4月4日にマンションの廊下を歩いた時、小さなハチを見つけたので写してみました。
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こんなハチです。家に戻ってから過去の写真と比較してみると、翅に大きな縁紋があり、触角柄節が長いという特徴から、オオモンクロバチ科だろうということになりました。いつもはここで止まるのですが、今回はもう少し先に進もうと思って検索を試みました。九大の「昆虫学データベース」によると、オオモンクロバチ科には2属9種記録されています。Dendrocerus属とTrichosteresis属です。このうち、後者は分布が合わないので、たぶん、前者のDendrocerus属だろうと見当をつけて文献を探してみました。
H. Takada, "Studies on Aphid Hyperparasites of Japan, 1 - Aphid Hyperparasites of the Genus Dendrocerus Ratzeburg occurring in Japan (Hymenoptera: Ceraphronidae)-", Insecta matsumurana. New seires 2, 1 (1973). (ここからダウンロードできます)
そして、こんな論文を見つけました。この論文はハチに寄生するアブラバチなどの幼虫に寄生するDendrocerus属のハチを扱ったものです。こんな寄生は寄生者に寄生するというので二次寄生と呼ばれています。この論文の中に種の検索表が載っていたので、それを使って種を決めてみようと思いました。ただし、採集していないので上に載せた写真くらいしかないのですが、参考になるかもと思って過去に撮った写真も載せておきます。
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上が2017年4月3日に撮ったもの、下が2018年1月15日に撮ったものです。
この論文の検索表では6種を扱っているのですが、検索表を追いかけていくとこのうちのramicornis♀になりました。
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その検索過程を書いたものがこの表です。赤字は調べるところができなかったところですが、幸い、各項目に1つは調べることのできた部分が入っていたので、それでよしとしました。ちょっとあやふやですね。この黒字の部分を写真で確かめていきたいと思います。
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まずは♂♀についてですが、♂は触角鞭節の最初の5節に長い枝が出ています。これには出ていないので♀だと思われます。それで、♀の項目だけ見ていきます。まず、②の腹部の色はOKです。④の脚の色は検索表では黄色となっていたのですが、候補となっているramicornis♀の説明を見ると、黄色から黄褐色となっていました。黄褐色に暗色の部分も含まれるのですが、一応、OKとしました。
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次は胸部盾板についてです。ここには3本の縦筋が見えますが、その両側の筋がノタウリスです。論文にはノタウリス(notaulices)と載っていたのですが、一般的にはノタウルス(notaulus)と呼ばれています(ただし、"Dictionary of Insect Morphology"(2012)を見ると、正式には単数形がnotaulix、複数形がnotaulicesとあるので、論文で書かれた方が正しいのかもしれません)。これについては以前にも調べたことがあります。要は、体に沿った間接飛翔筋の縦走筋と背腹筋と呼ばれる背側と腹側を結ぶ間接飛翔筋を分ける甲の境目(分隔甲)を表しているようです。とりあえず、明瞭にその溝は見えていて、さらに、後縁でも交わることがありません。これで、①と③はOKとしました。
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次は翅の縁紋です。とにかく大きな縁紋があります。しかも形は半円形です。寸法は測っていないのですが、②に書いてあるくらいでしょう。ということでここもOKです。
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最後は触角です。触角第1節を柄節、第2節を梗節、第3節以降を鞭節と呼びますが、この写真から梗節は鞭節第1節よりははるかに短いので、これもOKです。
ということで、Takada氏の論文に載っている検索表によれば、この種はramicornis♀ということになります。論文によれば、Dendrocerus ramicornisは森林性で、アブラムシに寄生するコマユバチ科アブラバチ亜科のDiaeretus属とPauesia属に二次寄生するのが観察されたとこのことです。ただ、昨日も書いたのですが、この検索表は二次寄生する種のみを扱ったもので、また、1973年と時期も古いため、現在の種をすべては網羅していないと思われます。本州産に限っても、aphidumとkoyamaeの2種がまだ検討されていません。koyamaeについては調べてみたのですが、♂について記載されていて、♀の情報がありませんでした。もう少し検討が必要だと思われます。少なくとも、今度は採集して赤字で書かれた検索表の部分を埋めなくは・・・。
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こんなハチです。家に戻ってから過去の写真と比較してみると、翅に大きな縁紋があり、触角柄節が長いという特徴から、オオモンクロバチ科だろうということになりました。いつもはここで止まるのですが、今回はもう少し先に進もうと思って検索を試みました。九大の「昆虫学データベース」によると、オオモンクロバチ科には2属9種記録されています。Dendrocerus属とTrichosteresis属です。このうち、後者は分布が合わないので、たぶん、前者のDendrocerus属だろうと見当をつけて文献を探してみました。
H. Takada, "Studies on Aphid Hyperparasites of Japan, 1 - Aphid Hyperparasites of the Genus Dendrocerus Ratzeburg occurring in Japan (Hymenoptera: Ceraphronidae)-", Insecta matsumurana. New seires 2, 1 (1973). (ここからダウンロードできます)
そして、こんな論文を見つけました。この論文はハチに寄生するアブラバチなどの幼虫に寄生するDendrocerus属のハチを扱ったものです。こんな寄生は寄生者に寄生するというので二次寄生と呼ばれています。この論文の中に種の検索表が載っていたので、それを使って種を決めてみようと思いました。ただし、採集していないので上に載せた写真くらいしかないのですが、参考になるかもと思って過去に撮った写真も載せておきます。
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上が2017年4月3日に撮ったもの、下が2018年1月15日に撮ったものです。
この論文の検索表では6種を扱っているのですが、検索表を追いかけていくとこのうちのramicornis♀になりました。
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その検索過程を書いたものがこの表です。赤字は調べるところができなかったところですが、幸い、各項目に1つは調べることのできた部分が入っていたので、それでよしとしました。ちょっとあやふやですね。この黒字の部分を写真で確かめていきたいと思います。
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まずは♂♀についてですが、♂は触角鞭節の最初の5節に長い枝が出ています。これには出ていないので♀だと思われます。それで、♀の項目だけ見ていきます。まず、②の腹部の色はOKです。④の脚の色は検索表では黄色となっていたのですが、候補となっているramicornis♀の説明を見ると、黄色から黄褐色となっていました。黄褐色に暗色の部分も含まれるのですが、一応、OKとしました。
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次は胸部盾板についてです。ここには3本の縦筋が見えますが、その両側の筋がノタウリスです。論文にはノタウリス(notaulices)と載っていたのですが、一般的にはノタウルス(notaulus)と呼ばれています(ただし、"Dictionary of Insect Morphology"(2012)を見ると、正式には単数形がnotaulix、複数形がnotaulicesとあるので、論文で書かれた方が正しいのかもしれません)。これについては以前にも調べたことがあります。要は、体に沿った間接飛翔筋の縦走筋と背腹筋と呼ばれる背側と腹側を結ぶ間接飛翔筋を分ける甲の境目(分隔甲)を表しているようです。とりあえず、明瞭にその溝は見えていて、さらに、後縁でも交わることがありません。これで、①と③はOKとしました。
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次は翅の縁紋です。とにかく大きな縁紋があります。しかも形は半円形です。寸法は測っていないのですが、②に書いてあるくらいでしょう。ということでここもOKです。
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最後は触角です。触角第1節を柄節、第2節を梗節、第3節以降を鞭節と呼びますが、この写真から梗節は鞭節第1節よりははるかに短いので、これもOKです。
ということで、Takada氏の論文に載っている検索表によれば、この種はramicornis♀ということになります。論文によれば、Dendrocerus ramicornisは森林性で、アブラムシに寄生するコマユバチ科アブラバチ亜科のDiaeretus属とPauesia属に二次寄生するのが観察されたとこのことです。ただ、昨日も書いたのですが、この検索表は二次寄生する種のみを扱ったもので、また、1973年と時期も古いため、現在の種をすべては網羅していないと思われます。本州産に限っても、aphidumとkoyamaeの2種がまだ検討されていません。koyamaeについては調べてみたのですが、♂について記載されていて、♀の情報がありませんでした。もう少し検討が必要だと思われます。少なくとも、今度は採集して赤字で書かれた検索表の部分を埋めなくは・・・。
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