環境政策において、経済社会システムの変革が必要であるといわれる。しかし、経済社会システムの変革がなぜ必要なのか、変革後の経済社会システムはどのようなものであるか、について、具体的な方向性が共有されていないのではないだろか。例えば、変革の方向性を次のように例示することができる。
①中央集権的でトップダウンの政策に限界があり、市民参加や地方分権により地域からのボトムアップの転換が図られる。
②現在世代の利害調整が中心となり、将来世代の代弁や長期を見通した政策形成の仕組みがないことに問題があり、将来世代の視点からのマネジメント・ガバナンスを行う組織や仕組みを設立する。
③大量生産・大量消費に問題があり、メンテナンス志向や高付加価値の長寿命設計、リユース・リペアの優先等を実現するように市場の枠組みを変えていく。
④枯渇性の資源・エネルギー(地下資源)に依存する拡大再生産を図る工業系社会に問題があり、再生可能な資源・エネルギー(地上資源)を自然の循環に即して活用する農系社会を基軸する方向に変えていく。
⑤グローバル化一辺倒の市場に対して、地産地消や小さな経済を重視し、それが既存市場を補完するものとして重層的に形成されていくようにする。
⑥東京や大阪等への集中が進行するなか、大都市に集中することが環境効率やリスク管理上、問題があり、コンパクトな都市を分散型に配置された国土の形成を図る。
⑦格差や貧困、ストレスやひきこもり等を生み出す画一化された価値規範に基づく人の成長・成功モデルに問題があり、多様な生き方や生き方の変更が可能な社会に転換する。
既存の経済社会システムの維持・継承を図ること、それを漸進的に改善することに限界があると知り、経済社会システムの根本を抜本的に転換し、代替的な経済社会システムをつくる方向性を明確に位置づけていく必要がある。
この際、社会を一気呵成に転換しようとするハードランディング(急激な着陸)だと、弱きものが“痛み”を受けるかもしれず、それでは本末転倒となる。これまでの社会をひとまず維持しつつも、それを補完する代替的な社会を並立させ、重層的な状態を作っていくというソフトランディング(軟着陸)が必要である。