新「廊下のむし探検」

大阪北部のマンションの廊下で見つけた虫の名前を調べています

廊下のむし探検 水生昆虫

2019-04-02 16:38:04 | 廊下のむし探検
廊下のむし探検 第3弾


朝の続きで、3月27日にマンションの廊下で見た水生昆虫です。水生昆虫と言っても幼虫時代を水中で過ごすという意味で、ここでは、カワゲラ、トビケラ、カゲロウなどを指しています。他にも、トンボやハエの仲間などいっぱいいますけどね。これまで、カワゲラやトビケラの名前を調べるのは大変でしたが、最近、「原色川虫図鑑成虫編」(以下、川虫図鑑と略します)を手に入れてからは俄然やる気が出てきました。



今日の最初はこのカワゲラです。私のマンションでは、毎年、3月中旬から4月初旬にかけて見ていて、何だろう何だろうと思っていました。でも、カワゲラは調べる手段がなかったので、まったく手つかずでした。今年は頑張って調べてみました(こちらこちらを見てください)。最終的には中胸腹板にあるY字線を見ないといけないのですが、今のところ、アミメカワゲラ科のヒメカワゲラ属(アミメカワゲラモドキ属)が有力で、コウノアミメカワゲラ属とアミメカワゲラ族所属不明の可能性も残しておくというところまででした。川虫図鑑によると、日本産ヒメカワゲラ属 Stavsolusには4種記録されているのですが、そのうち2種は正体不明だそうで、また、「日本産水生昆虫第二版」によると、2016年にOhgane and Uchidaによるヒメカワゲラ属の論文が出たのですが、多数のミスがあって修正が必要とのことで、まだ混とんとしているようです。という訳で、まだ、種までは達していません。





この2匹はヒゲナガカワトビケラです。実は、これにもチャバネヒゲナガカワトビケラという似た種がいます。川虫図鑑によると、後翅が薄茶色であるので「チャバネ」という和名がついたようですが、翅色では区別が難しく、距式という脚の脛節の距という刺の数で確かめないといけないようです。トビケラの距は脛節の中央付近にある前距と末端にある末端距がありますが、これを合わせて数えます。そして、前脚―中脚―後脚という風に書き、例えば、ヒゲナガカワトビケラでは3-4-4、チャバネヒゲナガカワトビケラ♂では0-4-4、♀では2-4-4というようになります。つまり、この2種は前脚の距の数に違いがあります。残念ながら、採集していないので、写真からだとよく分かりません。今度捕まえて見てみます。



これはオナシカワゲラの仲間です。このように翅に黒い模様があるのは、オナシカワゲラ科フタオナシカワゲラ亜科フサオナシカワゲラ属 Amphinemuraのモンオナシカワゲラ種群に属する種です。「オナシ」というのは普通カワゲラがもっている長い尾を持っていなくて、1節だけの短い尾しか持っていないという意味です。「フサ」は幼虫時代の房状の鰓の痕跡を持っている意味で、昔撮ったので写真はうまく撮れていないのですが、ここに示したような鰓の痕跡があります。日本産モンオナシカワゲラ種群には4種が記録されていますが、本州にはモン、サトモン、ヤマモンの3種がいて、♂の肛上板の形状で区別するので、この写真ではよく分かりません。



最後はこのカワゲラです。これもオナシカワゲラの仲間です。日本産オナシカワゲラ科には4属60種以上が記録されているので、採集しないとまったく名前が分かりません。採集しても、交尾器の形状を見ないといけないので、私にはまだまだ難しい対象です。このカワゲラは採集して観察してみました。



これは実体顕微鏡で腹部末端を腹側から撮ったものです。



先端部分をもう少し拡大してみました。濡れているように写っているのは、冷凍庫に入れておいて解凍したからだと思います。まだ、系統的に調べることはできないのですが、前生殖板とその先の2か所の弱く節片化した構造などを見ると、オナシカワゲラ属 Nemouraのケフサオナシカワゲラ redimiculum♀とよく似ていることが分かりました。川虫図鑑によると、分布、発生時期も合っているので、これかなと思っているのですが、はっきりしたことは分かりません。

雑談)朝、ブログ上では画像を小さめに表示して、クリックすると元の大きめの画像が表示されるようにリンクをいちいち入れるのが大変だという話をしたのですが、それを自動的にやってくれるEXCELのVBAのマクロを作ってみました。といっても、TEXTエディターにまず画像をまとめて入れてしまい、それをEXCELにコピーしてVBAのマクロを実行し、再び、TEXTエディターに持ってくるというもので、手間といっては手間なのですが、多少とも楽になりました。

廊下のむし探検 甲虫

2019-04-02 08:20:01 | 廊下のむし探検
廊下のむし探検 第2弾


昨日の続きで、3月27日にマンションの廊下で見た虫たちです。今日は甲虫を紹介します。甲虫はともかく種類が多く(「日本列島の甲虫全種目録(2019年)」(以後、目録と略します)によると13031種)、図鑑や全体を俯瞰する論文の出てない科も多いので、私にとっては虫の名前調べの難関中の難関です。それでも、少しずつは進んでいこうと思ってやっています。



今日の最初はこの甲虫からです。後脚腿節が太いのでノミゾムシの仲間です。こんな風に小盾板(後で示します)後方に白い毛の束があるのはムネスジノミゾムシなどが含まれるRhynchaenus属(現在ではOrchestes属)の仲間です。「原色日本甲虫図鑑IV」(以後、図鑑と略します)からそれらしい種を探すと数種が見つかります。このうち、本州産だけに限ると、ムネスジのほかに、キンケ、マダラ、ガロアあたりが似ています。図鑑に載っている、このあたりの検索表を抜き書きすると次のようになります。



いくつか見るポイントがあるのですが、上の写真のゾウムシを例にとって見てみると次のようになります。



小盾板直後の毛、中央前後の横帯、第5間室(?)の白紋、それに暗色紋です。これらに注目しながら、この検索表を追いかけていくと、①→②b→③b→⑤aとなり、ガロアノミゾウムシに到達します。採集しなかったので、本当かどうかよく分かりませんが、たぶん、そうかなと思っています。ただ、先ほどの目録ではこの種はOrchestes (Orchestes)に入っていて、全部で21種が記録されています(括弧内は亜属)。それに対して、図鑑では13種なので、そもそも検索表がどの程度有効かどうかよく分かりません。



こんなのもいました。中央後の横帯は見えるので、先ほどの検索表ではガロアかマダラかということになるのですが、模様がはっきりしません。それで、初めマダラかなと思ったのですが、斑紋自身は先ほどのガロアとよく似ているので、やはりガロアノミゾウムシだろうと思っています。



こんなのもいました。こちらは中央後の横帯がないので、たぶん、ムネスジノミゾウムシではないかと思っています。



次はこの甲虫です。ハネカクシの仲間ですね。先ほどの目録によると、日本産ハネカクシ科には404属2410種が記録されています。亜種まで含めると実に2451種+亜種だそうです。とてもその辺の図鑑で探すわけにいきません。それで、今まではハネカクシの仲間とだけ書いていたのですが、今年は手の付けられなかった虫も少し調べてみる方針なので、亜科の検索だけでもと思って調べ始めました。詳細はまた今度示しますが、このハネカクシはAleocharinae亜科ではないかと思っています。





これはハムシ科のヒゲナガハムシ亜科に属しています。図鑑で見ると、アカタデハムシあたりが似ているのですが、一応、検索で確かめてみました。検索表は次の本に載っています。

木元新作、滝沢春雄、「日本産ハムシ類幼虫・成虫分類図説」、東海大学出版会 (1994).

写真の個体はPyrrhalta属に含まれるのですが、Pyrrhaltaについてはこれまでニレハムシで検索をしたことがあります。そのとき、「上翅は側縁に沿って細い隆起条を基部より末端へ装う」という項目があります。ニレハムシにはなくて、アカタデハムシには隆起条があるので、是非とも見てみたいと思っていました。今回は採集したので、昨夜調べてみたら、やっとその隆起条が見つかりました。たぶん、アカタデハムシで間違いないのではと思っています。顕微鏡写真も撮ったので、今度、お見せします。





次はこの虫です。この日は2匹いました。たぶん、ヒゲナガホソクチゾウムシだと思います。追記2019/04/02:Meganeuraさんから、「ホソクチゾウムシは、違う2種に見えますが。アザミかな?」というコメントをいただきました。確かに後者は上翅につやがありますね。気が付きませんでした。検索表ではアザミは眼の後方で強くくびれるというのが特徴のようです。拡大して見ると、確かにそのように見えます。仰る通り、後者はアザミかもしれません。ご指摘、どうも有難うございました。前者はヒゲナガホソクチゾウムシ、後者はアザミホソクチゾウムシとしておきます





次はこれ。これも2匹いました。共にアカホソアリモドキという小さな甲虫です。



これは外来種でマルトゲムシ科のMicrochaetes属ということしか分かりません。マンションではよく見かけます。



最後はお馴染みのナナホシテントウでした。本当は水生昆虫も書こうと思ったのですが、長くなったので、ここで一旦打ち切ります。

マンションの廊下を20分ほど歩いただけなのですが、結構、いろいろと見つかるでしょう。マンションの壁は白なので、小さな虫でもよく目立ちます。それに対して、外を歩くと背景が緑や茶色なので、なかなか虫は見つかりませんよね。

雑談1)Yahoo!ブログから移ってきて2回目の投稿になります。gooブログの感想をちょっと。ともかく、投稿に時間がかかっています。一つにはTEXTエディターというのを使っているのですが、太字にしても、リンクを張ろうとしても、センタリングをしようとしても、HTMLタグが間に入ってくるので、後で見直すときに読みにくくて仕方ありません。一応、プレビューが別ウィンドウで開くのですが、訂正するのにいちいちエディターに戻らないといけないので、Yahoo!ブログに比べるとかなり厄介です。もう一つは図に関してです。図の元画像を少し大きめに、表示画像を少し小さめにして、図をクリックすると大きく見えるようにしたのですが(これはYahoo!と同じです)、図ごとにHTMLタグにサイズを入れたり、リンクを張ったりで結構大変な作業になっています。慣れれば大丈夫かもと思っているのですが、根気との勝負みたいです。でも、いっぱい見ていただき、コメントまでいただいたので、頑張らなくっちゃ。

雑談2)今年度、マンションの理事長になってしまったので、あまり、虫に力を入れられないかもしれません。築うん十年のマンションなので、いろいろ問題が多くって。それでも、虫の名前調べを止めてしまったら、何のために今までやってきたのか分からなくなるので、意地でも続けようとは思っていますが・・・。