

*抽出率とは、母集団に占める調査対象事業所の割合。

*復元とは、抽出調査を行った際に行うべき統計的処理で、母集団の調査結果として扱うための計算。なお、平成30年1月以降の調査分の集計については、復元されています。

(3)調査対象事業所数について
調査対象事業所数が公表資料よりも概ね1割程度少なくなっていました。確認できた範囲では、平成8年以降このような取扱いとなっていました。

なお、誤差率は回収数を元に計算しているので、公表していた誤差率に影響はありません。

3 公表に至る経緯
毎月勤労統計調査において、更なる統計精度向上の取組の一環として、総務省から平成 30 年 12 月に全数調査の「500 人以上規模の事業所」において平成 29 年と 平成 30 年に数値の不連続がある旨の指摘があり、原因を精査したところ、東京都 における「500 人以上規模の事業所」を抽出調査としていたこと、また、抽出調査 としていたにもかかわらず、平成 29 年において必要な復元がされていないことによるものであることがわかりました。

同月13日の統計委員会委員長、総務省及び厚生労働省の打ち合わせの場において、東京都における「500 人以上規模の事業所」 を抽出調査していることを説明したところ、統計委員会委員長から全数調査ではな いのは大きな問題ではないかという主旨の指摘があり、更に調査を行ったところ上 記2の取扱いを行っていたことを確認したので公表に至ったものです。

*東京都における「500 人以上規模の事業所」を全数調査するとしているところを抽出調査としていたこと、また抽出調査をしていたにもかかわらず必要な復元を平成 30 年1月以降の調査分しか行っていなかったことは、一部の職員は総務省から指摘を受ける前に認識していましたが、これらを組織全体で共有してはいませんでした。

4 今後の対応について
(1)公表値において行うべき復元を行っていなかった平成16年から平成29年までの期間のうち、復元に必要なデータ等が存在する平成 24 年以降について復元して「再集計値」として公表します(平成24年から平成30年10月までの、「きまって支給する給与」の「再集計値」の金額については、別添1<略>のとおりです。)。

「きまって支給する給与」の「再集計値」は、本来の全数調査という方法に基づくものではありませんが、実際の調査において採用した抽出率に基づいて復元しているので、統計処理的にはより有効な母集団推計によるものです。

「きまって支給する給与」の「再集計値」の公表値とのかい離は金額ベースでは平均で 0.6%でした。

時系列比較の観点から、これまでの公表値についても、今後も引き続き提供してまいります。 なお、以上の取扱いについては総務大臣から報告を求められており、1月17日の統計委員会に報告する予定です。

(2)今後、毎月勤労統計調査の実施については、正確性・継続性に配慮しつつ、「500人以上規模の事業所」の全数調査に向け、できる限り早急に適正な取扱い となるようにいたします。また、引き続き過去の詳細な経緯を調査し、適切な再 発防止策を検討し、講じます。

(3)今般の事案に伴い、平成16年以降に雇用保険、労災保険、船員保険の給付を受給した方の一部及び雇用調整助成金など事業主向け助成金を受けた事業主の一部に対し、追加給付が必要となったことを踏まえ、「きまって支給する給与」 に関して、毎月勤労統計調査を基礎として加工し、「給付のための推計値」を作成しましたので、別添2<略>のとおり併せて公表します(「給付のための推計値」は 「きまって支給する給与」に限ったものであり、雇用及び労働時間は推計していません。)。

「給付のための推計値」の計算方法は、以下の通りです。

統計的処理の方法(復元の有無)の差により生じていると考えられるかい離幅を、かい離が生じた平成16年の公表値に機械的に加えるという考え方に基づき、遡り試算が可能な平成 24年から平成29年までの「再集計値」と公表値 のかい離幅の平均(0.6%)を平成16年の公表値に加え、それ以降の平成 17年から平成 25年3月までの期間は公表値の伸び率に合わせて推計しました。

雇用保険、労災保険等の追加給付について
本日公表を行った毎月勤労統計調査において全数調査するとしていたところを一部抽出調査で行っていたことにより、平成16年以降の同調査における賃金額が低めに出ていたことから、同調査の平均給与額の変動を基礎としてスライド率等を算定している雇用保険制度等における給付額に影響が生じております。

このため、平成16年以降に雇用保険、労災保険、船員保険の給付を受給した方の一部及び雇用調整助成金など事業主向け助成金を受けた事業主の一部に対し、追加給付が必要となりました(現在受給中の方も該当する場合があります。)。

厚生労働省としては、国民の皆様に不利益が生じることのないよう平成16年以降追加給付が必要となる時期に遡って追加給付を実施し、また、本日、専用の問い合わせ電話番号を開設するなど、国民の皆様からのご照会・ご相談にきめ細かく対応してまいります。

1 追加給付の対象となる可能性がある方
(1)雇用保険関係
「基本手当」、「再就職手当」、「高年齢雇用継続給付」、「育児休業給付」などの雇用保険給付を平成16年8月以降に受給された方

雇用保険と同様又は類似の計算により給付額を決めている「政府職員失業者退職手当」(国家公務員退職手当法)、「就職促進手当」(労働施策総合推進法)

(2)労災保険関係
「傷病(補償)年金」、「障害(補償)年金」、「遺族(補償)年金」、「休業(補償)給付」などの労災保険給付や特別支給金等を平成16年7月以降に受給された方

(3)船員保険関係
船員保険制度の「障害年金」、「遺族年金」などの船員保険給付を平成16年8月以降に受給された方

(4)事業主向け助成金
「雇用調整助成金」の支給決定の対象となった休業等期間の初日が平成16年8月から平成23年7月の間であったか、平成26年8月以降であった事業主等

2 追加給付の概要
(1)追加給付の計算
・追加給付の計算は、本日公表を行った「再集計値」及び「給付のための推計値」を用いて行います。

(2)追加給付の一人当たり平均額、対象人数、給付費の現時点の見通し
・一人当たり平均額等の現時点の見通しは次のとおりです。

・雇用保険
一つの受給期間を通じて一人当たり平均約1,400円、延べ約1,900万人、給付費約280億円

・労災保険
年金給付(特別支給金を含む):一人当たり平均約9万円、延べ約27万人、給付費約240億円

休業補償(休業特別支給金を含む):一人一ヶ月当たり平均約300円、延べ約45万人、給付費約1.5億円

・船員保険
一人当たり平均約15万円、約1万人、給付費約16億円

・事業主向け助成金
雇用調整助成金等:対象件数延べ30万件、給付費約30億円

・以上については、お支払いに必要となる事務費を含め、引き続き精査します。
<以下略>


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