サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

地域”自律”エネルギーと”主体形成”を重視するエネルギー計画のすすめ

2011年11月19日 | 気候変動緩和・低炭素社会

 

1.地域における自律エネルギーの必要

 

 “じりつ”という言葉を漢字にすると、自立とも自律とも書ける。エネルギーの“じりつ”について言えば、エネルギーの自立は地域内の資源を活用し、自給率を高めることを意味するだろう。一方、エネルギーの自律は、エネルギーの供給・消費あるいはそれに伴う環境負荷(二酸化炭素排出等)を自ら制御することを意味する。

 

 地域におけるエネルギーの“じりつ”といった場合に、できるだけ自立を進めることが望ましい。ただし、化石燃料等が賦存量が少ない日本においては、森林資源や水資源が豊富な一部地域を除けば、地域のエネルギー資源で地域需要を賄える地域は極めて少ない。

 

 千葉大学倉阪研究室とNPO法人環境エネルギー政策研究所の計算によれば、エネルギー自給率(再生可能エネルギー供給量/民生・農水用エネルギー需要量)は、日本全体で3.7%(2011年度速報値)に過ぎない。都道府県別の同自給率は、大分県が27.5%でトップ、次いで秋田県19.8%、石川県18.4%、青森県14.7%、鹿児島県13.3%、長野県12.2%、島根県11.9%、熊本県10.7%と続く。一方、自給率が低い都道府県は低い順に、東京都0.2%、大阪府0.5%、千葉県0.9%、神奈川県1.0%、埼玉県1.0%となっている。もちろん、現在は再生可能エネルギーの普及過程にあり潜在的資源を活用し、またエネルギー需要の抑制を徹底すれば、自給率がさらに高まる余地があるが、エネルギーの自給率を高め、地域の自立を目指すには限界があるだろう。

 

 地域のエネルギーは他地域に依存をせざるを得ない。そして、他地域への依存の方法は2つである。1つは、電力会社が製造した内容証明のない電力や海外から輸入された顔の見えないエネルギーを購入する方法。もう1つは、再生可能な国内エネルギーにこだわり、生産先との顔の見える関係や信頼・互酬関係を築きながら調達する方法である。後者の方法としては、認証のなされたグリーン電力購入や信頼できる先からの木質燃料の輸送等がある。依存する他地域との関係性(社会関係資本)がきちんと形成されていれば、それは自立ではないかもしれないが、自律である。エネルギーの採取・生産にも参加し、また生産に参加することで消費改善にも主体的に取り組むことができれば、それはベストとは言えないがベターな方法である。

 

 時代を振り返れば、里山から薪や柴を採取し、煮炊きや暖をとるのに使っていた時代は、エネルギーの管理主体は地域にあった。しかし、石炭や石油という地域にないエネルギー資源への導入により、エネルギーの管理は地域の手を離れてしまった。原発停止による外部依存の脆弱性が露呈した今、「地域自律エネルギー」を取り戻さなければならない。

 

2.地域の主体形成を重視する地域エネルギー計画の必要

  

 筆者は、景気対策に巻き取れて、構造変革を放棄したような緩和策は失敗していると書いたことがある。ただし、あらゆる緩和策が失敗というわけではなく、地域の足元からの社会変革を重視した取組みもなされている。その代表例がJSTによる「地域に根差した脱温暖化・環境共生社会」である。

 

この研究プロジェクトは、抜本的な脱温暖化・創エネルギーを目指した地域実践を重視し、社会技術の開発・評価を行うものである。環境・エネルギー技術の開発というと、初期段階では物理や化学、生物等の学術成果を踏まえたプラント技術の開発が中心となるが、普及段階においては事業採算性や地域政策、住民参加等に係る社会技術の開発が必要となる。

 

この研究プロジェクトでまとめたレポート「地域分散エネルギーと「地域主体」の形成 ―風・水・光エネルギー時代の主役をつくる」を読ませていただいた。同書は、地域の住民や企業の「知の集積と関係形成の相互作用」に係るプロジェクトの実践をまとめている。地域の主体の気づき、共有・結び、アクションという過程で、地域の主体は学び、成長し、そして他者との関係を得ていく、関係を形成することでさらに学び、知を得た主体はさらに他者との関係を強め、広げていく、そうしたダイナミズムの重要性を描き出している。

 

 地域主体の形成について、世の中には失敗事例が多い。全国各地で計画された新エネルギービジョン、省エネルギービジョン等は、コンサルタントによる地域分析と具体的プログラムの提案が示されるが、実践に移行されるプログラムは少ない。独自性を打ち出そうとして、開発段階の新技術を持ち込み、背伸びをしすぎているために実用性や事業採算性に欠ける場合も多いと考えられるが、一番不足しているのが「地域主体」の形成である。ひらたくいえば、地域の行政、住民、企業等が自らの意思で主体的に取り組まなければ、プロジェクトは立ち上がらないし、成功もしないし、波及的な効果も期待できない。筆者も思い当たることが多いが、詳細はここでは書かないでおく。

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