社説でも「また、二枚舌か」といわざるを得ないくらい安倍、自民党政権のTPP交渉参加、交渉姿勢には選挙公約違反、矛盾と彼らの欺瞞的な交渉態度があきらかになっています。
何が問題なのでしょうか。選挙で政権公約を掲げ、その選挙公約が守られ、実行されると思って投票がされた。しかし、安倍、自民党政権はその選挙後数ヶ月で選挙公約などあったの?との政治姿勢で次々と公約の反故、国民が理解も、納得もしていない法案を準備し、国会の場で強行採決をしようとしています。このことは09年以降の民主党政権、特に野田政権が公約違反、反故を繰り返し、激しい政治批判にさらされ選挙で不信任となったことを見てもあきらかです。このことは民主党議席の激減、支持離れにとどまらず、国民の政治不信、政党不信を極限まで高めるという最悪の政治状況を引き起こしたことです。その民主党への批判を受けて誕生した安倍、自民党政権が民主党を上回る公約無視、反故を繰り返していることは一層の政治不信、政党不信を増幅させています。
TPPの関税撤廃はすべての製品、商品などを対象としていることは事前にあきらかでした。その交渉に参加したい経団連、大手企業、多国籍企業は自らに有利で、自らに関係ない分野の関税撤廃などは関心外であり、うそで乗り切ればよいと考えていました。安倍、自民党政権は衆参絶対多数を握った状況下で、3年間は選挙をやらなくてもよい。その状況を使って、積年の課題をすべてやりきろうとしています。その姿勢を経団連などに政治的に利用されています。経団連、多国籍企業は日本に本社をおいているだけで、日本の国益、日本人、日本の中小企業、そこに働く労働者(圧倒的な多数の国民)、自治体などの経営、将来についての関心は少しもありません。あるのは自らの企業利益であり、成長であり、世界で生き残ることだけです。そのことに資する税制、社会基盤整備、制度のみに関心を示し、政治に要求しています。その先頭に立つのが安倍、自民党議員、政権ということになります。
蜂助さんがあきらかにしているようにTPPは関税撤廃のみではなく、医療、保険、金融、ISD条項など日本社会のあらゆる業界、社会構造を改悪する毒素を含んだ協定です。その協定の最大目的は、アメリカ多国籍企業の海外進出を有利にし、生産、販売の自由と利益を最大化する目的を法的に保証することです。このことはアメリカ政権、交渉責任者はアメリカ多国籍企業幹部が就任していることを見てもあきらかです。アメリカ政権の省庁責任者は多国籍企業幹部、大手金融機関幹部が「回転ドア」のごとく就任し、大手企業の責任者との人事交流を繰り返しています。したがって、オバマ政権が参加国の国民利益を考慮してTPP、交渉を行うことは幻想であり、絶対にありえません。
TPPは単なる貿易協定ではなく日米軍事同盟と同じように、日本社会の政治、経済、法制度を拘束し、改悪させる(アメリカ企業に有利にする)協定です。しかも、その内容を公表しない本当に極悪、非道の交渉、協定です。知られたら困るからです。こんなことが政治上の正義、公平性を担保するかどうかを考えればすぐに理解できることです。
自民党は公約したとおりの交渉内容でなければ、交渉で努力(あがくこととうそ)などせずに、交渉から離脱(選挙時にそのように主張した)すればいいだけです。
<社説:TPP交渉と安倍、自民党政権の政治姿勢>
「また、二枚舌か」。農産物の貿易自由化で何度も煮え湯を飲まされてきた農業関係者は、そう受け止めたに違いない。
環太平洋連携協定(TPP)交渉で、コメを含む五つの重要農産品について、政府・自民党は関税を撤廃するかどうかを検討するという。
関税撤廃の例外を意味する「聖域」として死守すると約束したのではなかったか。突然の方針転換は国民を欺く言動と言わざるを得ず、容認できない。
交渉は難航している。きのう、インドネシアであった参加12カ国の首脳会合が発表した声明からもそのことはうかがえる。
妥結に向け主導力発揮を狙ったオバマ米大統領が欠席したことも響き、当初見込まれた「大筋合意」には至らず、年内妥結に向けた努力を確認するだけにとどまった。米主導に対するアジア新興国の反発は激しく、越年するとの見方が強い。
7月に交渉に参加した日本は関税をめぐる協議にしても、2国間で関税を撤廃する品目リストを交換、話し合いの緒についたばかりだ。急ぐ必要はない。
聖域に自ら切り込む姿勢を示し、難航する交渉の主導権を握るための方針転換だとしても、虎の子といえる「カード」の中の1枚を、いま切ることが得策なのかどうか。この譲歩によって貿易上、投資上のどんな利益を得ようとするのかも不明だ。
さらなる譲歩を迫られた時はどう対応するのか。交渉の進め方から言っても、甚だ疑問だ。
聖域死守を前提に、交渉戦略を練り直すべきだ。
五つの農産品(コメ、麦、牛・豚肉、乳製品、甘味資源作物)は、コメなら、玄米や精米に加え米粉や団子といった加工品・調整品を含め58品目というように、関税の分類から言えば合わせて586品目に上る。
自民党は、このうち輸入量が少なく、生産者に対する影響が限定的な加工品や調整品について、「品目」レベルで関税撤廃を検討するとみられる。
ただ、加工品にしろ、幾つかの食品をまぜ合わせた調整品にしろ、いま輸入量が少ないからといって、関税がゼロとなれば今後どうなるかは分からない。
加工品は地域の食品加工業者を圧迫しかねない。輸出する側から言えば、例えばコメの調整品が開放されれば、それに特化してコメの輸出量を伸ばすことができる。国内での限られたパイを考えれば、生産者に少なからぬ影響が及ぶ。
「アリの一穴」になる恐れがある。だからこそ、政府はこれまで586品目をそっくり守ってきたのではないのか。
関税撤廃の検討方針について撤回を求めたい。できないのであれば、少なくとも交渉の現状と方針転換に至った理由を丁寧に国民に説明するべきだ。
安倍晋三首相はTPP参加表明以降、「日本の農業を守る」と繰り返してきた。どう守るのか。いま、そのことが問われている。理解と納得が得られなければ、交渉が妥結したとしても国民には受け入れられまい。