「くいを打つ穴に注入するセメント液の量のデータ改ざん、施工主の三井住友建設に毎日提出すべきデータの紛失と、ずさんな状況が次々に明らかになっている。現場のチェック態勢はどうなっていたのか。担当の社員一人の問題と片付けることはできない。」
購入者である住民は、大手販売会社であることを信用して4000万前後もするマンションを購入しました。ところが、そのマンションは基礎である工事部分で手抜き、データ改ざんが行われ、棟自体が傾斜し、ゆがんでしまった。驚くべき事態が表面化しました。しかも、そのデータ改ざんを行った旭化成子会社の関与したマンションが全国で3000棟あるともいわれています。なんとも、言い難い、悲惨さ事実が今後、イモ蔓式に出てくる可能性があります。
このくい打ちにかかわった従業員が、契約社員であった。販売会社、旭化成が契約社員に全責任を負わせ、トカゲのしっぽ切りのような責任逃れをさせてはなりません。人件費とコスト削減に契約社員を利用しておきながら、自らは経費削減で利益を絞りとる。そのことが持つ意味と、正規労働が当たり前の社会を作り上げなければならないと改めて感じる事件です。その結果が購入者である住民に巨額の損失と苦痛を与えたていることも指摘しなければなりません。
<信濃毎日社説>マンション傾斜 背景を含めて徹底解明を
住まいの安心、安全を文字通り、土台から揺るがした。横浜市のマンション傾斜問題は建物を支えるくいが強固な地盤に届いているかの調査が続く。
確認を急ぐとともに、背景を含め問題の経緯を解明して再発防止につなげなくてはならない。
4棟計705戸のマンションで1棟が傾いた。基礎工事のデータ改ざんが判明している。くいを打つ穴が強固な地盤に届いたかを測るデータの使い回しなどだ。既に調査済みのくいでは、届いていなかったり、深さが足りなかったりする施工不良が確認された。
三井不動産グループが販売したマンションだ。全4棟の建て替え案も出ており、住民は難しい決断を迫られる。大手を信用して購入した人たちにすれば、許せない思いだろう。
くい打ちは旭化成の子会社「旭化成建材」が孫請けしていた。改ざんに関わったとされる現場管理担当の契約社員は、聞き取りに対して「記録する機械のスイッチを入れ忘れた」「記録紙が水でにじんで見られなくなった」などと説明しているという。
事実だとしても、なぜデータをごまかしたのか。結果を予期しなかったのか。インフルエンザで休み、2日間データを取らなかったこともあるという。勤務状況、工期や費用との兼ね合いなど動機をはっきりさせる必要がある。
くいを打つ穴に注入するセメント液の量のデータ改ざん、施工主の三井住友建設に毎日提出すべきデータの紛失と、ずさんな状況が次々に明らかになっている。現場のチェック態勢はどうなっていたのか。担当の社員一人の問題と片付けることはできない。
マンションの住民が、販売した会社に「手すりにずれがある」と指摘したのは昨年11月下旬だ。改ざんが公表されるまで、10カ月以上かかった。会社は東日本大震災の影響との見方を示していたとされる。各社は問題発覚後の対応が適切だったかも検証すべきだ。
過去10年ほどの間に旭化成建材がくい打ちを請け負った物件は全国で約3千棟に上る。旭化成は同様のケースがないか、保管しているデータを調べる。改ざんしたとされる男性が関わった物件を優先する方針だ。
外部の専門家でつくる第三者機関への委託も検討するという。全容が明らかになるまでには時間がかかるだろう。居住者らの不安に応えるため、調査の進み具合や判明したことについて随時、丁寧に説明するよう求めたい。