サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

環境と経済をつなげる環境政策

2020年01月04日 | 持続可能性

(1)環境と経済の統合的発展の考え方

 

 環境と経済の統合的発展とは、「環境から経済へのプラス作用」と「経済から環境へのプラス作用」の双方向の効果を高めていくことである。「環境から経済へのプラス作用」は環境活動や環境保全が経済活動を活発化させる効果であり、表に示すように多様な側面がある。「経済から環境へのプラス作用」は、経済活動が活発化すれば企業は環境対策のための投資や人材配置を行い、行政は税収増により環境政策を活発化させるという側面である。

 

「環境から経済へのプラス作用」について、重要な3点を示す。

 

 第1に、経済効果には“フロー”効果と“ストック”効果がある。経済循環効果がフロー効果、資本形成効果あるいはその他の効果がストック効果である。フロー効果とは、環境対策によって生産・雇用・消費といった経済活動が創り出され、短期的に経済を活発化させる効果である。ストック効果は、環境対策によってストック(資本)が形成され、ストックが機能することで長期にわたり発生する効果である。形成されるストックは自然資本(森・川・海、生息生物や自然生態系)だけでなく、人的資本(人の増加や人の成長)、社会関係資本(市民間、企業間の信頼関係とネットワーク)、人工施設(公共施設等)がある。

ストック効果は長期にわたって発揮される効果であることら、将来的な視点から持続可能な発展を考えるうえで、このストック効果を高める視点から環境対策をデザインすることが重要である。

 

 第2に、経済効果には“内部経済”効果と“外部経済”効果がある。内部経済効果とは環境対策を行なう主体にとっての効果であり、外部経済効果とは他の主体にとっての効果である。地方自治体が主体であるなら、地域内で発生する内部経済効果を高めることが中心となる。例えば、地域内の企業が太陽光発電所を地域内に設置したとしても、その売電収入は地域外に流出して、内部経済効果を発揮しないことになる。

 

 第3に、経済効果には“直接効果”と“誘発効果”がある。誘発効果は産業連関表を用いて計算することができる。産業連関表は産業間の投入・産出関係を表で示したものである。産業活動は原材料の調達、生産、輸送、販売、消費といったサプライチェーンでつながっており、ある産業の産出は別の産業からの投入でつながっているため、ある産業の生産増は別の産業の生産増になる(第1次誘発効果)。また、産業の生産増が雇用者の所得増になると最終需要における消費支出額が増加するため、それによる産業の生産額等の増加といった効果が起こる(第2次誘発効果)。

 

(2)「地域から漏れるお金」を減らすために

 

 地域においては、環境対策等(環境活動・環境配慮消費・サービスの提供等を含む)による直接効果と誘発効果を地域内で発生させる(内部経済効果とする)ことが重要である。この際、環境対策等によって得られたお金が地域から漏れることがないように、次のような工夫が必要となる。

 

① 地域の事業者に対して、環境投資を行ない、地域の事業者が環境対策等を行なう(地域内への環境投資・消費)。

② 地域の事業者は、製品・サービスの提供において、地域内での調達・生産・雇用を行う(製品・サービスの生産における地域内連環)。

③ 地域の事業者は、環境対策等のために必要な資金を地域の金融機関から調達する(環境対策等事業者の地域内からの資金調達)。

④ 地域の事業者は、環境対策等の事業採算性を高め、十分な収益確保と雇用者所得への配分を行なう(環境対策等の事業採算性の確保

⑤ 所得が増えた雇用者が地域内で消費活動を行なう。このために、地域で生産された商品等を地域内で販売する(地域での生産・消費の自給率)。

 

 例えば、太陽光発電所が地域に立地したとしても、事業主体が地域外の事業者であれば売電収入は地域に漏れてしまう。また、事業者が太陽光発電所の初期投資額を地域外の銀行から調達すると、銀行の利子分は地域外に流出する。事業収益が従業員の給料として配分されたとしても、従業員が地域外の場合、従業員が買物をする商店が地域外である場合は、お金が地域から漏れてしまう。

 

 このように、「環境から経済へのプラス作用」の波及効果を得るためには、地域内からの調達率、サプライチェーンの地域完結率、事業の収益率、地域の生産・消費の自給率等を高める必要がある。


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