JR北海道の国土交通省による監査が終了しましたが、依然として事故が続いています。政府、政党による調査などが進行し、今まで表面化していなかった実態が少しずつあきらかになりつつあります。
一番大きな問題は、国鉄の民営化による問題です。そのことがあらゆる直接的な事故要因となっています。事故・故障が多発する要因は、人員問題、車輌の問題、設備・環境の問題といわれています。
第一に、JR北海道の人員がどうなっているかです。1987年国鉄民営化時点で13000人在籍していました。その職員数が、2012年時点で、7000人に削減されました。その理由は、JR北海道の経営が赤字であることを最大の理由としています。その結果、保線管理室(レールの点検、補修、維持管理)は札幌圏内で白石、手稲が札幌保線区に統合され当初いた職員数80人が29人に削減されました。この人員数だけを見ても鉄道の安全対策がいかに軽視され、困難な状況に追い込まれているかはあきらかです。しかも、JR北海道は赤字を削減しようとして出向、外部委託、経費節減、列車の高速化、検査期間、頻度の遅延化を行いました。事故、故障が頻発してもその事故原因、分析が人員不足で対応ができない実態になっています。
第二は、車輌の問題です。電車、ジーゼルのエンジンが25種類もあり、複雑すぎて保守管理ができないくらい困難となっているようです。特に、技術分野での新人育成が困難であり、このような専門的な技術の教育、新人育成ができない事態に直面しています。ところが、経営陣が列車の高速化で、乗客数を増やそうとして、今まで時速110キロの速度を130キロに引き上げました。ところがその高速化に対応する具体的な対策をなんら実行しないで速度を上げたために、エンジンなどがその高速化に対応できなくなっていると指摘されています。その故障、事故が火災、ブレーキが効かないなどを引き起こしていると見られています。
第三は、設備・環境問題です。電車の部品が落下する。部品などが針金(信じられないことですが)で縛ってある事例も明らかにされています。レールの上を走っているのに、車輌に泥がつくなど鉄道設備としては致命的な設備の破損、劣化が対応されずに現在に至っていることもわかってきました。また、車輌の検査期間、検査キロ数などは国鉄時代の期間から1.33倍に延ばされ、走行距離数も2倍から1.5倍に伸ばされました。これでどうやって、車輌の保守点検ができるのかというほどの安全管理の後退が起きています。
第四に、経営陣の能力、経営姿勢です。赤字を削減し、黒字化するために、鉄道事業への投資、人員投下を行わず、不動産事業、鉄道以外の事業に本部要員を振り向けたために、鉄道事業の安全管理、設備面での保守管理が異常に遅れたと言われています。鉄道事業者でありながら、鉄道事業への投資を軽視てきた付け、事故故障になっているのだと思います。また、経営陣は労務管理の環境を改善しないために、職場の中は本当のことをいえない、現場の問題を本部が把握できない状況に陥っています。労働組合分裂、敵視体質をそのまま継続しています。
このような実態を改善しないで、故障・事故の削減などは出来るはずもありません。JR北海道がもつ経営上の赤字体質に対して国としての方針、対応策を持つことが最大です。その上で、JR北海道の経営陣の体制見直し、鉄道の安全管理業務の基準点検と指導が必要です。また、監査、勧告であとはJR北海道まかせをやめ、点検、指導を国が責任を持って行うことが必要です。