働き方改革関連法ノート

厚生労働省の労働政策審議会(労政審)労働条件分科会や労働基準関係法制研究会などの議論に関する雑記帳

リスキリングとリカレントの違いが不鮮明な岸田首相

2022年10月11日 | ブログ管理者ノート
リスキリングとは(リスキリングの定義)
『リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―』(2021年2月26日、リクルートワークス研究所・石原直子人事研究センター長/主幹研究員)において、リスキングとは「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義され、「近年では、特にデジタル化と同時に生まれる新しい職業や、仕事の進め方が大幅に変わるであろう職業につくためのスキル習得を指すことが増えている」と記載されている。

また、リスキリングは「『リカレント教育』ではない」「リカレント教育は『働く→学ぶ→働く』のサイクルを回し続けるありようのこと。新しいことを学ぶために「職を離れる」ことが前提になっている」と、さらに「リスキリングは単なる『学び直し』ではない」「昨今の『学び』への注目のなかには、個人が関心に基づいて『さまざまな』ことを学ぶこと全体をよしとする言説が多いが、リスキリングは「これからも職業で価値創出し続けるために』『必要なスキル』を学ぶ、という点が強調される」と、そして「リスキリングに類似の言葉に、アップスキリング、アウトスキリングという言葉もある」と、石原直子氏は述べている。

リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―(PDF)


新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画
2022年6月7日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」にはリスキリングやリカレント教育といった言葉はなく「職業訓練、学びなおし、生涯教育等への投資が重要である」と記載されていた。つまり、(2)スキルアップを通じた労働移動の円滑化には「ストック面での人への投資については、職業訓練、学びなおし、生涯教育等への投資が重要である」と書かれていた。

「リスキング」と言い出した岸田首相

岸田文雄総理はのニューヨーク証券取引所で2022年9月22日にスピーチをし「本の経済界とも協力し、メンバーシップに基づく年功的な職能給の仕組みを、個々の企業の実情に応じて、ジョブ型の職務給中心の日本に合ったシステムに見直す」「これにより労働移動を円滑化し、高い賃金を払えば、高いスキルの人材が集まり、その結果、労働生産性が上がり、更に高い賃金を払うことができるというサイクルを生み出していく」「そのために、労働移動を促しながら、就業者のデジタル分野などでのリスキリング支援を大幅に強化する」と語った。

10月3日の岸田総理の所信表明演説全文は朝日新聞デジタル(『岸田文雄首相の所信表明演説(全文)』、2022年10月3日配信)に掲載されている。

朝日新聞の記事によると、岸田首相は所信表明演説で「リスキリング、すなわち、成長分野に移動するための学び直しへの支援策の整備や、年功制の職能給から、日本に合った職務給への移行など、企業間、産業間での労働移動円滑化に向けた指針を、来年6月までに取りまとめます。特に、個人のリスキリングに対する公的支援については、人への投資策を、『5年間で1兆円』のパッケージに拡充します」。

また、岸田総理は新しい資本主義実現会議(第10回、2022年10月4日開催、議長:岸田首相)で「リスキリング、すなわち成長分野に移動するための学び直しやセーフティネットの整備、年功賃金から日本に合った職務給への移行等を含め、この会議で議論を加速いたします」(首相官邸サイトの記事抜粋)と述べている。

この(第10回)新しい資本主義実現会議では『「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の実施についての総合経済対策の重点事項』が議論され、岸田首相は「リスキリング、すなわち成長分野に移動するための学び直し」と発言していたが、後日、『新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の実施についての総合経済対策の重点事項』(最終版)が内閣官房サイトで公表されたが、最終版には「リスキリング(リスキリング中の生活保障、セーフティネットを含む)や賃金の在り方(年功賃金から個々の企業の実情に応じた日本に合った職務給への移行等)を含め、官民で来年6月までに『労働移動円滑化のための指針』を策定する」と記載されてあった。

「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の実施についての総合経済対策の重点事項(最終版)(PDF)

まとめ(リスキリングは経産省の取り組み)
閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」には「職業訓練、学びなおし、生涯教育」と記載されたが、岸田首相は「リスキリング、すなわち、成長分野に移動するための学び直し」と発言。そして『「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の実施についての総合経済対策の重点事項』(最終版)には「学び直し」とはなく、ただ「リスキリング(リスキリング中の生活保障、セーフティネットを含む)」と。

なお、厚生労働省はリカレント教育を推奨してきたが、経済産業省はリスキリングに取り組んできた。要するに岸田文雄総理は経済産業省が取り組むリスキリングに莫大な予算をつける方針だということ。(勝ち負けではないと思うけど)厚労省が負けて経産省が勝った?


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