序破急

片足棺桶に突っ込みながら劇団芝居屋を主宰している爺です。
主に芝居、時々暮らしの中の出来事を書きます。

プレーバック劇団芝居屋第40回公演「立飲み横丁物語」NO17

2022-12-16 19:13:59 | 演出家
第十二場 七月五日昼・磐田金融事務所 その1

仁が凛子に電話をした翌日。
総一は上機嫌に念書を携えた健三を迎えました。
なにせ瀬村組の看板が手に入るんですから。

総一 「今、お前大きな事に手を出してるそうじゃねえか」
健三 「どうしてそれを」
総一 「まあ、壁に耳ありってやつだ」
健三 「・・・そうですかい」」


総一 「今度の借金もその事と無関係じゃあるめえ、そうだろう」
健三 「ハイ」
総一 「どういう事なんだ」
健三 「いや、それは・・・」
総一 「言いたくねえか・・・いやよ、俺もオメエ達的屋がこの三年間どんなに苦労したかはよくわかってるつもりだ。でもよ、オメエの方から何もねえんじゃ、ヤクザの俺が何かする訳にはいかねえやな、そうだろう。今まであくまでも瀬村の掟を守って来たオメエが、事態が良くなりかけた今になって俺のトコに来たのはどういうことかと思ってよ」
健三 「叔父貴。その話は勘弁してください」
総一 「そうか、オメエがそういう気なら、そういう事にしておこう」
健三 「すいません」
総一 「念書は持ってきたか」
健三 「(封筒を出す)これです」


総一 「借用書と金持ってこい」
仁 「ハイ」


健三 「叔父貴、一つ聞いていいですか」
総一 「なんでえ」
健三 「なんで担保が瀬村の看板なんですか」
総一 「俺の道楽よ」
健三 「道楽?」
総一 「オメエだって一時は同じ釜の飯を食ったんだ、俺と先代組長の達夫との因縁は知ってるだろうが」
健三 「ええ、先代と叔父貴が姐さんと瀬村組の跡目を争っていたことはよく覚えてます」


総一 「まあ、俺がお嬢さんに振られて、跡目は達夫に決まった。その後自棄になった俺は的屋からヤクザに鞍替えだ。今じゃ磐田総一は血も涙もねえ金貸しって事になってるがな。この歳になると必死になっていた的屋の時代が懐かしいのよ。だから道楽よ。まあ、無事に金を返せば関係ねえ話だ。看板はお前の手に戻る。その代わり、できなかったら分かってるな」
健三 「ハイ」


仁 「借用書に署名捺印、お願いします」


とその時、不意の来客です。
応対に出た仁が慌てて戻ってきます。
現れたのは・・・

仁 「社長!き、来た!」
総一 「なんでえ、騒がしい」
幾久 「あんた達何やってんのさ!」
総一 「お、お嬢さん!」


健三 「姐さん!」
凛子 「仁さん、あんた何でここにいるの」
仁 「いえ、あの・・・」
健三 「姐さん!」


幾久 「ああ、良かった。間に合った」
健三 「姐さん、何で・・・」
幾久 「何でじゃないよ。健三、これはどういう事なんだい」


さてこの後どうなりますか。
第12場の2に続きます。

撮影鈴木淳


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