序破急

片足棺桶に突っ込みながら劇団芝居屋を主宰している爺です。
主に芝居、時々暮らしの中の出来事を書きます。

劇団芝居屋第43回公演「七曲り異聞・隠れ処京香」プレーバック15

2024-12-07 14:43:38 | 演出家

21:28

 

心身共に七曲りの仲間のもとに帰る事ができた京香は金蔵に新しい店の屋号を報告します。

 

京香 「東西。間ビルのわが店の屋号は隠れ処・京香。隠れ処・京香と申します。以後御贔屓の程よろしくお願い申し上げます」

金蔵 「カクレドコロ・・・かくれどころって・・

登和 「隠れ家」

金蔵 「うん?隠れ家?・・・ああ、それが隠れ処って事か。」

京香 「そうなの。隠れ家みたいな店にしたいと思ってみんなに言ったら・」

良子 「あたしが隠れ処・京香ってパッと閃いて、ねえ」

功一 「それ、いいじゃないかって事で決まったんすよ」

典子 「全員一致さ」

登和 「どう思います」

金蔵 「ああ、悪くないな」

 

その時和気あいあいとした雰囲気を狙ったように功一達が改まった口調で京香にお願いをします。

 

功一 「社長、姉貴。ちょっといいすか」

金蔵 「なんだい改まって」

功一 「ええ、それがですね・・・」

京香 「言ってごらんよ」

良子 「姐さんが今日来るって事を聞いてあたし達考えたんです。これはあたし達のわがままな考えなんですけど・・ねえ」

功一 「まあ、そうだな」

登和 「是非姉さんにやってもらいたい事があるんです」

京香 「ずいぶん奥歯に物の挟まった言いようだね。なんだいハッキリお言いよ」

功一 「すいません。姉貴、此処を店にするにあたって、お清めとかお祓いとかやらないんですか」

京香 「・・・お清めやお祓い?そうだね。特別考えちゃいないけどね」

 

功一達には京香にお清めをしてもらいたい訳がありました。

 

功一 「姉貴。ここは是非お清めしてくれませんか!」

登和 「お願いします」

良子 「姐さん、せっかく新しい場所で店をやる事になったんだから、お清めした方がいいすよ。お願いします」

京香 「まあ、それはいいけど、なんでまた」

功一 「姉貴、此処にくるまでに色々あったじゃないすか。俺達の気休めなんですけど、どうしてもお清めしたいんです。この際みんなの前で今、お清めさせてください」

 

これは京香との再会が決まった時、三人で相談して決めてたことでした。

 

典子 「京香、あんたを思っての事ださせてあげれば」

京香 「そりゃ気持は有難いんですけどね、あんた達お祓いやお清めできるの」

功一 「いや、できません」

典子 「なんだいできないのかい」

良子 「正式なのはできないけど、調べたんですインターネットで」

金蔵 「インターネットで?」

良子 「シロウトでもできるお清めっていうのがありましてね」

功一 「実はすね、持って来てるんです、一式。こういうのは早い方がいいと思って」

 

怪訝な顔の京香と金蔵を他所に功一達はいたって真剣です。

付け焼刃ながら集めた三宝などの道具一式を持って来て即席の神棚をつくります。

 

功一 「只今よりお祓いお清めの儀を執り行います。よろしくお願いします」 

登和 「ハイ、行くよ」

良子 「せーの」

三人「かけまくも かしこきはらへどの大神たち、諸々のまが事 罪 けがれを祓え給え 清め給えともうす」

 

功一 「以上を持ちましてお祓いお清めの儀終わらせていただきます。ご参列有難うございました」

良子・登和 「有難うございました」

まあ、即席とはいいながらお清めの儀式も無事に終わり、サッパリした一同は歓迎会場の紫苑へ向かう準備に掛かります。

典子 「ねえ、そろそろ紫苑に行った方がいいんじゃないかい」

良子 「そうですね、やることはやったから」

功一 「もういいか」

登和 「じゃ、後片付けして行こう」

良子 「そうだね」

京香 「ここからみんなと一緒に紫苑に行くの」

良子 「はい、そのつもりですけど」

寛子 「行ってらっしゃい」

京香 「何言ってんのよ、寛ちゃん、あんたも来るのよ」

寛子 「エッ。あたしも」

京香 「そりゃそうよ、これからお世話になる大家さん来て貰わなけりゃ歓迎会の幕は開きません」

良子 「そうですよ、是非いらっしてください」

登和 「寛ちゃん、遠慮はなしよ」

寛子 「そうですか、それじゃ着替えなきゃ」

京香 「じゃ、上がって支度、支度。ああ、あたしもついでにバッグ取って来なきゃ」

典子 「ああ、あたしも置きっぱなしだ」

 

残った三人は後片づけでお神酒の処理。参加いたかった金蔵は車を置きに自宅へ。

登和はおでんを取りに行きます。

残った功一と良子の前に京香と典子と寛子が現れます。

良子 「どうしたんですか」

京香 「(笑)それがね・・・」

典子 「寛ちゃん、おいでよ」

 

     寛子,社交ダンスの衣装で現れる。

 

寛子 「オマチドウサマ」

 

     寛子、ポーズ。

     吹き出す功一。

     良子爆笑。

 

良子 「なに、どうしたの、その格好」

寛子 「あら、そんなに変?」

良子 「そうじゃなくて・・ゴメンなさい。ちょっと意表を突かれたもんだから」

典子 「そりゃ意表は突かれるわね」

京香 「でも、寛ちゃんなりの考えがあるのよ」

功一 「どんな考えよ」

寛子 「あたし断捨離する事に決めたの」

功一 「ほう、断捨離ね」

寛子 「これね、あの人と最初で最後の大会に出た時の衣装なのよ」

良子 「社交ダンスのですか?」

寛子 「そう。その大会で自分達の下手さ加減を知って、二度と人前で踊らないと決めたの。それで二人だけで楽しむために此処を作った」

良子 「ああ、ここを姐さんに貸す事を決めたから・・」

功一 「だから断捨離。ダンスもやめるの」

寛子 「ええ。あの人のとの秘密の部屋も無くなっちゃうし、今日で決まりを付けようと思ってね。あたしのパートナーはあの人だけなのよ」

京香 「お陰様で歓迎会が華やかになるわ

 

寛子 「京香さん」

京香 「なに?」

寛子 「この部屋の鍵です。受け取ってください」

 

寛子、京香に店舗の鍵を渡す。

 

京香 「確かにお預かりしますね」

 

     寛子、部屋を見渡し。

 

寛子 「くれぐれもよろしくお願いしますね」

京香 「ええ、隠れ処・京香。頑張るわよ」

寛子 「期待しています」

皆歓迎会場に向かい一人残った京香は・・

 

京香 「あんた・・・見ていてね」

 

22:35 幕

有難うございました。

 

撮影鏡田伸幸

 



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