働き方改革関連法ノート

厚生労働省の労働政策審議会(労政審)労働条件分科会や労働基準関係法制研究会などの議論に関する雑記帳

テレワーク 労働時間管理と就業規則規定例

2020年07月09日 | テレワーク
テレワークにおける労働時間管理
厚生労働省が作成した「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」(テレワーク労務管理ガイドライン)には、「テレワークを行う上での問題や課題等として、企業側からは『労働時間の管理が難しい』等が、労働者側からは『仕事と仕事以外の切り分けが難しい』、『長時間労働になりやすい』等の点がそれぞれ挙げられています」と書かれている。

また、労働時間の管理や長時間労働の問題については、「働き方改革実行計画」においても「テレワークが長時間労働につながるおそれがある」ことが指摘されている。なお、テレワークは次のように分類することができる。

1 在宅勤務
労働者の自宅で業務を行う 通勤を要しないことから、事業場での勤務の場合に通勤に要 する時間を有効に活用できます。また、例えば育児休業明けの労働者が短時間勤務等と組み合わせて勤務することが可能となること、保育所の近くで働くことが可能となること等から、仕事と家庭生活との両立に資する働き方です。

2 サテライトオフィス勤務
労働者の属するメインの オフィス以外に設けられたオフィスを利用する自宅の近くや通勤途中の場所等に設けられたサテライトオフィスでの勤務は、通勤時間を短縮しつつ、在宅勤務やモバイル勤務 以上に作業環境の整った場所で就労可能な働き方です。

3 モバイル勤務
ノートパソコンや携帯電話等を活用して臨機応変に選択した場所で業務を行う労働者が自由に働く場所を選択できる、外勤における移動時間を利用できる等、働く場所を柔軟に運用することで、業務の効率化を図ることが可能な働き方です。

テレワーク労働条件の明示
厚生労働省が作成したテレワーク労務管理ガイドラインには「使用者は、労働契約を締結する際、労働者に対し、賃金や労働時間のほかに、就業の場所に関する事項等を明示しなければなりません」とあり、「労働者に対し就労の開始時にテレワークを行わせることとする場合には、就業の場所としてテレワークを行う場所を明示しなければなりません」と記載されている。

また「テレワークの実施とあわせて、始業及び終業の時刻の変更等を行うことを可能とする場合は、就業規則に記載するとともに、その旨を明示しなければなりません」ともガイドラインに書かれている。

労働時間の適正な把握
「通常の労働時間制度に基づきテレワークを行う場合についても、使用者は、その労働者の労働時間について適正に把握する責務を有し、みなし労働時間制が適用される労働者や労働基準法第41条に規定する労働者を除き、『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』に基づき、適切に労働時間管理を行わなければなりません。  同ガイドラインにおいては、労働時間を記録する原則的な方法として、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録によること等が挙げられています。また、やむを得ず自己申告制によって労働時間の把握を行う場合においても、同ガイドラインを踏まえた措置を講ずる必要があります。」

休憩時間について
「労働基準法第34条第2項では、原則として休憩時間を労働者に一斉に付与することを規定していますが、 テレワークを行う労働者について、労使協定により、 一斉付与の原則を適用除外とすることが可能です。なお、一斉付与の原則の適用を受けるのは、労働基準法第34条に定める休憩時間についてであり、労使の合意により、これ以外の休憩時間を任意に設定することも可能です。

また、テレワークを行う労働者について、本来休憩時間とされていた時間に使用者が出社を求める等具体的な業務のために就業場所間の移動を命じた場合、当該移動は労働時間と考えられるため、別途休憩時間を確保する必要があることに留意する必要があります。」

長時間労働対策について
「テレワークについては、業務の効率化に伴い、時間外労働の削減につながるというメリットが期待される一方で、労働者が使用者と離れた場所で勤務をするため相対的に使用者の管理の程度が弱くなるおそれがあること等から、長時間労働を招くおそれがあることも指摘されています。

テレワークにおける労働時間管理の必要性については、使用者は、単に労働時間を管理するだけでなく、長時間労働による健康障害防止を図ることが求められています。」

メール送付の抑制
「テレワークにおいて長時間労働が生じる要因として、時間外、休日又は深夜に業務に 係る指示や報告がメール送付されることが挙げられます。そのため、役職者等から時間外、休日又は深夜におけるメールを送付することの自粛を 命ずること等が有効です。」

システムへのアクセス制限
「テレワークを行う際に、企業等の社内システムに外部のパソコン等からアクセスする 形態をとる場合が多いですが、深夜・休日はアクセスできないよう設定することで長時 間労働を防ぐことが有効です。」

業務の効率化やワークライフバランスの実現の観点からテレワークの制度を導入する場合、その趣旨を踏まえ、時間外・休日・深夜労働を原則禁止とすることも有効です。
この場合、テレワークを行う労働者に、テレワークの趣旨を十分理解させるとともに、テレワークを行う労働者に対する時間外・休日・深夜労働の原則 禁止や使用者等による許可制とすること等を、就業規則等に明記しておくことや、時間外・休日労働に関する三六協定の締結の仕方を工夫することが有効です。

テレワークにより長時間労働が生じるおそれのある労働者や、休日・深夜労働が生じた労働者に対して、注意喚起を行うことが有効です。
具体的には、管理者が労働時間の記録を踏まえて行う方法や、労務管理のシステムを活用して対象者に自動で警告を表示するような方法があります。

就業規則テレワーク規定例
「就業規則
(時間外及び休日労働等)
第〇〇条 業務の都合により、第〇〇条の所定労働時間を超え、又は、第〇条の所定休日に労働させることがある。
2 前項の場合、法定労働時間を超える労働又は法定休日における労働については、あらかじめ会社は従業員の過半数代表者と書面による労使協定を締結するとともに、これを所轄労働基準監督署長に届け出るものとする。
3 妊娠中の女性、産後1年を経過しない女性従業員(以下「妊産婦」という。)であって請求した者及び18歳未満の者については、 第2項 による時間外、休日及び 深夜(午後10時から午前5時まで)は労働に従事させない。
4 災害その他避けることのできない事由によって臨時の必要がある場合には、第1項から前項までの制限を超えて、所定労働時間外又は休日に労働させることがある。ただし、この場合で あっても、請求のあった妊産婦については、所定労働時間外労働又は休日労働に従事させない。
5 テレワーク勤務者の時間外、休日及び深夜における労働に ついては、別に定めるテレワーク勤務規程による。」(テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドラインより)



テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン(PDFファイル)


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