巨大多国籍企業の利益優先、利益至上主義が何をもたらすかの典型的な事例です。フォルクスワーゲンは、ナチスドイツ時代の国策企業であったことも考えなければなりません。ドイツの威信をかけた企業活動が、このような不正劇を生んだ可能性もあります。いずれにしても、多くの消費者をだまし、詐欺を働き商品を販売した責任を果たさなければなりません。また、環境汚染の負荷を企業責任で、応分に果たさなければなりません。
ドイツが原子力発電での廃止を決め、政治が、国際的に果たした先進的な役割は当然、高く評価しなければなりません。また、シリア難民を受け入れ、多くの難民救済の負担を背負っていることもきちんと評価しなければなりません。今回のフォルクスワーゲンの捜査と不正は、区分して評価しなければならない問題です。
消費者の信頼を裏切った責任は、第一義的にフォルクスワーゲンと不正を働いた企業側にあることは明確です。そのうえで、環境汚染を防ぎ、便利さとは何かを人間としても考えなければならないときに来ているように感じます。
[ 中央日報] 【時視各角】フォルクスワーゲンの詐欺劇を見て=韓国
「私たちは、知らずにだまされたのか」。
フォルクスワーゲン(VW)の排気ガス実験操作の詐欺劇の内幕が明らかになりながら最初に浮かんだ思いがこれだった。フォルクスワーゲンをはじめとするドイツ系自動車企業が「クリーンディーゼル」技術の広報に熱を上げていた場面を思い出す。2000年代の中盤だった。欧州乗用車メーカーらはディーゼル乗用車を国内に導入して積極的にマーケティングを展開した。
当時、ディーゼル車のイメージは悪かった。韓国でディーゼル車は真っ黒な媒煙ガスをもくもくと漂わせた媒煙バスとして記憶されていた。ところがクリーンディーゼルとは。ディーゼルは、ガソリンに比べ燃費と力が良くて二酸化炭素の排出は少ないが、世界保健機構(WHO)も一級発ガン物質に指定した酸化窒素と微細粉じんを排出するというのは常識だ。ところが「このようなディーゼルがどうして清浄なのか」と疑問を提起すれば、これらの自動車業界の関係者は「知らないお言葉」としながらディーゼルエンジンの清浄性を証明する各種実験資料を引っ張り出しながら話した。「世界最高水準のドイツの自動車技術で燃料を完全燃焼させて媒煙をキャッチする技術を実現した。環境を最も優先に考える欧州が今ディーゼル車を中心に向かっていることが、清浄ディーゼル技術の信頼性を示すものだ」。
実際に1990年代中盤から欧州連合(EU)加盟国はディーゼルエンジンの使用を促進する各種政策を打ち出した。当時、原油高に対応する政策的側面が強かった。これに対し90年代初期までは10%未満の割合を占めていたディーゼル車が、現在のEUでは35%に達する。もしかしたら私たちはドイツ自動車技術と親環境欧州の名声という虚構に期待物性は変わらないという常識を出してしまったのかもしれない。
一部では現代(ヒョンデ)自動車の反射利益があるだのないだのと言っている。1つ、株式市場の冷淡な反応だけではなくても今回の事態がディーゼル陣営の危機に集まっていく状況で、積極的にディーゼルを導入した国産車が何の反射利益を得るのだろうか。かえってディーゼル陣営がこのまま座り込むならば損失を受ける恐れもある。信頼の高いフォルクスワーゲンのディーゼル車が「実験室では清浄、実際の走行では汚染源を排出」という事実がばれて各国の調査が全ディーゼル車に広がりながら一部ではすでに「電気自動車」代案論が出ている。大気汚染物質をほとんど排出しない真の清浄車ということだ。ところが電気生産過程の大気汚染を考えれば、大気の質を改善する効果がないという研究結果もある。また電気自動車は大容量のバッテリーを装着しなければならないがバッテリーは一定の充電周期になれば性能が落ちて交換しなければならない。このようなバッテリーはリチウムを含んだ各種鉱物質でつくられる。電気自動車が大衆化すれば、その廃棄物による環境汚染はどのようにするのか。
結局、清浄差はない。米国のある自動車雑誌は「合理的価格のクリーンディーゼルは、話にもならない目標だった」という元フォルクスワーゲン役員の告白を掲載した。燃料を燃やして動く車が環境の得になる方法は初めからないが、技術で克服できるよう偽装して環境に対する罪悪感を減らしてみようという下心が、消費者と企業の間で合致して清浄差の神話をまき散らしているだけだ。もしかしたら私たちも清浄ディーゼルが虚構であることを理性的に分かっていたのに、力があり燃費も良くて人望の高いドイツ車に乗りながら環境も大切にしているという大義名分まで立てたかった消費者の利己心が発動し、分からないように目を閉じたのかもしれない。フォルクスワーゲンの誠実さを叱責する一方では、消費者として自分の誠実さも振り返ってみるべきではないだろうか。
今回の事態を見ながら、消費者の重い義務について考える。フォルクスワーゲンの詐欺劇を明らかにしたのは米国の非営利団体である国際クリーン交通委員会(ICCT)だった。彼らは2012年から2年余りの間の検証を経て昨年からフォルクスワーゲンに事実を認めるよう促し、今回の降参を手にした。企業の誠実さは、消費者が目覚めている時に引き出せるものだ。とても高いブランドの名声に寄り添った消費は虚しい。また消費しながら惜しむ方法はない。環境を惜しみたいなら、企業だけでなく消費者も共に誠実な熟考を始めなければならない。
ヤン・ソンヒ論説委員