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サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

山村は都市住民を選んで関わった方がよい

2014年06月15日 | 環境と森林・林業

 平成23年度山村再生総合対策事業では、大都市(札幌、仙台、23区、横浜、名古屋、京都、大阪、広島、福岡)居住の7,200名のWEBモニターにインタネットを用いたアンケート調査を実施した(実施時期:2011年2月)。このアンケート調査結果を筆者が独自に分析した結果を紹介する。

 

 分析は、山村地域はどのような都市住民をターゲットとして、どのような製品・サービスを提供したらよいのかを明らかにするために行った。

 

 アンケートでは山村に関わり経験がある都市住民は、木材の利用意向が高いことが確認できた。戸建住宅の建築・購入、リフォームの予定がある方2,448サンプルのうち、あらゆるところにも木材を利用したいとする回答は34%、木材を使用するなら国産材を使用したいとする回答は46%であった。これを山村訪問経験がある人に限ってみると、あらゆるところにも木材を利用したいとする回答は42%、木材を使用するなら国産材を使用したいとする回答53%と高くなっている。同様に山村の産物の購入経験がある人、山村情報の入手経験がある人も木材利用や国産材の利用意向が高くなっている。

 

 このことは何を意味しているのだろうか。まず言えることは、木材や国産材の利用促進を図るならば、山村に関わりを持つ人に情報を提供することが効果的であるということだ。

 

 さらに、踏み込んで考えれば、木材や国産材の利用促進を図るためには、山村を訪問してもらったり、山村との関わりを持ってもらうような事業を積極的に展開することが効果的だということもできるだろう。

 

 山村経済にとっては林業が最大の事業であるわけだが、その林業需要の裾野を広げるために、山村の地域資源を活かした観光事業や物品販売を行い、山村との関わりを深めてもらい、家を建てるときには木材の消費者になってもらうというような長期的な林業活性化を考えることができる。

 

 では、山村はどのような対象をターゲットとすべきだろうか。山村訪問の際のこだわりについての回答から、統計的に山村価値こだわり層と観光価値こだわり層を抽出した。

 

 山村価値こだわり層と観光価値こだわり層ともに、「のんびりすることができる」、「景色がよい」、「食べ物がおいしい」にこだわるとする回答率が圧倒的に高いことが共通する。両者ともこだわりが強い層だ。しかし、相対的にみると両者の違いは、山村価値こだわり層では「のんびりすることができる」、「伝統的な文化がある」、「民芸品等の魅力的な特産品がある」、「なじみがある・よく知っている場所である」、「友人・知人がいる」、「住んでいる人が元気である」にこだわるとする回答が多いことにある。これに対して、観光価値こだわり層は、「観光スポットがある」、「泊まる場所がよい」、「交通の便がよい」とする回答が多いことに特徴がある。

 

 全サンプルに対する比率でみると、山村価値こだわり層は5%、観光価値こだわり層は7%である。過去1年間の山村訪問経験者のうちの比率では山村価値こだわり層は23%、観光価値こだわり層は33%を占める。あくまで統計的に抽出した層で、山村を訪問する人を線引きする明確な基準はないが、山村を訪問する人の全てはないが、一定の割合で存在すうる層だとイメージしてもらえばよい。

 

 さらに、2つの層の山村特産品等の購買上の特徴を整理してみよう。実際に購入している特産品(自家消費用)では、両者とも漬け物、山菜、そば、団子・おやき等の購入率が山村特産品を購入している全サンプルよりも多いことが共通する。違いは観光価値こだわり層で米の購入率が低いことだ。

 

 しかし、特産品購入におけるこだわり(購入基準)では、2つの層の違いが顕著である。山村価値こだわり層は、「品質」や「価格」とともに、「生産者の想い」や「産地・生産者」、「安全性」、「安心感」に対するこだわりが相対的に強いという傾向がある。観光価値こだわり層は、「品質」や「価格」へのこだわりは強いですが、生産者との関係性に係るこだわりは全サンプルと同程度である。

 

 山村・森林での新たな取組みと考えられるメニューをあげて、関心を聞いた結果(図-3)では、2つの層ともに取組みへの関心が高いといえるが、山村価値こだわり層の方が観光価値こだわり層よりも全ての取組について関心が高いという結果である。このことから、山村らしさを理解し、山村での新たな取組みに高い関心を持つ“ディープなコア層”が山村価値こだわり層だと言える。観光価値こだわり層は、山村価値こだわり層について山村への意識が高い、“ややライトなコア層”とみることができる。

 

 また、山村・森林に関する情報入手媒体(図-4)では、山村価値こだわり層はホームページ、パンフ等からの情報入手が活発であり、また口コミも有効であることがわかる。

 

 以上のようにら、山村再生を考えるうえでは、山村を理解し、山村らしさにこだわってくれる山村価値こだわり層に上手くつながっていく戦略をたてることが有効である。

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