働き方改革関連法ノート

厚生労働省の労働政策審議会(労政審)労働条件分科会や労働基準関係法制研究会などの議論に関する雑記帳

ハラスメント全般禁止包括法を労働者委員が提言

2018年09月26日 | パワハラ防止
労働政策審議会(雇用環境・均等分科会)が昨日(2018年9月25日)厚生労働省会議室で開催されましたが、傍聴しました。

議題
(1)労働時間等設定改善指針の一部を改正する告示案要綱について(諮問)
(2)パワーハラスメント防止対策等について

パワーハラスメント防止対策等の議論において、連合など労働者側委員は6月のILO総会を受けてハラスメント全般を禁止する法をつくることを主張しました。

これに対して使用者側委員はハラスメント全般に対応する法を「労働法制の中でつくれるのか」、また法よりも、「まずガイドライン(指針)をつくること」と反論し、労使委員の意見が著しく相違することになった労働政策審議会となりました。

ハラスメント全般禁止包括法を労働者側委員が提言
「ILO総会は(2018年6月)8日、職場でのセクハラを含むハラスメントをなくすため、拘束力を持つ条約を制定すべきだとした委員会報告を採択。報告はあらゆる形態の暴力とハラスメント禁止を明記。国際社会は職場でのセクハラ全面禁止に踏み出した。」(毎日新聞インターネット記事より)

ILO総会「あらゆる形態の暴力とハラスメント禁止を明記した報告」採択に基づいて、昨日の労働政策審議会(雇用環境・均等分科会)において、連合などから選出された労働者側委員は、セクシュアルハラスメント(セクハラ)やパワーハラスメント(パワハラ)などハラスメント全般を禁止する包括的な法をつくるよう提言しました。

ハラスメント全般禁止包括法との労働者側意見に対し、使用者側委員は労働法制の中でつくれるのかと疑問を投げかけ、法規制ではなくガイドライン(指針)をまずつくるように反論しました。

ですが、男女雇用機会均等法はセクハラ防止措置を事業者に義務づけるだけで、セクハラやパワハラなどのハラスメント行為を禁止する法は、この国には存在しません。

ハラスメント行為を禁止する法が存在しないのにセクシュアルハラスメント(セクハラ)やパワーハラスメント(パワハラ)などのハラスメント行為をなくすことができるはずがありません。

しかし、今回の労働政策審議会(雇用環境・均等分科会)での労働者側委員の提言は正直、唐突といった印象は否めません。3月末公表の職場パワーハラスメント防止対策検討会報告書から逸脱していますので、使用者側委員が受け入れるとは思えません。

と言っても、使用者側委員が主張するように法令ではなくガイドライン(指針)をまずつくるという提案を連合など労働者側委員が受け入れるはずもありません。

まずガイドライン(指針)をと使用者側委員が反論
指針には法令に根拠がある指針と法令に根拠がない指針がありますが、例えばセクシュアルハラスメント(セクハラ)指針は均等法の規定に基づく指針であって、法令に根拠のある指針になります。

今回の労働政策審議会(雇用環境・均等分科会)での使用者側委員の提案(まずガイドライン=指針)は、法令に根拠のない指針ということになり、セクシュアルハラスメント(セクハラ)指針よりも「弱い」指針となってしまいます。これでパワーハラスメント(パワハラ)防止対策になるとは到底思えません。

今後、労働政策審議会(雇用環境・均等分科会)の公益委員(労働法など専門家)がどのような意見を述べるのか、また事務局(厚生労働省)がどう対応するか、注視しなければなりません。

*国際労働機関(ILO)総会は(2018年6月)8日、職場でのセクハラを含むハラスメントをなくすため、拘束力を持つ条約を制定すべきだとした委員会報告を採択した。報告はあらゆる形態の暴力とハラスメント禁止を明記。世界各地で性被害を告発する「#MeToo」(「私も」の意)運動が広がる中、国際社会は職場でのセクハラ全面禁止に踏み出す。(毎日新聞インターネット記事より抜粋)

*2018年)6月2日、スイス・ジュネーブで開催中のILO総会で、職場での暴力とハラスメント禁止に向けた国際労働基準について委員会での方針が決定されました。国際労働基準の枠組みと、条約か勧告か等の形態を議論する委員会では、連合も含めた労働者側委員の奮闘もあり、勧告に補完された条約を制定する形式となりました。(連合ニュースインターネット記事より抜粋)


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