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山村再生総合対策事業の研修では、山村マーケティングにおいてSWOT分析を推奨してきた。SとWは山村の内部の強み(Strengths)と弱み(Weaknesses)を調べること、OTは山村の外部環境である機会(Opportunities)と脅威(Threats)を調べることである。
ここで、山村において活かすべき機会(捉えるべき追い風)では、自然志向・健康の高まり、シルバー市場の拡大等とともに、地球温暖化問題への対応が、全国どこであっても捉えるべき追い風とされていると考えられる。
確かに山村では、地球温暖化問題への対応を追い風した取組みが活発化している。吸収源としての位置づけと環境目的での森林整備支援、バイオマス利用による化石燃料使用の代替・削減、カーボンオフセット(J-VER)による資金調達等である。
しかし、こうした取組みには危うさを感じる。切り捨て間伐、木質ペレットの屍、カーボンオフセットによる地域還元の不足等をみるに、地球温暖化ブームと補助金に何となく乗っかった取組みが多く、山村再生につながっているようには思えない。
ここで考えたいことは、森林・山村が地球温暖化防止に果たす本当の役割とは何かということだ。都市で排出された二酸化炭素の吸収、相殺による後始末など、都市を補完することが山村の役割ではないと思う。
静岡県の浜松市で、山村と都市を結ぶというテーマで一般向けイベントを開催したときのこと。あるパネラーが、会場の質問用紙にあった「森林はなぜ地球温暖化につながるのですか」という質問への回答を求められた。その方は、「森林・山村は、時間的空間的に大きな循環の中に位置づけられるものであり、そうした大きな循環を取り戻すこと、そうした大きな循環の中にある小さな暮らしの場である山村を見直すこと、自然と直接対峙する、ゆったりとした暮らしを取り戻すことこそが大事である」と回答された。
実は、その質問はイベント事務局である私がこっそりと仕込んだ意地悪質問だったが(ごめんなさい)、そのパネラーは見事に私の期待に応えてくれた。「森林は二酸化炭素を吸収する」とか、「バイオマスも燃やせば二酸化炭素を排出するが、光合成で固定された大気中の二酸化炭素を大気中に返すだけだからカーボンニュートラルです」とかなんとか、そんな回答ではその場の参加者には伝わらなかっただろう。その場にとってわかりやすい表現で、もっと大きな意味での山村の重要性を表現してくれた。
地球温暖化問題への対応という追い風ととらえて、山村は何をすべきだろうか。二酸化炭素吸収クレジットの切り売りではなく、山村本来の環境共生型の暮らしと生業を取り戻すことが地球温暖化防止につながることをもっと考えてみる必要がある。そうした山村スタイルを国内に広げ、山村が主導する形で、低炭素社会を、そして持続可能な社会をリードすることが望まれる、私もそう考えている。
エコカーやエコ家電の普及支援、制度による規制、二酸化炭素に値段をつける市場の創出、コンパクトで集積度の高い都市基盤の整備など、低炭素社会の形成のために多くの施策が進められ、そこに多くの税金が投入されている。しかし、そうした技術や制度の限界もあるだろう。技術や制度ではない、文化・文明のあり様の変革を先導する場、それが山村だと思う。