エネルギー利用の歴史の四段階
人類のエネルギー利用は、四つの段階に分けて捉えることができる。第一段階は再生可能エネルギーだけを利用していた時代。この段階の初期では、人類が手に入れて、扱うことができたエネルギーは火だけであったが、やがて水力や風力、人力や動物の力を動力として利用するようになった。薪炭や植物油というバイオマス燃料も、熱や光を得るエネルギーとして利用されていた。
第二段階は石炭という化石エネルギーの利用を始め、さらに蒸気機関や発電機が発明され、近代的なエネルギー利用を始めた時代である。産業革命が進行した近代化の時代ということもできる。概ね18世紀頃から。
第三段階は石炭に代わり石油の本格的な利用を始めた時代である。20世紀中旬頃から、第二世界大戦後の時代。石油は石炭よりも使い勝手がよく、生産、輸送・移動、暖房、発電等と多くの用途の利用を拡大してきた。石油利用による飛躍的な変化を流体革命ということもある。
そして、第四段階が現在。化石燃料の使用に起因する地球温暖化や世界的なエネルギー需要の拡大とエネルギー枯渇への危惧を背景し、再生可能エネルギー利用の拡大が志向されている。日本では特に、東北大震災とそれに続く福島原子力発電所の事故により、エネルギー需給の見直しが求められている。
再生可能エネルギーの変遷
エネルギー利用の第一段階では、化石エネルギーは利用されず、再生可能エネルギーだけが、人類が利用するエネルギーのすべてであった。
人類が最初に手にしたエネルギーの形態は火である最も古くは、50万年前の北京原人が火を使っていました。木の摩擦熱や火打石を使うことで、火を自由に使えるようになった人類は、暖房や調理をすることができるようになった。これにより、野獣から身を守ることができ、調理して動植物を食べるようになった人類は、他の動物と違う存在として、地球上での繁栄の第一歩を踏み出した。
その後、石炭を利用するようになるまで、再生可能エネルギーを利用する道具が進歩した。熱や照明での利用はバイオマス燃料を利用していた。日本では囲炉裏、ヨーロッパでは暖炉が使われるようになった。囲炉裏や暖炉ともに、暖房用でありとともに、調理用であり、不十分でしたが照明用であった。私達の今日の暮らしでは、用途毎にエネルギーを利用する道具が異なるが、この頃は用途を分化させずに多面的な利用をしていた。動力としては、水車、風車、あるいは人力車・馬車等が使われるようになった。
江戸時代の環境・エネルギー事業を書籍に表している石川英輔氏は、江戸時代を「植物国家」であったとしている。江戸時代では、熱源では薪炭、光源では蝋や菜種、動力源では人力や牛、馬等のように多くが植物に由来するものであった。人や牛等も植物を食べるため、元をたどれば植物だというわけだ。
エネルギー利用の第二段階では、石炭利用が主流となったが、産業用の利用が中心であり、水力や風力に恵まれた場所では水車や風車が利用されていた。民生用には再生可能エネルギーがまだまだ利用されていた。
特に、森林資源にも恵まれている日本では、里山が薪炭のために伐採して利用されていた。林野庁の統計によれば、薪の生産量は薪の生産量は昭和初期である。敗戦によりその生産量は激減をしたが、それでも1960年、1970年代と薪の生産が続けられていた。昭和初期の里山の風景は禿山であったといわれますが、過剰利用になるほどに身近な森のエネルギーが利用されていた。
また、多雨な気候にある日本では、急峻な地形ゆえに水車の利用が活発であった。日本の水車の黄金期は、農村では明治、大正、昭和初期とされている。綿や菜種の実からの油絞り、米やそば、麦の製粉などの製粉に水車が使われていた。同時期に、製糸・紡績、飲食料品業等の大規模な工場にも動力としての水車が使われていた。
エネルギー利用の第三段階に入り、石油が多用途に大量に使われるようになった。重油を焚いた火力発電、それにより得られた電気の照明・空調・調理・テレビ等での利用、ガソリン・軽油といった輸送用燃料、灯油による暖房など、熱、光、動力のあらゆる用途のエネルギーの源が石油になってきた。天然ガスもまた、石油とともに使いやすい燃料として利用され始めた。
こうして大規模な水力発電は建設が進められましたが、バイオマス、小水力、風力の利用は廃れ、壊滅的な状態になった。
そして現在、枯渇エネルギーである石炭・石油によって代替された再生可能エネルギーによる”逆代替”が始まっている。もともと利用していたのに、その良さに気づかずに、回り道をしてきた人類である。
〔参考文献〕
田中紀夫「エネルギー環境史・Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」ERC出版、2001年8月
乾正雄「ロウソクと蛍光灯~照明の発達から探る快適性」祥伝社、2006年5月
林野庁「森林・林業統計」
石川英輔「大江戸えねるぎー事情」講談社文庫、1993年7月
黒岩俊郎・玉置正美・前田清志編「日本の水車」ダイヤモンド社、1980年5月