序破急

片足棺桶に突っ込みながら劇団芝居屋を主宰している爺です。
主に芝居、時々暮らしの中の出来事を書きます。

劇団芝居屋第43回公演「七曲り異聞・隠れ処京香」プレーバック11

2024-11-29 17:49:15 | 演出家

20:55

 

ドアが開き、京香が入ってきます。

懸命に笑顔で迎える三人でした。

ともすれば再会の感激に吹き出そうな涙を抑える三人ですが、京香の姿を目の前にそれもままなりません。

 

京香 「良子」

 

京香の呼びかけに我慢が切れた良子は・・

良子 「姐さん、お帰りなさい」

京香 「・・・ただいま」

功一とて同じ気持ちです。

 

功一 「おい、良ちゃん、交代」

良子 「ああ、ゴメン」

 

     対面する京香と功一。

     功一、前掛けで手を拭き差し出す。

     握手。

 

功一 「姉貴。お帰りなさい」

京香 「・・・功一」

感激の三人を他所に、京香は複雑な表情を浮かべ思わぬ一言を漏らします。

それは三人に大きなショックを与える言葉でした。

 

京香 「・・・こんなにみんながあたしの事を気にかけてくれてたなんて思いもしなかった」

 

それを聞いた三人は血相を変え、京香に詰め寄るのでした。

功一 「・・・チョット、ちょっと待ってよ。姉貴、そりゃねえよ」

京香 「エッ・・・」

良子 「あたし達が姐さんの事気にしてなかったとでも思ってるんですか」

登和 「わあ、心外だな」

功一 「俺は兄貴や姉貴から受けた恩は忘れちゃいませんよ」

登和 「あたしだって姉さんの教えがあったから万年青を任せてもらってるんですよ」

良子 「本当に情けないよ、姐さん。あたし達の気持を分かってくれてなかったかと思うと、情けなくて涙も枯れちゃったよ」

功一 「姉貴が急に七曲りの店を閉めたって事を社長から聞いた時、俺達みんなで姉貴の家まで行ったんだぜ」

登和 「その後だって女将さんや社長は勿論、みんなでいろんな伝手を探して姐さんを探し回ったんですよ」

良子 「何でだと思う。みんな姐さんの役に立ちたい、力になりたいと思ったからなんだよ」

功一 「姉貴、そこんとこだけは疑わねえでくれよ、頼むから」

 

思わぬ三人の反応に戸惑う京香でした。

 

撮影鏡田伸幸



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