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第603回 タケシのトンデモTV企画集

2024-11-22 | エッセイ
 お笑いの世界で、一番親しみ、楽しんだタレントといえば、同世代でもあり、ビートたけしさん(以下、「タケシさん」)です。
 次々と飛び出す連発ギャグに仕込まれた風刺と毒に笑い転げました。少し古い本ですが、「コマネチ! ビートたけし全記録」(北野武編 新潮文庫)は、タイトル通り、タケシさん自身による思い出話、楽屋話などのほか、対談、お仲間からの寄稿、人気番組の誌上再録など盛りだくさんの内容で構成されています。こちらは、表紙です。

 今回は、本書の中から、タケシさんによる「だからTVは狂ってる」に拠り、ご自身や、お仲間が若い頃に関わったTV業界のトンデモ企画、失敗企画をご紹介することにしました。項目名と<   >内のコメントは、私が付けたものです。どうぞ最後までお楽しみください。

★ファミレスで落雷騒動★
 地方の大きなファミレスのお客さんを驚かそうという企画です。タケシさんは、雷様の格好で店の裏でクレーンに吊されます。照明と音でガラガラピカピカとやって、放水車から水を撒き、突然の雷雨を演出します。何事かと客が出てきたところへ、雷の紛争で太鼓を叩きながら、クレーンに吊るされたタケシさんが降りてきて、みんなを驚かそうという趣向です。道路使用許可を取ってなかったので警察が来る騒ぎになりました。スタッフは逃げてしまって、タケシさんは宙吊りのまま、こってり油を絞られたそう。最後は、プロデューサーが謝って、地上に降ろされました。<文字通り、人騒がせな企画でした>
★土佐犬と勝負?★
 身体じゅうに肉の塊を巻きつけたタレントのアゴ勇さんを、土佐犬がたくさんいる檻の中に垂らすという企画が実行されました。犬がジャンプしても届かないあたりまで、そぉーっと降ろして様子を見ることになっていました。ところが、降り始めた瞬間に紐が切れ、どーんと群れの真ん中へ。「アゴが犬を全部にらみつけてワワワワンって言ったら、土佐犬がみんな逃げちゃって助かった」(同書から)
 すぐに係員が犬を取り押さえて事なきを得ましたが、アゴさんは「怖かったよ~」とあとで泣き出したのをタケシさんは目撃しています。<とっさのワンワン芸で身を守れたのが何よりでした>
★死にそうになった手品★
 人が入った箱に、四方八方から剣を刺して、本人は平気、という手品があります。タケシさんが箱に入り、剣が刺さるごとに「痛い、痛い、ホントに刺さってるよ。話が違う」と叫んで笑いを取る趣向でした。でも、剣を入れる穴を間違えたヤツがいて、刺さってしまいました。「痛い、痛い、本当に刺さってる」と言っても、「またまた~」などと皆んな笑っています。幸い脇腹をかすっただけで済みました。<ひどい連中だ、と思い出して、怒ってるのが、笑えました>

★観光バスで○Xクイズ
 日本一の大型クレーン2台で、40人乗りくらいのバスを熱海の海岸から海の上に吊します。クイズが出て、不正解だとバスは下げられます。そのうち、下げ過ぎて、バスが丸ごと水の中に浸かってしまいました。待機していた20人の潜水夫が救助に当たりましたが、一人だけ上がってきません。なんとバスの天井に張り付いていて、そこの空気で助かりました。「あれは怖かったな」「よく無事終わったと思うよ」とタケシさん。<皆さん、よくぞご無事で>
★スポンサーにご用心★
 漫才などの舞台を生中継するときには、楽屋に、スポンサーの一覧が貼り出されます。薬品メーカーだと風邪ひきネタはダメ、酒造メーカーだと酔っ払いネタ、自動車メーカーだと事故ネタもダメ、というわけです。そこを際どく縫って笑いを取るのも芸ですが・・・
 キリンビールがスポンサーの時、タケシさんは、「「キリン 一番搾り」って、今まで二番絞りを飲まされていたの?」とか「「あなたはビール工場のビールを飲んだことがありますか?」って、今までは何の工場のビールを飲んでいたんだ?」との、ちょっとアブないツッコミで笑いを取りましたが、スポンサーから特に文句はなかったそう。<オトナのスポンサーでよかったですね>
★本音ニュース★
 例えば、ニュースで「○○さんが落とした虎の子の50万円を届けた正直運転手、感謝され金一封を贈られる」というのがよくあります。それをパロディにして、本職のアナウンサーが読み上げます。
「ばかやろうが酔っ払って落としたボーナスを、何をとち狂ったか、偽善者ぶりやがって警察に届けた奴がいて、2割取ろうと思ったところ、2万円しかもらえず、歯ぎしりして悔しがり、猫ばばすりゃよかったと思ったそうです」(同前)との原稿です。露木アナが読みながら吹き出してしまい、せっかくの企画は、1~2回でボツになりました。<今どきの政治ネタを「本音ニュース」で是非やってもらいたいものです>
 
 いかがでしたか?テレビがこんなに過激で、元気な時代があったですね。すっかりテレビ離れしている私は、懐かしく感じました。それでは次回をお楽しみに。