Life is ART!

高齢者施設で活躍しているアートワークセラピスト達の旬な声をお届けします。

F様

2011-10-25 08:02:12 | ひとりごと
シニア担当のYokoです。

全然気づかなかったんです。

ふっとその部屋を見るとそこには表札がありませんでした。

「あれ?お部屋変わったのかな?」

ドアに硝子部分があり部屋の中を覗く事が出来ます。

そこから覗いてみたら、ベッドには綺麗にシーツが掛けられている。

そう、まるでシーズンオフの別荘のソファーにほこりが被らないようにしてあるように。


私は先週もこのフロアに訪れていました。

そして先月も訪れていました。


それなのに私は全然気づかなかった。



「ごめんなさい。。。」



F様

音楽が大好きな方でした。

とっても紳士

クリスマス会ではジャケットのポケットチーフ

F様自身が年を重ね認知症が進行し会話が難しくなっても

その姿から伝わるものは

F様の「品」でした。

銀行にお勤めだった事を以前聞いたことがあります。

大きな大きな福耳で

笑うと目が少し垂れて

大好きでした。

しばらくして進行に伴い誤食が増え、

私たちのアートワークの時間には参加がなくなってしまいました。




以前仲間のさっちんがサポートで来てくれた時

もうF様は意志を伝えることは難しくなっていました。

隣に座ったさっちんの手をずっと握っていました。

そしてさっちんもまたF様の隣に何を話しかけるわけでもなく

ただただずっと静かに手を握っていました。



本当にあたたかい時間でした。



F様と過ごした時間を振り返り

じんわりとあたたくてやわらかいものが心に・・・

ゆっくりゆっくり湧き出てきます

そしてその湧き出たものは

また心にじんわりゆっくりと染み入っていきます



シニアのみなさまと過ごす時間の中で訪れる

お別れの時

お亡くなりになったのはもう1ケ月以上も前だったそうです。

その事にも気づかなかった私

「F様 ごめんなさい」

そう心でつぶやきながら

ベッドにシーツが掛けられた表札のない部屋の前で

「ありがとうございました」と

静かに手を合わせ頭を下げました。





F様の手形 

あたたかくやわらかい手でした。




合掌



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2 コメント

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Unknown (さっちん)
2011-10-25 23:28:02
最近、涙を流してませんでした。
今、ぽろぽろ流れ落ちてきました。

F様、
4年前の、サポート2回目の時でした。
サポートのサの字も知らなかったけど、
F様のあたたかい手は、一生忘れません。

F様とのあたたかい時間があったからこそ
私は今もなお、続けています。

F様、ありがとうございました。

合掌
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プレゼント (Yoko)
2011-10-26 05:47:58
さっちんへ

あの時間は本当にあたたかかった。

「手しか握ってないんですけれど・・」と
少し戸惑いながらも、何かプレゼントを
もらったかのようなうれしい表情を
さっちんがしていた事が忘れられません。

F様のプレゼントを今も大切にしているのですね。

F様は最後まで与える人だったのですね。
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