2015年の春先にエンジンを降ろして整備した愛車BE型レガシィB4。
何故エンジンを降ろさねばならなかったのか。
その理由はダイレクトイグニッションのコイルを留めてあるボルトの頭がなめられていてレンチが掛からなかったからだ。
点火プラグを交換するには一旦エンジンを降ろしてボルトを外す必要があった。
ではそもそも何故ボルトの頭はなめられていたのか。
とあるカーショップの車検時の点検でなめられたと思っている。
点火プラグの交換は自身で行なっているが、前回の交換時になめた記憶はない。
その後に車検を通している。
車検後にそろそろ交換時期だと思い自身でプラグ交換をしようとした際に、ボルトの頭がなめられているのに気付いた。
この時のことはここに書いてある
http://blog.goo.ne.jp/sakeichi-mashita-takahara/c/c6b09ddb98b33b15c3fa11e4e7f6ae28
今回の話は、足掛け二年に及ぶ「セカンダリー・タービンの過給不良」のトラブルシュートにまつわる話なのだが、とんでもない番狂わせなオチがあり、そのオチを仕込んでくれたのはエンジンを降ろして整備したスバルディーラーだったという内容である。
最初に異変に気付いたのは2014年の9月下旬だった。
その年の僕の釣果はとても良かった。
7月以降はほぼ毎週末の釣行で複数の尺上のアマゴかヤマメを獲っていた。
勿論その日も同様で、僕は気分よく益田川からの帰路でBEを走らせていた。
広域農道を駆っていたとき、脇から農作業を終えた軽トラックが前方に侵入してきた。
右のウインカーを点滅させて追い越しに掛かったときに感じた。
「あれ?なんかパワーが乗らないな」。
その後も直線で何度かエンジンを回して、セカンダリー・タービンまで回してみたが、やはりパワーが乗らない。
日頃は極力定速走行を心がけ、必要なときにだけスロットルを開けるという乗り方をしていると、滅多にセカンダリー・タービンが仕事をする機会はない。
それではクルマによくないと思い、その時だけは燃費を気にせずに「今だ」というチャンスがあればセカンダリー・タービンまで回すということをしていたのだが、パワー感の無さに気付いたのはそのときが初めてだった。
何が原因だろうか。
過去に点火プラグが劣化していたときに過給圧が上がりにくくなったことはある。
どのような作用機構でそうなったかは未だに分からないが、点火プラグを交換したら改善した。
しかし、このときの状況は異なる。
ブーストは設定した1.2kまで上がっている。
でも、以前ならセカンダリー・タービンが回ると離陸しそうなほどの加速感があったではないか。
それが無いのだ。
とは言えそろそろ点火プラグの交換時期でもあった。
禁漁期間に入って11月になり、僕は休日に点火プラグを交換しようとした。
その時に前述の「ダイレクトイグニッションのコイルを留めてあるボルトの頭がなめられている」ことに気付くのだが。
結果的に4本中3本の点火プラグは交換を終えた。
NGKのIRYWAY7番をいつも使用している。
でも、加速感は戻らなかった。
次にバッテリーを疑ってみた。
交換後7年を超えていた。
問題なく始動できるのが意外なほど長持ちしていたが、さすがに初期の性能はないだろう。
高回転時に電力が必要になった際に、バッテリーから充分な電力を供給できていないのではないかと考えた。
そこでパナソニックのCaos(100D23L)に交換してみた。
しかし、何も改善されなかった。
同じ電気系統ということでオルタネーターも疑ってみた。
BE/BH型レガシィの日立製オルタネーターは突然死することがユーザーの間では有名な話だった。
山の方へ行く僕は、自走不能にならぬよう交換しておいてもよいだろうと思った。
ところがディーラーからこんな話を聞かされた。
確かにBE/BH型レガシィの日立製オルタネーターはよく壊れます。
しかし、その型でも最後期のものは既に次期型であるBL/BP型のオルタネーターを搭載しています。
ある程度纏まった台数を発注しないとコストが掛かり過ぎるからです。
今のところBL/BP型のオルタネーターがよく壊れるという話はありません。
ですので、突然死を懸念しての交換は不要だと思います。
僕のBEは平成15年(2003年)4月に新車で購入した。
その翌月にBL/BP型にモデルチェンジしている。
最後期も最後期だ。
突然死のリスクは非常に少ないはず。
ということならハイアンペア・オルタネーターに換えてみようかとも思ったが、なにしろ高価だったので断念した。
そしてそのまま冬が訪れた。
釣りに行かない時期は休日でもあまりBEに乗ることはなく、そのまま2015年のシーズンが始まった。
相変わらずセカンダリー・タービンが回ってもパワー感はなかった。
それどころか燃料カットが入ったように「ガクン」と衝撃を受けることが多くなってきた。
しかし、俗に言う「ブースト0.5病」ではなかった。
プライマリー・タービンのみで過給しているときは過給圧1.1kまで上昇した。
その後セカンダリー・タービンも過給し始め、ツインターボ状態になると、息継ぎのような症状、時には燃料カットのような症状が現れるようになった。
過給圧は関係ないようだった。
0.3kのこともあれば0.5kのこともあるし、0.8kまで上昇してから症状が出ることもあった。
僕は念のためタービンの動作を制御しているアクチュエーターに繋がるゴムホースを清掃した。
しかし、ブローバイは殆ど溜まっていなかった。
以前インタークーラーを外して清掃した際にも、殆どブローバイは溜まっていなかったので、エンジンそのものの調子が悪いということではなさそうだと考えた。
では一体何だろう?
浅はかな知識しかない僕にはとても難しい問題だった。
そして同時期に他にも解決せねばならない問題が複数あった。
交換できていない点火プラグをどうにかしなければならない。
プライマリー・タービン付近のオイル漏れを直さねばならない。
水平対向エンジンの宿命、エンジンヘッド付近のオイル漏れも直さねばならない。
因みにこのエンジンヘッド付近のオイル漏れだが、14万km走行辺りから目立ち始めた。
それまでのオイル管理がよかったのか、一般的なEJ20型エンジンに比べると長くもった方だと思う。
僕は一旦セカンダリー・タービンの過給のことは置いておこうと思った。
もしかしたらタービン自体の不良かもしれない。
そうなると交換にも結構な費用が必要になる。
先ずは点火プラグとオイル漏れに対処しよう。
エンジンを降ろして点火プラグを交換し、そのついでにタペットシールも交換しよう。
タービンのオイル漏れも直して、他にもエンジンを降さないとできない整備もやっておこう。
これが2015年の4月のことだった。
プラグも交換した、タービンからのオイルの漏れも直った。
しかし、プライマリー・タービンからのオイル漏れは直ったものの、まだアンダーカバーにオイルが垂れている。
しかも結構な量だった。
一瞬ドライブシャフト・ダストブーツが破れたのかと思ったが特に傷みはない。
一体何処から漏っているのだと思いながらも、渓流釣りのシーズンはクルマのことは殆どほったらかしなのでそのまま日々は過ぎていった。
2015年7月後半に排気音の異変に気付いた。
デコトラでよくある「パタパタパタ・・・」というあの排気音。
それと似たような音を僕のBEも発し始めた。
確か8万km走行の頃だったと思う。
同様の音を発し始めたことがある。
その時は右バンク(運転席側。セカンダリー・タービンが搭載されている側)のエキマニとタービンサポート間のフランジガスケットが吹き飛んで排気が漏れていた。
今回も音が発せられている箇所は以前と同じだった。
だから最初はまたガスケットをかまさなきゃなと思った。
しかし、その後ふと気付いた。
「あっ、これはエキマニに亀裂が入ったんだ。社外品に換えてから10万km近く走ったからな。よくもってくれたほうだな」。
同じエキマニはもうアフターパーツメーカーでは生産終了となっている。
中古を入手したところでいつまた亀裂が入るか分からない。
亀裂を溶接で直したとしてもまた別の箇所に亀裂が入るだろう。
ということで程度のよい純正エキマニを入手してディーラーに交換作業を依頼した。
作業そのものの手順等は分かったが、どうせボルトが焼き付いて外れないだろうから素人は手を出さない方が無難と判断した。
取り外した社外エキマニを見て仰天した。
亀裂どころか破孔していた。
破孔した部分の耐熱布は破れていた。
相当な勢いで排気が流れてくるのだろう。
その時に思った。
恐らく、最初は亀裂程度だったのだ。
その時からセカンダリー・タービンの過給に変化が出始めたのだ。
排気が漏れるということでパワー感が無かったのだろう。
いや、でも息継ぎのような症状の原因となるのか?
疑問を感じながらも、これで以前と近いパワー感になるだろうと淡い期待を抱いていた。
社外エキマニから純正エキマニに交換したのだから、低速トルク、タービンの立ち上がりなど、フィーリングが変わる部分はたくさんあるだろうと覚悟していた。
しかし淡い期待ははかなく潰え、かなり残念な結果に終わった。
排気漏れこそ改善したものの、純正エキマニだとこんなにも薄いトルクなのか、こんなにもタービンレスポンスが悪くなるのかと落胆した。
しかも、息継ぎも改善されていない。
僕はここで初めて燃料ポンプを交換することを決めた。
これもそろそろ壊れても不思議ではないほどの距離を走っていたし、壊れたら自走不能になる。
もしかしたら空気ばかり吸って燃料が足りていないのかもしれない。
しかし、結果は何も変わらなかった。
それどころかどんどん酷くなってきた。
セカンダリー・タービン付近は油汚れでべとべと。
高速道路や山道を走った跡は、耐熱布に跳ねた油が加熱され、その匂いが車内にまで届く。
これはもう放っておけないと思い、ディーラーに点検を依頼した。
ブローバイですね。
一瞬ミッションオイルかと思いましたが匂いが全然違います。
エンジンがヘタってくるとブローバイは増えます。
ここまで増えてくると、もうエンジン載せ換えかオーバーホールしかありません。
そんなことは百も承知だ。
このBEが本当にエンジンがヘタって今の症状が出ているのではないとあなたは気付かないのか。
燃費は全く落ちてない。
カタログ燃費なんて余裕で越えて12km台後半に届く。
異音もしない。
だからこそこの大量のブローバイの原因を突き止めて欲しくて入庫させたのだ。
お決まりの回答など求めてはいないのだ。
ディーラーの話ををそのまま鵜呑みにするわけにはいかない。
アクチュエーター付近が特に汚れているのだし、ならばアクチュエーターかタービンそのものの不良かも知れないじゃないかと思い、セカンド・オピニオンを求めて、岐阜県大垣市のプレジャー・レーシング・サービスへ持ち込んだ。
点検作業開始後15分くらい経って、一人のメカニックの方が僕の方に近付いてきた。
手にはセカンダリー・タービン側のインタークーラーに繋がるパイプを持っている。
「これですね。これのタービン側のボルトが締まっていなくてガバガバでしたよ。単にはまっているだけでした。
多分このおかげでエンジンオイルも吸っていたんじゃないかなあ。
それがエンジンルームに飛び散っていたんだと思いますよ。
このパイプを元通りに戻してしっかり締めて、エンジンルームやインタークーラーを清掃しますね」。
もうこれで大丈夫だろう。
オイル漏れもなくなるし、セカンダリー・タービンを回した時にも過給圧もしっかり上がって、息継ぎもせず、パワー感も復活するだろう。
それにしてもスバルディーラーのお粗末さは一体どうしたものか。
プライマリー・タービン側のオイル漏れを直す修理をした際に、セカンダリー・タービン側のパイプのボルトを締め忘れてまた新たなオイル漏れの原因を作るのか。
いい商売やってるよなあ。
そういえば、自分でもそのパイプのボルトの増し締めをしようとしたんだった。
でも、ボルトの頭があさっての方向を向いていてアクセスできなかったんだ。
あれはそもそも締めてなかったから頭が地面を向いていたんだろうな。
プレジャー・レーシング・サービスからの帰路、機会があったので思いっきりエンジンを回してみた。
嘗ての鋭さはないものの、一気にエンジンは吹け上がり、しっかりと過給圧1.2kまで上昇した。
そして、パワー感も着いてくる。
さすがに車齢の若い頃の目の覚めるような加速はしないけれども、走行17万kmならこれで充分じゃないかな。
僕はまだまだBEを降りるわけにはいかない。